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風精の魔導師、異世界の旅に出る  作者: かーくん
次元連合警察局
45/61

護送任務を終えて

 シャーラに、俺とウォルフがいた施設と実験内容に関するデータを転送した。シャーラは早速データを開いて中身を確認している。


 「本当に貰って良いんですか? 重要な情報ですよね?」


 「その施設は崩壊しているし、実験も行われていない。それに重要な部分は隠してるから心配はいらない」


 簡易的な現場検証が終わったので増援が到着するまで待機となった。到着には、まだ時間が掛かるそうなので護送対象のクラビリスについて訪ねた。


 クラビリスとは、警察局が定めた危険物の総称だ。今回の護送対象は【パンドラ】という魔法具で、開閉出来る箱の形をしているそうだ。


 「使用者の魔力が続く限り、無制限に魔獣を召喚する魔法具です。強さには段階があって、同じ魔獣でも強さに違いが出るのが特徴です」


 「箱の装飾が神話に出てくる聖遺物と酷似している為、宗教的な価値も持っています」


 俺以外の職員達には中身が知らされていた様だ。しかし、宗教的な価値があるなら模造品も出回ってそうなので聞いてみた。


 「確かに模造品も出回っています。しかし、今回の物は別の現場で使用されています」


 職員の1人が経緯を話してくれた。とある犯罪者は警察局から逃げるために、保有していた【パンドラ】を使ったそうだ。初めは模造品の1つかと思ったが、召喚される魔獣に強さが異常なことに気付いた。


 その時はSランク魔導師3人とAランク魔導師10人以上が介入して抑え込んだという。


 「それで本物の可能性が高まった訳か」


 強力な魔法具でありながら神話の聖遺物と酷似しているとなれば”本物”と騒ぐ人達も出てくるだろう。実際に過激派から悪質な嫌がらせを受けているという。


 「国際問題への波及し始めたので渡す事になったんです。今回の護送はその為です」


 警察局としても国家間の軋轢は望んでいないという事だな。


 2時間ほど待っていると増援が到着した。そのメンバーにはウィルの姿があった。


 「なんか、凄い事になってるね」


 「相手の魔法が強くて、車両が溶けたんですよ」


 シャーラの口調が変わってるのは職員が多いからだろうか。さっきも周りに職員がいる時と、二人でいる時で話し方が変わっていたのを思い出した。


 (器用だな)


 シャーラ達が増援の職員達と現場検証を始めた。氷は溶け始めているので足元に水たまりが出来ている。ウォルフの魔法を受けた車両は完全に溶けてしまっている。残っているのは先頭車両と最後尾車両の一部だけだ。


 沸騰した地面を急速に凍らせたので、岩のように固まった地面が大きくひび割れて歩きにくい。


 「ハヅキ!」


 現場検証の様子を遠目で見ているとシャーラが歩いてきた。方針が決まったそうだ。


 「護送担当は目的地のターミナル駅に行って、先方に報告する事になりました。線路に沿って飛行魔法で飛んでいきますが、すぐに出発出来ますか?」


 「いつでも大丈夫だ」


 俺の返事を聞いて、シャーラが護送を担当していた職員を集めて移動を開始した。シャーラを先頭に線路上を低空で飛行して進んでいく。


 暫く飛んでいると視線の先に街が見えてきた。街の外周部にある駅から列車を利用して、目的のターミナル駅に向かうことになった。


 列車に揺られてターミナル駅に着くと、シャーラが目的の人物を見つけた。2人がスーツを来ており、3人が宗教服を来た5人組だ。


 この5人の案内で、近くにあるという宗教施設に向かった。シャーラは職員1人を連れて奥の部屋に5人と入っていった。


 1時間ほどで出て来た。先方への報告は済んだからと、この街にある警察局の施設へ向う事になった。


 「顔色が悪いけど、大丈夫か?」


 「大丈夫。盛大に詰められただけだから……」


 シャーラは何とか口を開いたが、一緒に入った職員は顔色が悪くなっている。警察局でも報告を済ませると、局内の食堂で食事を済ませた。


 「これからどうするんだ?」


 「そうだね、報告も終わったから現場検証は任せて私達は戻ろうか」



 ◇



 飛行魔法を使って、集合場所となったターミナル駅に戻ってきた。ここからは車で警察局のビルに移動する。移動中の空気は重いが話を聞く必要がある。


 「危険物を護送してる時の襲撃は多いのか?」


 「基本はしっかり職員を配置しているので襲撃自体起きません。ターミナルポートでのテロも警戒はしていましたが、相手の戦力がこちらの予想を上回ったのもテロが起きた要因だと思います」


 「強引にテロを起こしても問題無いくらいの戦力……、ウォルフか」


 テロリスト達がウォルフと接触した理由や経緯は気になるが、今話してもどうにもならない。問題は、これからの対応だろう。


 「最近で起きたテロはターミナルポートだけか?」


 「先月に1回と3日前に保管されていたクラビリスが強奪されてます」


 今回の襲撃と合わせてもハイペースで事件が起きている。実力者が1人増えた所で強行手段に出るのは違和感がある。恐らく、準備自体は進めていたのだろう。


 「目的はどこにあるんだ?」


 「裏のルートに流して武器や活動資金を得るのが目的では無いのですか?」


 別の車に乗っている職員がリモートで応えたが、テロの目的としては弱いと考える。


 「武器が欲しいのなら奪った物を使えば良い。活動資金の為にテロをするのもリスクとリターンが合わない。国に対して何かしらの要求を通すのが目的か?」


 「それは不可能でしょう」


 「……何が奪われたんだ?」


 奪われたクラビリスを聞いてみたが、過去の2件については教えてくれなかった。しかし、【旗印(ヴァンガード)】と【パンドラ】があるなら、1つの可能性が浮上する。


 「国でも滅ぼす気か?」


 「さすがにそれは……」


 シャーラ達は、不可能だと否定するが俺は出来ると思う。【旗印】で一般人を洗脳して行政機関に突撃させればいい。足りない戦力は【パンドラ】で補える。


 「いくら洗脳出来る魔法具でも、そこまでの規模で実現させるのは不可能でしょう」


 「【旗印】の洗脳は電波にも乗せられるから広範囲での掌握が可能だ。本来は、敵軍戦隊を洗脳して"自殺"させる為に作られた物だからな」


 文明レベルが上がるほどに行政機関の重要度は上がっていく。そこを潰されると国の機能は完全にマヒする。


 「ブリュンヒルデ、【旗印】の情報もシャーラに送っておいてくれ」


 『了解』


 「……」


 俺の言った可能性について考えてるのか無言になった。リモートで繋いでる車からも声は聞こえて来ない。


 「着きました」


 そうしてるうちに警察局のビルに到着した。地下駐車場からエレベーターで待合ロビーに上がる。シャーラ達は報告に上がるそうなので、俺はロビーで待つ事になった。


 30分ほどでシャーラが戻ってきた。今日は帰って良いそうだ。


 「イザベラはウィルと一緒や。時間が遅いから、このまま一晩預かるって」


 時間は夜中に近い。今から迎えに行っても寝ているだろう。イザベラは警察局の訓練に参加しているので、朝に迎えに行けば一緒に出られる。


 シャーラに頼んでウィルに連絡を入れて貰う。ウィルも寮で生活しているので、寮の入口で待ち合わせる事になった。


 寮の部屋に戻ってオーディンに連絡を入れる。ブリュンヒルデは中継機を使わなくてもオーディンと連絡が取れるのは【境界の羅針盤】のお陰らしい。仕組みを聞いたら、作った人間が詳細を隠したまま死んだので不明な部分が多いとの事だ。


 『ハヅキか、無事に辿り着けたようじゃな』


 「ああ、お陰様でな。世界の名前、勝手に付けさせて貰ったぞ」


 『構わんよ。それで、何か問題が起きたのか?』


 オーディンに359番ことウォルフに会った事、【旗印】がこちらの世界に流れていた事を話した。ウォルフの事はオーディンも把握していなかったそうだ。


 あの施設が崩壊してから消息を絶った実験個体は複数いるが全てを把握出来ていない様で、俺の足取りが掴めたのは俺があの世界を放浪していたのが理由だそうだ。


 『別の世界へ行かれておったら足取りは掴めない。恐らく、管理AIが所在を把握するより先に別の世界へ渡ったのじゃろう』


 「その時に【旗印】も持ち出したのか……それとも他に持ち出した【オーパーツ】があるのか……」


 『ウォルフが持ち出しておったなら、渡したリスト以上に流出している可能性がある。すまんが追加で回収を頼めるか?』


 「それは良いが、回収の条件は同じで良いか? 適切に管理されていたら現地に任せるという……」


 『構わんぞ。だが、万が一に備えて【境界の羅針盤】に座標だけでも記録しておいてくれ』


 オーディンとの通信を終えると手持ちの魔法を確認した。ウォルフの〈ひがくれるとき〉は火系の最上位魔法で、一定以下の魔法を受け付けない性質を持っている様だった。対して〈うみがとじるひ〉はブリュンヒルデとの連立起動が前提になる。


 「作るか……」


 ウォルフの魔法に対抗する魔法が早急に必要になる。しかし、何の準備もなく最上位魔法を新しく作るのは無理がある。明日、シャーラに相談する事を決めて休息を取る事にした。



 ◇



 翌朝、寮の入口で待っていると、ウィルとイザベラが出て来た。昨日の事を聞かれたので、軽く説明しておいた。詳細は警察局で調べるだろう。


 「イザベラ、訓練の感想はどうだ?」


 「大丈夫」


 何が大丈夫なのだろうか、そこの説明が欲しかった。ウィルを見ると察してくれたのか、イザベラの訓練風景を教えてくれた。


 「訓練は頑張ってるよ。魔法はちゃんと使えているけど、全力で撃っちゃうからペース配分が課題かな?」


 魔法を毎回、最大出力で撃つからバテるのが早いそうだ。魔力を増やす分には問題無いが、今後の事を考えると少し気になる。


 「近い内に戦い方を教えるか」


 「じゃあ、その辺は任せていいかな?」


 「ああ」


 訓練では現状のまま継続する事になった。イザベラには攻撃しない戦い方を教える必要がある。柔軟に戦える様になるには時間が掛かるだろうが、少しずつ学んでいけば良い。


 「それじゃ、私はここで」


 ウィルと別れてイザベラと訓練場へ向う。コルザは既に来ており、訓練を受ける職員達も揃っていた。


 「早いな」


 「そうだね、皆んなやる気が凄いから」


 俺達が最後だった様で、早速訓練が始まった。訓練内容は、体力づくりのランニングと筋トレ、魔法の射撃訓練だ。イザベラは周回遅れになりながらもついて行っている。


 イザベラはまだ幼いので筋トレはパスして射撃訓練に移った。動く的に向かって魔法弾を当てる訓練だ。基本的な往復運動から、複雑な立体運動まで的の動きにはバリエーションがある。


 「ハヅキもやってみる?」


 コルザに進められたので訓練している職員に混ざる事にした。往復運動は動きの予測が簡単なので当てるのは難しくない。立体運動も動き自体は遅いので、魔法弾をある程度纏まって撃つと当たってくれる。


 「さすがね」


 「立体運動の的は当てさせる気無いだろ……」


 「でも当てたよね?」


 「遅いからな。あと動く範囲が狭いから纏まって撃てば当たる」


 本来は敵の位置を先読みして撃つ訓練なのだろう。実践では相手は止まってくれないし、動きもより複雑になる。


 「今日は少し早く終わったけど、どうしよっか?」


 今日の訓練メニューは消化したが時間が余ったので追加で訓練を行う事になった。訓練と行っても内容はただの柔軟体操だ。体が硬いとケガをしやすいので、やっておいて損はない。訓練で火照った体のクールダウンにもなる。


 訓練を終えて、訓練場が入っているビル内にある食堂で食事を取っているとシャーラからメールが来た。内容はテロリストの拠点を見つけたので調査に参加して欲しいとの事だ。


 「シャーラから仕事ほメールが入った。17時に来て欲しいそうだから途中で抜けたい」


 「それなら私にも来たよ」


 コルザにも同じメールが来るそうなので一緒に指定された場所へ向かう事にした。


 16時30分、シャーラからのメールで指定された6階の会議室にコルザと入る。中には既に人が集まっており、昨日の護送任務で一緒だった魔導師も来ていた。


 16時50分、シャーラが2人の職員と一緒に入って来た。その職員の1人が話し始めた。


 「予定より早いが揃っているので始めさせて貰う」


 その職員は話ぶりからシャーラの上司だろう。人を集めた理由と目的を話し始めた。どうやらテロリストの拠点が複数見つかったらしい。


 そこで高ランク魔導師を派遣して制圧する事になった。制圧のタイミングは10日後で調整し、同時に仕掛ける。俺はシャーラと組む事になった。

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