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新たな役割

 夜中、時間は分からないが目が覚めてしまった。

 ロウソクと懐中電灯は消され、代わりにキャンドルが幾つか暗いセンター内を照らしていた。


 とてもじゃないがもう寝付けそうにない。何時間くらい寝ていただろうか。

 今俺のいる家具、ベッド売り場にはセンター内の見張り以外の全員が寝ている。正直いびきがやばい。五月蝿過ぎる。


 布団をから起き上がり当たりを見回すが、みんな爆睡状態。大体がグループになって固まって寝ている感じなので俺達も固まって寝ていた。

 ベッドは働いた者と高齢者が優先されほとんどは、床に俺の様に売り場にある布団を敷いて寝ていた。


 俺の左側には坂口、右側には椿。何故女子が当たり前の様に隣に寝ているのかはこの際問題では無い。 問題はいびきに混じってゾンビの呻き声が聞こえてくる事だ。

 お化け屋敷で寝ろと言われている様な物である。耐えられん。


 寒さもあって肩や脚を震わせながら起き上がって休憩所に水を飲みに行く事にした。


センターの中央は吹き抜けになっており僅かに光るキャンドルの灯りで2階が見える。


 水は全員分が既に何日分かに分配されている。目明日はペットボトル2リットルで週に1〜2本。0.5リットルで大体1週間で3〜4本。それ以上は絶対手を出してはならない。季節も冬に向かっているので脱水症状の心配はあまりないが、節約は必要だ。俺は普段もチビチビ飲む派なのでそんなに変わらないが。



 誰も居ない休憩所はキャンドルの明かりでそれっぽい雰囲気が半端じゃない。所々が真っ暗でゲームなら確実にゾンビが出てきて戦闘になる。



「……グスッ……グスッ……」

「ひぃっ!?」


 聞こえてくる鼻水を啜る音に思わず叫びそうになってしまった。だが冷静に考えたらここには水があるのだから誰がいてもおかしくない。きっとそうだ。


「……え? あ、……すみません」


 その声の方を向くと、ちょうどキャンドルの明かりが届かない位置の壁側にしゃがみこんでいた女の子を見つけた。

 正直な感想を述べると、暗闇でキャンドルの明かりが反射して光る目玉が2つ浮いてる状態なのでめちゃくちゃ怖い。


「だ、誰ですか?」

 意を決して聞いてみる。明るい所から。


「え、あ。……いや、あの」


 まずい……初対面の相手にいきなりこれは無かったか。


 女の子は暗闇から出てこようとはせずしゃがみこんだままこちらに顔だけを向けていた。

 俺は恥ずかしさで逃げる様に『火鷹』と書かれた0.5リットルのペットボトルに入った水を一口だけ飲みその場から風の様な速さで音も立てずに逃げた。


「えっ、えぇ〜嘘でしょ?」

ベッド売り場に行くなりすぐに布団に入ろうとしたが、椿と坂口が俺の場所に意図的に邪魔する様に寝ていた。










ゾンビが蔓延るこの世界にもまだ鳥はいる様でチュンチュンやらカーカーと、鳴き声が俺の耳から恐怖に満ちた脳へと伝わり少しづつ解凍作業の様に温め始める。



「んっ、んー! あれ? おはよ。樹早いね?」

「…………ふぇ?」



結論だけ述べると、




全く眠れなかった。




 夜中怖くてトイレに行けない子の気持ちが分かった気がする。

 ゾンビの呻き声が消えない中で寝ろと言われても、いつも防音の部屋で寝ていた俺は寝付けるはずがない。慣れれば寝れるだろうが、いやだ。怖くてマジで寝れなかった。

 しかも布団に入れずこうして体育座りで真っ暗な窓の外に日の光が現れるのを待っていた俺は身体中の関節が固まり、寒さで手が震えていた。



 8時、朝食。

 休憩所に集まり係から配給を受け取る。朝は基本パンらしい。食パン1枚の者もいれば小さなロールパンの者もいる。


 パンをかじりながらこれからの事を考えていた。今までは移動出来たのでとりあえず自由だったが、こうも周りにゾンビが居たんじゃ食糧が尽きて飢え死にしてしまう。


 近いうちに逃げる作戦らしいが内容もまだよく知らないし、宮元さんと話す機会も減っている気がする。まだ1日目だが。



 10時ごろ、全員が休憩所に集められ会議が始まった。司会は昨日と同じ人だ。

「昨日も言ったが、何とかしてここから出なくちゃならない。だから協力してほしい。まず新しい子達も入って来たから新しく当番を決めたいんだ。前々からしたかったんだがあいつらが居たから中々ね。久しぶりの新入りが来たこどだからさ。強制はしないけどね」


 あいつらとは昨日の殺された連中の事だろう。

 当番とはまさかコスプレ特殊部隊なのだろうか。ちょっとやってみたいな。


「今募集中なのは屋上の見張りと戦闘班だ。屋上の見張りは寒くなって来たから女の枠に男を入れたいんだが、まぁもっと欲しいのは戦闘班。俺達は今まで立て篭もる事しかしてなかったしあのガラスが破られる心配も無かった。だが最初に言った様にここから出た後は絶対そとのアレと戦わなくちゃならない。その為に体力に自信のある奴、部活が運動系の奴には参加して欲しい。まずは戦闘班からだ。誰かやってくれる人は居ないか?ちなみに俺や宮元さんはやるんだが」


 その場に居た全員が考え込んだ。自ら危険に立ち向かうのを現代人は嫌う。それに飛び道具が無い以上大群にでも出くわしたら絶対死ぬ。

 もちろん俺はやらん。


「俺やります」

 声の主は紺色のパーカーが特徴的な20代前半の男だ。少し窶れているが身長は180くらいはある。

「おぉ! よし、現在3名だ! さぁ! 他には?」

「お、俺やります!」

 今度は中学生だ。学年はよく知らないがどうやら他の奴に自分をアピールしたい様子だ。

「勇敢だなー! 現在4名!正直若い人が少ないから手を上げてくれる人が居るとは思わなかったよ。みんなありがとう。じゃあ他には?」


 周りを見回すと他の人も俺の様に誰が手を上げるのか見ていた。結局誰も上げないので話は進む。


「次は見張りだ。今までは男女問わずやってたが苦情が耐えないからねぇ」


 そう言ってチラチラとわざとらしく中年の男達を見る。中年の男達はむすっとした顔で睨み返していた。


「寒いし交代しようかと思うんだ。もちろんまたやってくれる人は大歓迎だ。時間は主に朝6時から12時と、昼12時から18時、夜18時から0時、深夜0時から朝6時だ。場所は屋上とこの中だが、屋上はヘリとか自衛隊が見えたらすぐに知らせてくれ。年齢は特に問わない。誰かやってくれる人はいないか?」


 なんだか寒そうだな。何にもしないのも気が引けるが。……んー。


「ねぇねぇ? あたし達でやらない?」

 そう言って来たのは坂口だ。ウキウキしているのかとても楽しそうだ。

「確かに、ただ居るだけじゃ申し訳ないわね」

 姉貴も考え込む。確かにその通りだ。

「じゃあ手挙げよっか!」

 みんな無言で頷いた。もちろん俺もだ。外の様子もみたいしな。


「はいはーい! あたし達やりまーす!」

「お! 勇敢だねぇー! 他には?」


俺達の他にも数名が手を挙げた。人数的には俺達を含めて10名ちょっと。


先の事は分からないがようやく落ち着いた場所に来られてみんな喜んでいたみたいだが、俺だけは違った。



……家にゲーム機忘れて来ちまった‼

実は今日誕生日だったりする僕です。

これからもよろしくお願いします(`・ω・´)ゞ

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