sideジルベスター
間が空いて申し訳ありません。
「何やってんだよ!」
ジルベスターは執務室に座って死んだ魚のような目で頬杖をついたまま、立っているイェルクの怒声を聴いていた。
「ツェツィーリア様、昨日から部屋に篭ってるんだぞ!」
そう。公爵令嬢に抱きつかれたところを見られてからセシリアは執務室に篭り、食事も自室で済ませていた。何度も取り次ぎを頼んだのだが、セシリアに忠実な騎士と侍女たちは全く取りつがない。
「不可抗力だ…」
あの時のセシリアの顔を思い出し、ジルベスターから大きなため息が出た。
「ため息つきたいのは俺らだ!もしツェツィーリア様とのことが破談になったら、お前の首を差し出すからな!ツェツィーリア様誘拐の時の条約改定を見ただろう!?オーラリアの宰相は愛娘のためなら容赦なんてしないぞ?!しかも明日は夜会だ!何としても夜会までにツェツィーリア様と仲直りして、夜会で計画を実行する!いいな?!」
イェルクのお小言を聞き流しながら、ジルベスターはセシリアのことを考える。全くセシリアの顔が見られなくて死にそうな気分だ。
「ところで、なぜツェツィーリア様は部屋に篭っていらっしゃるんです?」
そこで、今まで一言も話さなかったアンゼルムが口を開いた。
「なぜって、それはジルベスター殿下が他の女と抱き合っていてショックを受けたからだろ?」
「抱き合ってなどいない!」
「いやいや、どう見ても抱き合っているように見えた!」
言い合いになりそうなところをアンゼルムが咳払いで制し2人の顔を見る。
「なぜ殿下が他の女と懇意にしていると、ツェツィーリア様がショックを受けるので?」
「それはもちろん自分の婚約者が他の女と抱き合っていたら怒るだろう。」
「ですが、ツェツィーリア様は友好の証としてこちらに輿入れされてきた方。ジルベスター殿下が他にいくら女を囲おうと彼女は構わない方でしょう。」
「アンゼルム、何が言いたいんだ?」
首を傾げるイェルクに対し、ジルベスターはアンゼル
ムの言いたいことがわかったようだ。みるみる顔が明るくなる。
「殿下、お待ちを。」
突然ジルベスターが立ち上がり、そのまま歩き出そうとするのをアンゼルムが止めた。
「何故止める?」
「そのようなお顔でツェツィーリア様に会いに行かれれば、また門前払いです。顔と頭をよく冷やして誠意を見せねば本当にオーラリアへ帰られてしまいます。」
アンゼルムの言葉にジルベスターはしばし考えるそぶりをする。
「イェルク、午後のセシリアの予定がわかるか?」
「あ、ああ。確か執務室から出る用事はないと思う。」
「では午後、私の予定を空けてくれ。もちろん王女たちとの茶会は無しだ。私とセシリアの執務室に誰も入れないように。」
「わ、わかった。だが、何がどうなってるんだ??」
いまいち状況がのみ込めないイェルクに、アンゼルムが声をかけた。
「イェルク殿も早く妻を娶られるとよろしいでしょう。」
ものすごく馬鹿にされた感じはするが、意味がよくわからないイェルクには何も言い返せなかった。
「たぶん明日には仲直りできますよ。」
アンゼルムはそう言って美しく微笑んだ。
次回、ジルベスター上手くいくのか、それともセシリアが母国は帰るのか!笑




