ボスキルアナトル03
前回までのあらすじ:鴻巣ピンチ。でも青森もっとピンチ。なんで戦力全部持ってくから。オメーらの戦力ねーから。残念。
※2025年1月29日
ゲートが消滅すれば魔獣は消えるを増えないに修正しました。
私の言葉に全員の顔色が変わる。
「まあ、そういうこと。となりゃ分かるっしょ? 国防軍や西日本勢の戦力はそちらに回されるし、熊本の九州男児が転移門を使って来てくれる予定だったけど、そっちも青森行きだってさ」
苦い顔をされるが反論は出ない。探索者じゃなくても厄災級が不味いってのは分かる話だからね。
そりゃ九州男児もあっちに回される。何せしくじった場合の被害の規模がデカ過ぎる。適材適所ってヤツって言われたら頷くことしかできない。
「九州男児まで……クソッ」
「仕方ねえよ。九州男児はひとりしかいねーんだ」
「畜生。あいつさえ、九州男児さえいればどうにでもなんのによー」
本当にため息が出てくるな。多分ここまで危機的な状況は三年前の八雲大龍災以来だ。
迷宮災害はゲートが消滅すれば魔獣は増えないし、ゲートが安定すれば存在境界線以上は出てこれないから立て直しは難しくない。でも厄災級は異世界を『こちらに持ち込む』。つまりは迷宮災害が終わらない。国内で言えば仙台大森林と稚内地獄海、それに西表巨猫島がそうだ。
国防軍の戦力の多くはそちらに費やされているけど、青森が落ちれば最悪、東北全体を捨てる選択も有り得るからね。だからそうならないように戦力はあちらに回すし、こちらには回せない。これはそういう話なわけだ。梯子外された方は溜まったもんじゃないけどさ。
「ユーリの状況から、ゲートの封印はもって後30分。あいつも戦力として考えるなら15分以内には突入しないと厳しい。ただ……」
「俺らでは彼女に並んで戦えない。攻略するだけの戦力が用意できないってことですね」
相澤がそう返すが、その通り。
ゲートの先には千を超えるであろうソードアントがいる。その上位種の統率個体を仕留めてゲート発生の原因を取り除けば、ゲートが固定される前に閉じることもできるが、私を含めてこの場の戦力だと一対一、或いは数体相手なら対処できても、二桁三桁の数を同時に相手にというのはユーリにしかできない。私も上級探索者だけど持っているスキルは精霊眼ってやつだからね。サポート向けで広域殲滅の手段は持ってないんだ。
「15分内に攻略部隊編成ができないなら免許センターまで後退。防衛戦か撤退戦かは状況次第かなぁ。あんたらもさー。その腹積りでいてもらうからね」
さっきの通話先のオペレーターじゃ判断を下せないにせよ、タイムリミットは伝えた。国防軍も無能じゃないから上に報告がいけばちゃんと決めてくれるはず。後はどう動いてもいいように準備だけしておくことだ。
「ねえふーちゃん。ちょっと、いい?」
そして動こうとしていた私に、ゲートを押さえ込んでいるユーリが話しかけてきた。
「ちょっとユーリ。集中してなくていいの?」
「まあ厳しいけどね。けど、このままだとジリ貧でしょー。だからさー、悪いんだけどさー。突入の準備をお願いできるかなー?」
「突入って。けど、ユーリ。今の戦力じゃあ」
今、私は情けない顔をしてると思う。臆病者とユーリに思われているかもしれない。
でも無理なものは無理だ。探索者は引き際が肝心。それが分からない奴から死ぬ。
だから私は心を鬼にして撤退を前提に動くことを口にしようとして……
「大丈夫」
と、ユーリが笑って力強く頷いた。
「あーしがビッグな助っ人を呼んでおいたからさー。ちょーっと遅れてるけど、多分そろそろ……あ」
そう口にしたユーリの視線の先に私が顔を向けると、市内に通じる道路の方から三つ、いや四つの影が見えた。まさか彼らが……
「え、巨大なレッサーパンダ?」
「四つ腕のロボットとドローンに乗ってる妖精と」
「冴えないおっさんがいる……ぞ?」
うん。誰?
【次回予告】
男にとってソレは山であった。
登るに値する険しき山であった。
なれば登らねばなるまい。
その道筋を定めねばなるまい。
例え誰に理解されずとも、
例え人の道に反しようとも、
己の心だけは誤魔化せぬ。
つまり大貫善十郎とはそういう男であった。





