灯つなぐオルゴール
1年のおわりにみる夢は、いつもとちがいます。
1年に1度、みんなの夢がひとつになる日です。
そこで何をするかって?
灯の発表会です。
その日だけは、いつもみんなの胸にしまわれている灯が外にでます。
ふわふわと風船のように夢の空へ浮かぶのです。星のない空がみんなの灯であかるくなります。
「いいなぁ」
大小いろとりどりの灯を見上げ、ユカリくんは胸に手をあてました。そこからは糸がでていません。
まわりの人の胸からは糸がでて灯へとつながっています。あたらしい年がきたときに、ちゃんと自分の胸にもどってこれるように。
毎年だれの灯が一番すてきか発表会で決めるのですが、まだ灯をもっていないユカリくんは参加もできません。同じ年のストリートダンスが好きなともだちのなんて、とてもまぶしいです。
みんなが見上げるなか、ユカリくんだけはうつむいていました。
「灯がほしいのかい?」
そこにおじいさんが声をかけました。
「うん」
正直にうなずくと、おじいさんはさしだした手を開きました。
「なら、もらってくれないかい?」
それはにぎれば隠せてしまうぐらいとてもちいさな灯でした。まるでホタルのようにはかなく消えてしまいそう。けれど、とてもキレイな灯でした。
「おじいさんのなのに、いいの?」
こんなにキレイならとてもすてきな、とてもだいじなもののはずです。
「私はコレを造るのが大好きでね」
とりだした木箱をひらくと、小さな人形がくるくると回りながら音色をかなではじめました。
「ぼくのお家にもあるよ」
人形と音色はちがうけど、ユカリくんももっています。おじいさんはオルゴール作家だったのです。
「ありがとう。大好きすぎて、コレを造るしかしてこなかったんだ。だから、奥さんも子供もいない。私がいなくなれば造る人がいなくなってしまう」
「それやだな」
「ああ、私もそれはさみしい。だから、君さえよければもらってほしいんだ」
さみしそうに笑うおじいさんをみて、胸がぎゅっとなりました。だから、
「いいよ。発表会で1番になるぐらいきらきらにする」
「それは楽しみだ」
ユカリくんが両手で受けとると、おじいさんの胸の糸はぷつ、と切れ、代わりに灯からでる糸はユカリくんの胸へとつながりました。
灯がなくなったのに、おじいさんはきらきらの笑顔です。
「ありがとう」
「ぼくもありがとう」
おじいさんの笑顔ぐらいまぶしくしようと、ユカリくんは決めたのでした。その笑顔もきらきらしはじめていました。
おしまい。






