第30話 見守る清らかな者達
零人が教室の自席でボケっとしているといきなり優人が迫ってくる。
「零人君、そろそろ新しい技教えてよ〜」
優人はこちらに飛び込んでくると零人の隣にピタリとついた。
ここ最近は今使える術に磨きをかけていたため、優人は新たに術を習得したくてとてもうずうずしていた。
「──よし、じゃ今日は楽しみながら覚えていくとするか」
「ホントに!?」
最近は実際の戦闘やただ術を教わっていただけだったため優人のテンションが急激に上昇していく。
「今日は皆の守護霊を見てみるぞ」
「守護霊を? あっ、そう言えば見たことないかも」
優人は悪霊しか見たことがない。その中で学んだ常識では『悪霊は日中では活動できず姿すら見えない』という事だ。
昼はとても強く多い霊力を持った魔物がいない限りは出てこれないはずだ。
だから守護霊を昼に見るという言葉に優人は違和感を感じた。
「ま、ただの霊はいつでも自由に動けるんだが、恨みとかそういうマイナスな感情が強くなったり他人の霊力を無理矢理取り込むと悪霊になるんだ。俺らはそいつらの心を綺麗にするためにこうやって働いてんだ……」
「──ってなんか話がズレたな。で、お前の段階だと悪霊のそういった邪気みたいな霊力を感じとって見てるんだ。だから少し目をこらすようにするとしっかり見えるはずだ」
「うんやってみる!う〜ん……」
言われた通りに優人は目をすぼめて凝らしてみた。そして優人は感覚的に霊力を目の方に回して守護霊を見やすくしようとしていた。優人自身の霊能力のセンスで理解できたのであろう。
「わあぁっ!」
今まで生徒しかいなかった教室に様々な守護霊や浮遊霊が違和感なく現れていた。人のような守護霊もいれば、動物や物の姿をした霊など多種多様な霊達がいた。
「普段は俺も見ようと意識してねぇから知らなかったが、結構先祖の霊とか付けてんなぁ」
「分かるの?」
「まぁ、鍛えてくるとセットでこういう『霊視』の解析とかの力が付くんだよ。これを応用して俺は最近、簡単で詳しく見れる術を作ってる」
「それがもしかして、『解析術』?」
「覚えてたか。まぁ、まだ人のステータスや魔術の解析が精一杯で万能じゃねぇけどな」
「零人君は術を色々使えるから十分万能だよぉ」
すると優人は1人の守護霊が目に止まった。
「あの守護霊さんは何?」
優人は手前の席の女子の方に指を指す。いたのは2匹の犬だ。零人が以前に召喚した小犬神に似ている。見た目は完全に普通の秋田犬だ。
「あの2匹、あの子の飼ってた犬だな。大事に育てたんだろ。今でも懐いて守護霊になってんのが証拠だ。……良い一生、送れたみてぇだな」
動物のドキュメンタリーのような感動のできるストーリー、記憶を零人は犬たちのイメージから少しだけ覗いた。彼らは愛されながら息を引き取っていた。
「てうおっ!?」
零人が振り向くと優人の涙腺は一瞬で半壊滅状態にまで陥っていた。話を聞いただけでこの様子、記憶を見せたら大変なことになりそうなので零人は優人にストーリーを見せるのを止めた。
「ぐすん、あっちはぁ?」
少し鼻を詰まらせて指さしたのは廊下側の1番端の席だった。何か細長くて煌めいているものがそこに浮遊していた。
「あれは──刀だな。多分あの席の奴が前世に使ってた愛刀だな。物も愛情込めたり大切に使うと守護霊になったり、たまに霊力で魂を持って人格すら手に入れる奴もいるからなぁ」
これもまたジャンルは違うがとても良い話である。その前世にどんなことがあったのか優人は気になった。
気になるといえば、優人はふと零人の方を見た。しかし見えたのは霧がかかったようにぼやけた空間だった。
首を傾げてはてなマークを踊らせていると零人が首を振る。
「俺の守護霊見ようとしてんのか? なら無理だぜ、俺はアズと『怠惰』の契約してるから守護霊はつかない、厳密に言やぁいるっちゃいるがその守護霊は基本近くにいねぇから──」
優人は好奇心が唆られた。この世界で最も強い零人は一体なんの霊に護られているのか。
「閻魔大王が守護霊ってのもなぁ……」
「ふ、ふぇぇぇぇ!!?」
誰もが知る地獄の象徴。優人の知識が正しければ地獄で最も偉大な存在だ。
他の宗教の魔王などや実際の事情は分からないがとにかくトップクラスなのはわかる。
「てか7つの大罪の能力者全員の守護霊代わりだな、あの人は」
「え、えぇ……」
「あ、偉い奴つったら他にもお前の召喚した魔王とか悪魔のリーダーのルシファーとかいるぜ。皆、地獄じゃ閻魔大王と同じくらいの権力はある奴ばっかだぜ」
「うん、うんと……」
「あ、一気に話しすぎたな。まぁ情報は後で処理してくれ」
もはやリアクションに困るレベルで凄い。凄いとしか言いようがない。ここまで来ると零人を強さや凄さを表すのに適切な表現が見つからない。この男は霊能力にどれほど愛されているのだろう。
「ていうかお前も守護霊見えねぇな……つったっていつもいるわけじゃねえし必ず居なきゃいけねぇもんじゃねぇから気にすることはねぇか」
「なんか言い方怖いよぉ」
自分の守護霊がサボり魔ではないかと不安にかられた。
そして優人は何気なく教室のドアに目をやるとそこには政樹の姿があった。何やらスマホゲームをしているようだ。
2人は政樹の背後を見てみると、そこには小さな謎の物体が政樹の周りを浮遊していた。
「えっ零人君、あれ何?」
「あれは…………茶碗だな」
「茶碗!?」
本日で1番驚きの守護霊が登場した。強そうでもなければ守護することもまともに出来なさそうな霊である。というかそもそも優人は茶碗の霊なんて物は人生で初めて目にし耳にした。
「あの守護霊……一応神様だな、無病息災とかの。でも器の形なのとアレ元々の神社が壊されてから守護霊になった奴だから多分結構な苦労とか不幸持ってきそうだな──まぁ、疫病神だな」
「えぇぇ……」
少し政樹が可哀想に思えてくる。その守護霊を見た2人は見てはいけないような気がした。
「うん、守護霊は人のプライバシーだし勝手に見るのは止めた方が良いよな」
「うん……それがいいよ思うよ。うん……」
すると政樹は絶望し切ったような青い表情でうめき声を上げた。
「60連ガチャ、当たりが1つもねぇ……」
「「Oh……」」
──それ以降2人は他人の守護霊は見ないようにしている。見た時に襲われる罪悪感に耐えられそうにないからだ。
お陰でこの作品も
1ヶ月もなりました。
皆様、ありがとうございます。
これからも『除霊できないピュア男子』
よろしくお願いします!





