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第26話 免れる死

 優崎家の広いリビングに置かれた大きなテレビで、優人は早朝から昨日録画していたアニメを夢中になって観ていた。


 そのアニメとはとあるギャグ漫画が元のアニメ。

 アニメのその回の内容は普通なら面白おかしく見るはずのギャグ回となっていたのだが、優人は視聴をするや震え上がっていた。


 全身を震わせながらガチガチと歯を鳴らし、内容から伝わってくる「その行為」の恐ろしさにおののきながら優人は呟く。



「死亡フラグ……怖いよぉ」


 その話というのは、キャラ達が死亡フラグをどんどんと回収していってしまうという内容だった。

 ギャグアニメなので本当にキャラが死ぬわけではないのだが、その場面というのがゾンビの出るデパートでの話だった。


 普段からゾンビに近いような悪霊共と戦っている優人には既視感からやってくる恐怖が到来していた。


 実力は関係なく偶然や油断、ほんの些細な一言が生む死へシナリオ。その恐ろしさに優人は捕らわれてしまった。



「デパートから出た後のこと語ったり、1人で行動しようとするとやられちゃうの? 主人公でも餌食になるの!?」


 B級ゾンビ映画以下の笑える酷さがあるアニメは他にも次々と『結婚しよう死亡フラグ』や『ここは俺に任せろフラグ』、『へっ、あんな奴ら余裕だぜフラグ』を速攻で回収していった。


「ななな、なんて怖いんだろう……僕、うっかりやっちゃいそうだよぉ」


 フラグは立ててもへし折れるという知識がないピュアな優人は死亡フラグを純粋に受け止めてしまった。


 ──そんな優人がビビっている最中、彼のスマホに連絡が入った。

 送り主は零人、優人はおそるおそるそのメールの内容を確認する。


『今日の夜、悪霊が街に大量発生するから討伐するぞ。数が多いが全然余裕だ。それじゃよろしく頼む!』


 文章からすでに少し滲み出ている死亡フラグに思わず発狂してしまった。


「ひいぃぃやああああああ!!」


 朝から優人の大絶叫が優崎邸の中に響き渡る。


 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 その夜、零人からのメールの招集に応じて霊能力者達は集合した。


 優人と零人はもちろん香菜と白夜も。そして意外だったが菜乃花が集った。

 零人はその中で1人だけいるのが不自然だった菜乃花に尋ねた。


「菜乃花さん、なんで今夜は?」


 菜乃花はしどろもどろに恥ずかしそうに下を向いている。すると香菜は手から何か白い紐のついた四角いものをポケットから取り出した。

 零人は何のことか分からずその首を傾げる。


「あ、あのね零人君。実は……」


「なっちゃん、見せてあげなよ」


「う、うん!」



 そして香菜はその物を菜乃花に手渡す。

 その四角い物体の正体とは御守りだった。霊力などは篭っているが流れの弱くそこら辺の寺にあるような、いわゆる一般的な御守りだ。


「私、道具を使えば除霊できるようになったの。こ、こんな感じ──」


 菜乃花の周りがパァーっと白く明るい光で包まれる。その光に共鳴するように彼女の髪の先端が軽く上に持ち上がる。


 優人はその「慣れていない」光が自分に流れる霊力に反応するのが分かった。

 まるで音の波長の合ったのように体が光と呼応してビリビリと震えてくる。


 そして菜乃花は光を弱めると、零人が感嘆の声を上げる。


「おお! 凄いよ菜乃花さん、除霊の光が出てる。これなら術を使わなくても君はザコ悪霊なら払えるよ」


「凄いっすね、菜乃花さん!」


 零人に便乗して白夜も褒め称えた。


 そして菜乃花は零人からの褒め言葉で瞬間的に顔が真っ赤になって熱くなった。

 ニヤケ顔を見られないよう菜乃花は下を向いた。


 そんな可愛らしい反応をする菜乃花から零人の注意を逸らそうと香菜は白夜に話しかける。



「そいえばシロっ。最近、さやちゃんとはどうなのよー?」


 すると先程まで明るかった白夜だが香菜の質問を聞くとズーンと肩を下ろし、深刻そうな表情で項垂れた。


「それが香菜さん……沙耶香さん、最近なんか俺の事避けてるっぽいんですよ」


「ええっ!? さやちゃんが?」


「その……全く話さないとかじゃないんですよ。なんて言うかただ……俺の顔見てくれないんですよ。前までは沙耶香さん、普通の感じで俺と話してくれてたのに……」


「あぁ……ハハ、そういう感じね? それは大丈夫だよシロ。女の子はそういうことがあるけど、嫌われてるわけじゃないから」


「「そうなの!?」」


 今の話を聞いていた優人も白夜と一緒に反応してしまった。だが自身の発言を深く考えていなかった香菜が不思議そうに優人を見ていると優人は涙ぐんで香菜に聞いた。


「じゃあ、香菜ちゃんは僕の顔見てくれないことがないのはもしかして……」


「違う、そうじゃない! 優人のことは大好きだよ!!」


「そう?良かったぁ〜」


 自然と皆の前でイチャつく優人&香菜、通称『ユウ×カナ』だがその2人を見ながら2人はこんな事を思っていた。


(こいつらに悪気がねぇのは分かってるし、これは微笑ましい光景だ。だが──)


(ごめんね香菜ちゃん、()()()()もあったから、本当にちょっとだけなんだけど思っちゃった。ごめん──)


 零人と菜乃花は2人が思っていることが偶然にもピタリと一致した。そしてお互いに心の中で喉が避けるほどこう叫んだ。


((リア充爆発しろ!!))


(いやあかんあかん、優人に対してこんなこと思うのは)


(うぅ、ごめんなさい。私が未熟なだけなのに……)


 お互い、本当は両想いなのに気持ちが伝えられないウブな2人は相思相愛な上に人前で惚気られる優人と香菜に僅かながら嫉妬心を抱いた。

 だが友人に対して申し訳ないという感情もあるために2人は黙り込んだ。


 この間、微妙な空気が流れている中で唯一1人だけポカンとしていた白夜がこう独り言を言って宣言した。


「決めたっス。今日の戦いが終わったら、沙耶香さんを遊びに誘います! このままじゃダメっス、とりあえずは話し合いをしなければ」


 気持ちをリセットするために零人と菜乃花は白夜を応援する。


「い、いいじゃねぇかシロ! その意気だ」


「そうだよ、諦めないで頑張ってね!」


「はい、ありがとうっス!!」


 ──この瞬間、優人の背中でサメが泳ぐような寒気が走った。優人の脳裏に今朝見たアニメの内容が浮かんだのだ。


(戦闘前……先のことを話す……女の子のこと…………ああッ! まま、まずいよぉ、シロくんが死んじゃう!!)


 優人は慌てて白夜の背後に回って彼の口を塞いだ。

 白夜は口を塞がれながら引っ張られたため体勢が崩れそうになる。


「ふぐぐ!??」


「シロくんそれ以上言っちゃだめ──」


 優人が白夜を止めようとしたまさにその瞬間、まるで謀ったように悪霊が建物の影から飛び出してきた。

 その個体の霊力があまりに低かったために、気がつくのに時間がかかってしまった。


 そしてあっという間に悪霊は優人達の間合いに侵入してきてしまった。



 さらに不幸にも、優人が口を塞いで彼の体勢を崩してしまったことが原因で悪霊が白夜の死角に出現した形になった。


 優人は死亡フラグのことを考え過ぎ慌ててしまい、呪いを出す準備が整いきれなかった。


(大変だ、本当に──)



「……ッリャ!!」


『ガガア──』


 だが優人の心配は無用だった。なぜなら悪霊は0.5秒もかからずに消えて散ったのだから。



 白夜はこれでも7つの大罪『強欲』を司る男、悪霊に近寄られても気づかずに攻撃をされるような三流霊能力者ではない。

 白夜は悪霊が間合いに侵入したと当時に右手の中指をデコピンで弾き、その最低限の範囲内に悪霊が入り込むように攻撃を放った。


 デコピンは『凶星』の能力による振動で悪霊は吹き飛び、周囲には微かに弱い突風が吹いた。


 だが白夜はまるで悪霊なんていなかったかのように振る舞い、優人が驚いている姿を見て不思議そうに見つめる。


「……どうしたんスか、優人さん?」


「いっいや、なんでもないよ! うん、なんでもない」


 油断していたのもあるが、優人は自分の実力が上がり過ぎてしまっことでその辺の悪霊(ザコ)に対する索敵精度が低くなってしまったのだ。

 もちろんこのくらいの悪霊から中級召喚獣の悪魔になら優人はもう反射攻撃だけで消すことができるが、己の霊力の鈍感さに優人は少し凹んだ。


 そんなことに気がつく気配もなく、零人は皆に指示をだした。



「それじゃ、一旦ここでバラけよう。菜乃花さんは西源寺と一緒に行動してくれ」


「「「「はーい」」」」


 ちなみに補足をすると、この場に集まっている全員が霊に対しての感覚が完全に麻痺している。



 ──5分後、優人は忍びのように屋根を飛び回っていると予告通り街のあちこちで悪霊が出始めた。

 どれもいつもと同じ程度の霊力の悪霊達で優人は安心した。


「さ、さすがに考えすぎかな? まぁみんな強いからね──はっ!?」


 自身の発言すらも自分や仲間の死亡フラグに繋がることを察した優人は口をつぐんだ。


「少し静かにしてよう」


 優人は黙って周囲を観察することにした。すると観察を始めたと同時に目の前に悪霊の大群がいるのを確認した。


 その瞬間、優人の背後から零人が飛び出してきた。


「優人、とりあえずあいつらは俺がやるから先行ってな。あの程度なら余裕だぜ」


「分かった!」


 そしてそのまま大群のど真ん中に零人は飛んでいったが、あっという間に彼は群れの中に飲み込まれてしまったた。


「っ! れ、零人君!!」


 だがその瞬間、悪霊たちは強い光を放ちながら次々に破裂してその体が消滅していった。


 残っていたのは飛び出した勢いを保ってそのまま走り続ける零人だけだった。


「そ、そうだよね……零人君なら心配はないよね」


 ひとまず零人の心配はいらないと安堵した優人だったが、今度は家を跨いで反対の通りで香菜が駆けているのを見つけた。


 優人は様子を伺っていると、香菜は嬉しそうな声を出して喜んでいた。

 香菜は自分の頭上で大きな魔法陣を形成していた。

 だがその魔法陣は優人が見慣れた紋章やヘブライ文字は無く、難しい漢字ばかりが並んで描かれていた。


「やったー! 成功したよ。あ、優人!見て見てー、レアなタイプの狐の式神召喚できたよ」


 そして香菜が喜んでいるとちょうど良いタイミングで向こう側から悪霊が走ってきた。


 魔法陣は赤と紫に光り始め、陣の中からゆっくりと巨大な狐がズズズと体を出してくる。

 式神は霊力に満ちたその体が完全に出現した時、数秒の間を置いた後に咆哮した。


 その式神の叫びが届くと悪霊共はあっという間に弾けて消え去った。


『キュオォォォン!!』


 ──悪霊を全て消し去った次の瞬間、巨大な狐は香菜の方にくるりと顔を向けた。


 この式神の動作と先程の振りから優人は気がついた。

『これ、自分で強いモンスター生み出したけど制御できなくて逆にやられるやつだ!』と。


「香菜ちゃん逃げてえ!!」


『グュアアア!!』



「やっぱ中途半端な召喚だったー、エイグ!」


 香菜は残念そう表情を浮かべると何も無い空中から光と共に『暴食』の大罪の悪魔、エイグを呼び出した。


 愚狐は歯向かったものの、無限に腹を空かせた白鯨を前に為す術なく丸呑みされて身体を消失した。

 式神は香菜がいつしかに対峙した狐の時より遥かに小さかったので、僅か1秒足らずの内で食われ瞬殺された。


 そしてどうってことないという顔で香菜は優人に笑いかける。


「やっぱ制御ムズいんだよね〜」


 優人はホッとした。

 だが緊張していている状況下にいる時にふとした休息が生まれるほど、油断とは生じる。


 今も香菜の背後にある電柱のからはそっと不穏な影が姿を────


「完全にダメじゃあん!!」


 優人はツッコミつつ手元からトイレットペーパーの芯ほどの大きさのクリスタルを射出した。


 そして高速発射された結晶は電池の影にいた悪霊に見事命中する。

 優人の攻撃に直撃してしまった悪霊はあっさりと消滅した。


「あれ? そういえば菜乃花ちゃんは?」


「なっちゃんはすぐそこにいたよ」


「いた!? もしかして……」


 置いていかれた、もしくははぐれてしまった仲間というのはどちらかが、或いは最悪の場合両者共に死んでしまうという死亡フラグがある。


 この状況、優人と合流した香菜よりも今この場にいない菜乃花の方に死亡フラグが立っている。



 ──だがすぐに菜乃花は後ろの道から走って帰ってきた。


「香菜ちゃん早いよ! 追ってきてた悪霊除霊するのって大変なのにー」


「あ、ごめんね。ありがとう」


(もしかして、みんな自然と回避できてる?)


 優人は死亡フラグという存在に違和感を感じ始めた。

 現に今も周囲で実体化していないエイグが宙を泳いだりローリングしたりして暴れ回り、辺りにいる悪霊を根絶やしにしている所だった。

 少なくとも半径1キロ圏内にある危険は排除された。


(みんな強すぎてカウンターでも倒せてるの? なら平気かな……)



「うわあああ!!」


「「「!?」」」


 それは聞いたことがある叫び声、時々皆が耳にするあの声、不幸が起きた時に聞こえるあの声が3人の耳に届いた。

 その声の場所を探しながら、3人はその声を発した人物が誰なのかを完全に特定していた。



「「「政樹君!」」」


 不幸体質の代名詞といえばこの男。毎回不運に見舞われる哀れな運命を背負いし者。

 夜中にも関わらず向こうの通りから自転車で全力疾走してくる政樹がやってきた。


「ヤバいヤバい、こんなにヤバいの久しぶり。あっ! おお〜い!! 俺はなんも出来ねえから、みんな悪いけど何とか倒してくれええ!!」


「うん、分かった! じゃーねー」


 香菜は横を走り去っていく政樹に大きな声で返答した。

 一方の政樹は無我夢中で全力疾走を続け、悪霊達からひたすら逃げる。


(ま、まずいよ。こういう場合、1人で逃げるのと怖がり過ぎるのは死亡フラグのお手本みたいなのもってアニメでやってた! た、助けないと)


「行ってくるね!!」


「え? うん、分かったー」


 超不運的存在(政樹)を救うべく、優人は霊動術を脚に発動して強化する。地面を踏み込む体勢を整え、爆ぜるように地面を蹴り飛ばす。


「待ってええぇぇ!!」


 優人はその蹴りで吹っ飛び、低空飛行しポルターガイストで軌道修正しながら自転車に乗る政樹に追いついた。

 そして政樹に並走しながら必死になって話かけた。


「政樹君、このままだと死んじゃうよ!」


「え、死……!!? 嘘だろ? 守ってくれよ」


「もちろ……」


「もちろん」と言いかけたそのタイミングで一体の悪霊が政樹の元に飛びかかってきた。


「うわああぁぁぁん!! なんでこうなるのおぉぉ!?」



 優人は叫びながら呪いの拳を己の中から放って悪霊にぶつける。

 感情に任せて放った呪いは破壊力が増し、猛烈な速度を生み出して衝突する。


 拳は悪霊を空高く、見えなくなるほどにまで悪霊をぶっ飛ばした。


「会話してる途中にくるのもフラグなの!? もう喋れないよおー!!」


「なんでだ?」


「それは──は、はっ……ハックしゅん!!」


 優人は突然、謎の寒気に襲われてくしゃみをした。まだ8月の初めてだというのに。


 悪霊が去ったと分かると政樹はチャリを止めてポケットからハンカチを取り出す。



「調子悪いのか? あ、このハンカチ使ってくれ」


 ポケットからは使い古された青いハンカチが出てきた。

 そして政樹は盛大に死亡フラグを立てる。


「これは俺の愛用してるハンカチだ。今日はとりあえず貸しておくよ」


 そう政樹が爽やかに言ってる間にも後ろには悪霊が忍び寄っていた。

 そして政樹は全くその気配や霊力に気づいていない。



「これいつまで続くのー!!?」


 優人は死亡フラグにツッコミながら大量の呪いの拳と錬金術でアスファルトを変換して生み出したエメラルドの棘波を暴れさせた。


 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 それから程なくして悪霊は全て駆逐された。

 ただ戦闘中の優人に零人達は多少なりとも違和感を感じていたようで、優人に今日の不審な挙動を尋ねた。


 問いかけられた優人は朝からの一連の出来事を包み隠さずに全て話した。

 その話が聞き終わると皆は納得したように笑っていた。


「なるほど、そういうことっスかー」


「考えすぎだって優人」


 優人は顔を少し赤くして恥ずかしがる。


「そうだったね。うう、なんか恥ずかしい」


 しかしその中で零人だけ口に手を当てて真剣な表情をしていた。

 何か悩んでいるような顔をしている零人を皆は不審に感じる。


「実はな優人、確かに今日は俺もそう思っていたんだ。『なんか死亡フラグ多くね?』ってね。思えば自分でも何故かフラグ立ててな……あぁっ! もしかして──」


「うん?」


 零人は手を自分の胸に当てて1つの魔法陣を手のひらから展開する。

 使用している魔術は解析術、目をつぶりながら解析術で零人は数秒黙っていると突然彼は魔法陣を消した。

 そして術を解除すると納得のいったような顔で頷きながら零人は皆に報告した。



「やっぱりなぁ……ハハ。俺、どうやら運勢誘導術を無自覚で自分でかけてたから皆も影響されてたっぽいわ。朝作った新術で」



「「「「えぇぇ〜!!?」」」」


 零人の持つはた迷惑な趣味、それは新作の術を無闇矢鱈にとりあえず試すこと。

 その場の全員がその事実を知ると恐ろしくて絶叫した。


 チート能力者があれほど集まらなければ今回のようにフラグはへし折れなかったと思われる程に強力な術だという……


 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 ──騒動の収集がついて皆が解散したその後、優人は零人に引き止められた。


「あっ優人、ちょっと悪い。実は突然なんだが、急な仕事が入ったんだ」


「どんな仕事?」


「ちょいと機密情報で詳しく言えないんだが、異世界や色んなとこの機密機関とかに行くことになってな。危険だから大罪の中でも俺だけ行くことになった。しばらく音信不通になるが、必要な情報やサラマンダー寺院のことは基本的に西源寺に聞いてくれ」


「分かった、期間はどのくらいなの?」


「1週間弱だ……そして任務がかなり急ぎだから、ちと早えが今から行くわ」


 零人が言い終えると早速魔法陣は発動する。


 足元に赤い文字で描かれた1つの魔法陣が現れ、その魔法陣は複数の魔法陣をさらに展開しながら霊力の流れと共に光っていく。


 やがて霊力が魔法陣全体に馴染み始めると共に零人の体が強い光に包まれ、周囲も巻き込んで神聖な光が満ちていった。

 この光り具合と霊力の注ぎ具合から優人が逆算すると、転送先は相当遠い場所のようだ。

 


 優人は最強の親友に向かって手を振り満面の笑みで見送った。


「行ってらっしゃい!」


 その屈託のない純粋な笑顔を寂しく感じながらも零人は微笑んで1週間の別れの挨拶を告げる。



「──あぁ…………行ってきます」



 そして零人は光に飲まれて魔法陣の中へと消えて行った。

 零人は、この時だけは早く優人の元から去ろうとしていた。


 優人には絶対に見せてはならない、見せたくはない自身の持つ残酷で狂った魂の一面を悟らせないために。


 零人自身が最も嫌う自分になるために、彼は足早に上葉町を後にした。



 ──そしてこの後に起きる2つの出来事は後に霊管理委員会でも伝説となるほどの大事件となるのだが、それは2つとも()()が決して知ることのない秘密の物語……

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