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前日の打ち明け

かなり間が空いたのはこの世界が悪いのであって作者は悪くありません((遅くなってすみませんでした‼

「やっぱりあの設定であの終わらせ方ってかなり酷いよな! 設定は良いのに」

「そうだね、でもあれはあれで好きだなぁ」


 俺と椿飛鳥はすぐに打ち解けた。俺の睨んだ通り彼はかなりのゲーマーであり、趣味も似ていた。

違いがあるとすればジャンルがゾンビの他に戦争とかMMORPGが好きなところだが、ゾンビ好きには変わりない。

 もちろんここに来るまでの経緯やラジオで聞いたらしい外の今の日本の状況を教えてもらった。


 現在東京以外でも同じ様な事が発生しているらしい。世界中で起きているかは分からないがそうだとしたらいよいよゾンビ映画だ。


 一通り語り尽くした所で疑問が浮かんだ。いや本当は最初に質問するべきだったのだろうが同志を目の前にして落ち着いていられるほど俺は大人じゃない。


「なぁ、ホームセンターとかに行ったんだよな? だったら何で中に籠城とかしなかったんだ?」

 椿はいきなり現実の話題に切り替わった事で戸惑う。俺と彼の間にしばしの沈黙が流れた。

「それはみんなの前で話した方が……てかなんで火鷹の部屋にわざわざ?」

 周りを見渡し俺も気づいた。

「あ」




 それからすぐにみんなのいるリビングに戻った。思えば何で俺は自然と始めて会った奴を部屋に入れてんだ? 実の姉を差し置いて、しかもこの状況で。バカか。

 リビングでは姉貴を囲みポテトチップス一袋で談笑していた。こっちもこっちで弟の存在を忘れている様だ。


 俺は軽く咳払いをした。すると談笑をやめ全員が俺に振り向く。

「話は終わりましたかな?」

 笑顔で姉貴が俺に言う。その笑顔はいつもと何か違う。その何かは俺には分からなかった。

「あー、うん。とりあえずちょっと話しようよ」


 ソファーに左から俺、椿、光梨。テーブルを挟んで向かいのソファーに右から姉貴、坂口、笹木。テーブルの両端に日向野、宮元さん。もちろん妹側に兄である日向野怘が座る。


「なぁ姉貴、信二さんは?」



 姉貴は俺の質問を聞き固まってしまった。当然だ。信二さんは姉貴の夫であり俺の義理の兄だ。今この場に姉貴と居ないという事は何かがあったはずだ。


 姉貴は斜め下を向きながら少しづつ言葉を並べた。


「信二さんは私をかばって亡くなったよ。まぁ、最後までらしかった……うん。らしかった」

「そ、そっか。ごめん」

「良いよ良いよ」

 斜め下を向いたまま姉貴は俺に言った。

「あの〜、信二さんって?」

 隣に座っている坂口が姉貴に聞いた。姉貴は坂口に顔を向けた。とても優しい笑顔で言った。

「私の旦那さんで〜す」

「ええ!? すみませんでした!!」

「お前普通聞いたら駄目だろ」


 姉貴に頭を下げる坂口に便乗して日向野が俺に冷たい視線を送る。見ればその他全員が俺に「あーあ、やっちゃったー」的な目を向けて来る。


 姉貴はそれから俺達に出会うまでの経緯を語り出した。

「でも逃げてた時は凄かったよ。自衛隊が道路封鎖してさぁ、警察は銃乱射するしもう誰がゾンビだがわかんなくてさ!家に隠れてたら囲まれちゃってね。二人で逃げたの。後は避難所に行ったんだけどそこにもゾンビが来て駄目だった。自転車に乗りながら放浪してたんだけど、途中で襲われちゃってね。私をかばって信二さんが噛まれて……それから……」

「ごめん! 言いづらいなら別に良いよ」

「そうですよ! 僕ら他人がいる所で」

 坂口と宮元さんが言葉に詰まった姉貴を止めに入るが姉貴は続けた。


「噛まれたらどうなるかは知ってたから信二さん、囮になって私を助けてくれたの。それからは2〜3日走ってここに帰ってこようとしたの。その時ちょうど樹とか椿君に助けられたのよ」


 やっぱり信二さん亡くなったのか。聞くんじゃなかったな。この場に居る全員が暗い雰囲気に包まれた。

 

 だが。


「あーーーっ!! スッキリしたぁ〜。んじゃ宮元さん、話聞かせて下さい」

「え? い、いきなりだね」


 姉貴は伸びをするといきなり宮元さんを指名した。宮元さんは頭をかき困惑するが姉貴の大人としての意見がその場の空気を更に変えた。


「他人は信用出来ません。だから自分の事、はぐらかさないで全部話して下さい」

 多分俺と椿が2階にいた時に軽く自己紹介でもしたのだろう。確かに俺も気になってはいた事なので黙って姉貴と宮元さんを見る。

 宮元さんは遠い目になり黙り込んでしまった。そこへ姉貴が更に。


「本当に警察なんですか? 弟達はまだ子供だしあんまり知らないだろうけど、逃げてる最中に何回か警察を語って悪さをする連中を見ました」

「……」


 姉貴の言葉を聞き疑問が恐怖に変わった。もし宮元さんが警察官ではなく普通の人だったら。普通の人ならまだしも、もし危ない人だったら。そう思うととても怖くなった。

 姉貴の言葉に観念した様に宮元さんは顔を上げ口を開く。


「もし、話を聞いて皆さんが僕に恐怖を感じたのなら、僕は遠慮なく出て行きます」




 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼



「ごめんなさい宮元さん。私……」

「良いんです。僕こそ、隠さず話すべきでしたね」


 土下座する姉貴。宮元さんの話が終わり俺達は現実を見たというか、本当に俺達の世界は変わってしまったのだと改めて分かった。

 先輩を殺し、子連れの家族を殺した、奥さんと離ればなれ、人をやむおえず殺した事は知っていた。詳しく聞くべきでは無かった。姉貴は宮元さんに涙目で誤った。


 今の話からも少なくとも東京の警察は既に機能していない。姉貴の話と合わせても東京はどうやら封鎖されてしまった様だ。

 自衛隊が道路を封鎖するなんて光景、見てみたいが行ったら行ったでゾンビだらけとか、問答無用で射殺、なんて感じなんだろう。とにかく東京からはそう簡単に出られない様だ。


「なぁ、さっきの話」

 俺は椿に2階でしていた話の続きを求めた。

「さっきのって?」

 坂口が俺に聞く。

「上で外の状況を聞いてたんだ」

 坂口は「ふむ」と納得し、小さく咳払いをして椿は話を始める。


「ホームセンターには皆さん行きましたか?」

「いいや?」

「いや?」

「いやいや?」

 同じ様な返事をする面々。蝉かよ。そんな中、二人だけ手を上げた。

「俺達、近くまでなら行った事あるよ。な?」

「うん」

 日向野兄妹だ。そういえばそんな事行ってたな。更に話は進む。

「最近この辺りに人ってもう居ないじゃないですか。でもちょっと行った所にあるホームセンターにかなりの 人が立て篭もって救助を待ってるんです。だからそこに行ーーー」

「「駄目だな」」


 ハモった。宮元さんと俺である。

「絶対駄目だ。周りを囲まれたら出られないし、俺達以外にもいるなら食糧が足りなくなる。そのうち殺し合いになるぞ?」

「僕も反対だ。もしそうなった時君達を守り切れるか分からない。危険だ」


 俺達二人の反論を聞くと椿は両腕を軽く上下しながら言った。

「待って下さい、最後まで言わせて下さいよ」

 なんだ、続きあるのか。

 軽く咳払いをして椿は続きを話し始めた。

「そこに行ってこっそり侵入するんですよ。もちろん中の人にばれない様に」

「でも外にはゾンビが」

 姉貴が窓の外を指差し言った。

「ゾンビは群れで行動する見たいなんです。よくは分かりませんがリーダーとかは特に居ないみたいで、一体が動いたらみんな動くって感じなので見つからない様に行けば大丈夫です」


 なるほど、ゾンビはメダガと基本は同じなのか。メダガは特にリーダーとかはいない。先頭にいる奴、突然動きを変える奴に着いて行く。確か理科でそんな事をならった気がする。案外楽にいけるのか?


「いやいやいや椿くん、見つからないのが難しいから苦労してるんだよ」

 姉貴が椿の右肩に手を置いて言う。「ま、まぁ」と言って椿は黙り込む。そこで坂口が口を開いた。


「……ふっ。ふふふ」

「ついにイカレたか?」

 突然不穏な笑みを浮かべる坂口にその場の全員が微妙な恐怖を感じた。微妙な。

「違うよ樹。思いついちゃったんですよ」

「「何を?」」

「ふふふふふ、それはーーーーーー」

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