プレゼントアフター02
『ザンジューローサイコー。パパ大好きッ。あ、ママも大好きなみんなの妹シスターリンでしたー。バイバーイ!』
モニター先の凛さんは笑顔で挨拶をして配信終了となりました。
そして私ではないパパたちが【リンはワシが育てた】【リンちゃん、パパだよー。ホテル行こー(※コメントは削除されました)】【子供の頃からリンはパパが大好きで、一緒にお風呂に(※コメントは削除されました)】【私は前島凛の父親で坂本大輔と(※コメントは削除されました)】等と次々とコメントを残しています。いえ、なぜか出ては消えていきます。コメント欄が壊れているのでしょうか?
それに何故凛さんのパパがあんなにいるのかは分かりませんが、彼らと違って今の私に凛さんのパパを名乗る資格があるとは思えません。
もしかすると私は本当に凛さんのパパではないのかもしれません。娘に嫉妬して、プレゼントを渡したことを後悔するような父親は父親失格なのではないでしょうか。
「もういじけないのゼンジューロー」
「あ、はい。申し訳ありません」
いけません。負のスパイラルに落ちかけました。
まあ、それだけ凛さんの配信は衝撃的だったのです。私の心が強く揺さぶられるほどの配信だったわけです。そう考えれば配信事故後の一発目としては成功だったのではないでしょうか。ああ、それにしても羨ましい。
「アレはリンの直感スキルありきだからねゼンジューロー。大体ゼンジューローが試しに使った時にはウィンドアーマーは発生したけどホバリングに入った段階で思いっきりズッこけてたじゃないの。アレはゼンジューロー向きじゃないわよ」
「まあ、そうなのですけどね。ティーナさんの造ってくれた、この『大地の銀花』が十分に有用なのは理解していますし、実際私に必要なのはこちらなのでしょう」
ティーナさん作成のブローチ型魔法具『大地の銀花』。
私が装備しているこの魔法具は、あらゆる環境でも生存可能なグランドアースドレイクの特性を持つスキル『アースシールド』を発生してくれるもので、単純な防御性能に加えて、寒暖差や毒などに対しての耐性も備わっています。
つまりはステータスがほとんど伸びず、脆いままの私を守ってくれる優秀な機能を有しているわけですね。これに不満を持っては罰が当たるというものです。まあ、空を飛んでみたいという思いは変わりませんが、それは別の方法で模索することにいたしましょう。
一応以前に収納解除の空気を出す勢いを利用する方法も考えてみたのですが、収納ゲートは座標固定のため、アレをブースターのように使って体を押し出すようなことはできませんし、空気弾で私の体を直接飛ばすのは勢いが強すぎて骨が折れそうなので諦めました。
収納ゲートを足場に空中を歩けはしますが、アレはただ歩いているだけで浮遊感はないのですよね。
「ともあれ……凛さんが満足しているようで何よりです。プレゼント作戦は成功ですねティーナさん、ラキくん」
「そうね。あの様子なら大成功だわ」
「キュルッ」
ティーナさんもラキくんも同意してくれました。
「それにグランドウィンドドレイクの素材を売って借金も無事返済できたわけだしね。重い荷物はないに限るわ」
そのティーナさんの言葉の通り、二頭のドラゴンの素材換金で無事測定器の修理費は払えました。正確には手続きはこれからですが、問題は解決したと考えても良いでしょう。
「はい。やはり借金は駄目です。日々のしかかる心的負担は心の健康によろしくありません。後はシーカーグランプリの出場権が手に入れば万々歳ですが……まあ、それがなくとも」
無職からのやり直し。
今の私はそれに成功したと言って良いでしょう。
濃縮ポーション原液と精霊銀、神霊銀は定期的に採ってくれば、金銭面での心配もほとんどありません。娘もパパ大好きと言ってくれています。仲間や良い人もできました。
「今は出来すぎた状況なのでしょうね」
「ゼンジューロー?」
「キュル?」
私の言葉にティーナさんとラキくんが首を傾げていますが、すべてが順調なのです。それに今の私はようやく探索者の上澄みに足を踏み入れたところでしょうし、まだまだ上を目指せます。
ティーナさんの造る魔法具によって私自身の強化の道も見えてきました。であればこそ、私は更なる一歩を踏み出します。
「ティーナさん、ラキくん。我々も凛さんに負けてられません。ですので、そろそろ挑んでみますかね。あのグランドウィンドドレイクのいた遺跡へ」
そう、私が狙うのはグランドウィンドドレイクが居座っていて入れなかった遺跡の探索。未だ探索されていない未知の遺跡。そこに我々は挑みます。
「あ。ゼンジューロー、それ無理っぽいわよ」
「はい?」
そう言ってティーナさんがモバイル端末を起動してメイチューブを開きました。そこに映っていたのは……
『ヒャッハーーーーーー!』
全身甲冑を身に纏って、ウォーハンマーを振り回す老婆の姿でした。
【次回予告】
それは破壊の権化であった。
それは老婆の形をした鉄槌であった。
それは黄金を纏う滅びの大槌であった。
それに集いしは益荒男の騎士団。
力に惹かれ、破壊に魅入られし軍団。
そして猛る鉄槌が振り下ろされる時、崩壊が始まる。





