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冥土さんが往く  作者: セフィール
悪役令嬢のお嬢様
19/20

今後

「一目惚れ?」


 え、そんな理由で!?


「はい。私は長年、素敵なお嬢様に仕えることを夢としてきました。」

「あ、はい。」


 なんか唐突に語りだした。


「そこで、召喚された先で素敵なお嬢様に会えることを楽しみに、何度か適当な召喚を横取り…げふんげふん。受け付けてきました。」


 この人、何度も横取りしてたのか。てゆうか、もうごまかす必要なくない?ついさっきも、横取りしたって、すでに言ってたし。


「気分の問題です。」


 あ、はい。


「しかし、なかなかこれといった方は現れませんでした。元々、明確な理想のお嬢様像、というのがありませんでしたので、条件付きで召喚を受け付けてしぼりこむ、といったこともできませんでした。」

「へー。」

「何度か短期的にメイドをしましたが、結局これといった方は現れませんでした。次こそは、次こそは!と、お嬢様を探して幾星霜。今宵!ようやく!ようやく!長年の努力が実り!お嬢様に巡り合うことができました!見た瞬間にわかりました!この方だと‼」

「お、おぅ」


 涙を浮かべながら、仰々しい身振りで、号哭せんばかり。

 どんだけ見つからなかったんだろう。


「ざっと7億年程ですね。」

「なっ」


 7億!?そんな宝くじみたいな数になるの!?

 そ、そりゃあ涙も浮かぶよね。


「お分かりいただけたところで、あらためてお嬢様。末長くお仕えさせていただきますので、よろしくお願いいたします」

「は、はい。」


 若干釈然としないような気もするけれど、まあ、すごい人が見方についたってことで、いっか。

 深く考えたら、なんとなく負けな気もする。

 …現実逃避じゃないよ?


「それではお嬢様」

「ん?何?」

「あれらの処遇は、いかがいたしましょうか?」

「どれ?」


 指し示された方を見てみると、そこには…手足を切り落とされた人間、らしきものが積まれていた。


 …何事!?




 話を聞いてみると、邪魔だったからと、手足を切り、喋れなくして、身動きを封じた上で、邪魔にならないように、ひとかたまりにまとめておいたらしい。

 …どこの誰を!?と思ったけれど、よくよく見ると、近くに黒い服が盛られてる。多分、悪魔崇拝者達。私が手も足も出なかった相手を、さらっと処理するとか、すごすぎてもう何も言えないよ。



「まず、この者達はお嬢様を誘拐し、服を脱がし、危害を加えようとした者達です。ですが、私がお嬢様と巡り合うきっかけを作ったことは、評価に値します。そこで命を奪うのはやめにし、手足と言葉と行動を奪うに留めました。」

「そ、そう。」

「それで、お嬢様。あれらの処遇はいかがいたしましょうか?」

「えっと…」


 そ、そんな急に言われても、ど、どうすればいいの!?


「それでは、まずはお嬢様の目標から考えていきますか?」

「え?」


 私の目標?なんでいきなりそんな話に?


「いいですかお嬢様。ここがお嬢様のターニングポイントです。」

「た、ターニングポイント…」

「はい。はっきり言って、ここで私に出会わなければ、お嬢様は、ゲームのシナリオ通りの運命を歩んだことでしょう。たとえ、どんな努力をしたとしても。」

「っ!」


 そ、そうだったの!?

 てゆうか、このメイドさん。当たり前のようにゲームのこと知ってるな。まあ、心を読めるんだから、驚く程のことじゃないか。


「この世界は神の遊び場です。運命が神によって定められた人間に、為す術はありません。まあ、それは今はいいですか。そこで、です。今後、お嬢様はどんな生を歩みたいか、決めもらいたいのです。」

「どんな生を、歩みたいか。」

「ええ、公爵家に戻り、シナリオ通りの生を歩みたいなら、この場はシナリオに沿うように擬装する必要があります。また、シナリオに沿いながらも、危険だけは回避し、母君と暮らしたい場合も、そのように。」

「な、なるほど。」

「それではあらためて、どのような生を歩みたいですか?」

「え、えぇ。いきなりそんなこと言われても…」


 なんか、さらっと重要そうな話が流された気がするんだけど。

 まあ、メイドさんがいいって言うなら、いいんだよね?

 それにしても、どんな生を歩みたいか、か。

 急にそんなこと言われてもなぁ。

 自慢じゃないけど、前世の私なんて、大学卒業するまで、結局将来の夢すら決まってなかったからね。

 そんな私に、人生設計を聞かれてもなぁ。

 たぶん、ここで決めなきゃだめなんだよね?

 こういう時は、最低限譲れないものをあげていこう。

 んーと、まず、死にたくない。天寿をまっとうしたい。そしてお母さんと放れたくはない。次にゲームシナリオだけど、私の命が懸かってるならともかく、今はメイドさんが、命の保証をしてくれるらしい。それなら、現実になったゲームを、見てみたい。ああでも、公爵家には戻りたくないかなぁ。一部を除いて、使用人の態度も悪いし。となると、平民になるしかない?

 けど、公爵家と違って、働かないと食べていけないだろうし、安全も…。さすがに、メイドさん達に稼がせるわけのは、だめだろうし。て平民じゃ学園いけないじゃん。それじゃあゲームに…はこの際いいか。妥協しよう。いや、公爵家に戻ればいいんじゃ?でもなぁ…


「お嬢様。」

「ん?何?」

「私は最強にして、全知全能に最も近い悪魔。故に、お嬢様はそんな、メリットデメリットを考える必要はありません。ただ、願いを口にすればいいのです。そして、私達に遠慮はいりません。お嬢様の願いを叶えることこそ、至上の喜び。むしろお嬢様が、少しでも遠慮や我慢の類いをされる方が、私達には心苦しいです。その上で聞きます。どのような生を歩みたいですか?」

「えぇ…」


 何かと思えば、すごいこと言ってるよこの人。このメイドさん、神様か何かですか?

 それにしても、なにも考えなくていい?つまり、願望をそのまま全部言えばいいのかな?それなら…


「お母さんと放れたくない。公爵家に戻りたくはない。でも、生活に苦労したくはないし、現実になったゲームも見てみたい。後の細かいことは、今は後回し!」

了解しました(イエス)お嬢様(マイレディ)。」






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― 新着の感想 ―
[一言] 7億年も待つくらいなら直接地上に降りて探したほうがよくないですか?
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