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夜が明けて

 星天の下で真紅の花が猛々しい音を響かせながら舞い上がる。星の輝きを塗りつぶし、咲き乱れる花達は絶え間なく咲いては散るを繰り返す。


 「オラァァッ!!!」


 渾身の咆哮を上げて撃ち抜かれた拳は村に侵入した敵を弾き飛ばした。拳が当たった瞬間、爆発が起こり敵は炎に焼かれながら転がっていく。


 オリジナルの強化魔法〈炎精強化(えんせいきょうか)〉によって火の精霊を身に宿したレオだ。赤く輝く肉体から放たれる攻撃は地面を砕くほどの威力を誇る。


 留まる事の無い攻撃は侵入者達にとっては脅威でしか無い。ついさっきまで圧倒的に優勢だったのに魔法1つで戦況が拮抗し始めた。


 「カハッ?!」


 「!!」


 レオの攻撃に気を取られている侵入者の急所を的確に攻撃していくリコ。まさに光と影とも呼べる連携だ。激しい攻撃のレオに意識を向けると死角からリコの一撃が命を奪う。逆に、リコを警戒すれば動きが小さくなってレオの攻撃に無防備になる。


 しかし、侵入者達はレオの猛攻が長続きしない事に気づいた。原因はレオの動きにある。少しずつ攻撃を受け始めたのだ。


 最初こそ一方的に攻撃していたが、今では大振りの攻撃を見切り始めた侵入者達に当たらなくなっている。そうなれば、自ずとリコの攻撃も対処され始めた。


 レオに加勢するため集会所の右側へ来たが、眼の前の状況よりも重要な報告が入った。村の外側にある民家から森を監視させていた精霊達から大量の人影が村に入ったという報告だ。


 精霊達と共有した視界の中では、数え切れないほど多くの黒い影が移動している。


 「ハヅキ!! 助かるぜ!!!」


 「1人増えた所で意味は無い!!」


 俺に気付いたレオが声を上げるが、侵入者達の攻撃は止まらない。姿を現しただけで参戦しないので焦るレオだが脅威はすぐそこまで近づいていた。 


 「どうした?!! ハヅキ?!!」


 対応を迷っている暇は無い。村の中を移動する大量の影、そこから考えられる今後の展開。相手の真意は不明だが導かれた直感に従ってレオ達に警告する。


 「総攻撃が来るぞ!!!」


 「なっ?!」


 侵入者と切り結んでいたリコが俺の警告を聞いて距離を取ると、即座にアスクレス達の元に向かった。レオは驚いて動きが止まっている。その隙を逃さず侵入者達がレオに突撃してきた。


 「レオ!!!」


 「?!!」


 声に反応したレオは間一髪で侵入者の攻撃を躱した。俺を無視した侵入者達の総攻撃を懸命に捌くレオだが、疲労が溜まっているようで動きにキレがない。このままでは数に押し潰されてしまう。


 侵入者の動きも変わった様に感じる。自身の命すらも投げ捨てた様な捨て身の戦い方だ。総攻撃の直前に何らかの命令を受けたのだろう。


 (ブリュンヒルデ、そっちの状況はどうなっている?)


 (大量の敵が押し寄せてきました。対応しきれず押されています)


 残っていた侵入者達がアスクレス達のいる集会所正面になだれ込んだ様だ。そして、こちらにも侵入者達の増援が大量に現れた。


 状況が逼迫(ひっぱく)している以上、手加減している余裕は無い。戦闘に参加しようとした時、ブリュンヒルデを通してアスクレスから通信が入った。


 (ハヅキ、聞こえますか?)


 (どうした?)


 (これ以上死者を出したくありません。全て捕縛してください!)


 まさかの要請に一瞬動きが止まる。聞き返すが答えは変わらなかったので聞き間違いでは無いようだ。この人数を全て捕縛するのは骨が折れる。


 しかし、情報源が欲しいアスクレスの考えも分かる。100人以上の死体が散乱する状況も良くはないだろう。村の復旧作業にも響く。


 (分かった)


 アスクレスの要請に了承を返すと感謝された。頼まれた以上は遂行するが都合の良い魔法は持ち合わせていない。アスクレスからの要請をレオに伝える。


 「レオ、アスクレスからの要請だ。残りの侵入者は全て捕縛する」


 「えっ?! マジ?!」


 驚きと呆れが混じった様な表情で声を上げているが「仕方ない」と受け入れた様だ。リコが報告に向かって戻って来ていないから向こうの戦闘に参加してるのだろう。


 しかし、リコが加勢したからと言って要請したアスクレス達は大丈夫なのだろうか。ブリュンヒルデに聞くとアスクレス達だけでは厳しいとの返事が返って来た。


 (ブリュンヒルデ、そっちは捕縛出来そうか?)


 (私が相応の力を見せる必要がありますが、構いませんか?)


 俺もブリュンヒルデも力を隠しているし抑えている。この世界は彼らの領域で、過ぎた力は災いの種にしかならないからだ。だが、求められているのなら応える必要がある。


 隠している力を使えば捕縛も可能だ。要請したのだから責任も取ってもらおう。


 (問題ない。全力でやれ!)


 (了解!)


 「レオ、悪いが構っている余裕が無くなった。自分の身は自分で守ってくれ」


 「当然だ!!」


 スパイや侵入者は捕まった場合、持っている機密を守るため自殺するケースが有る。アスクレスの要請を満たすには、自殺させない方法で捕まえる必要がある。


 杖をしまって両手を空けると、〈縮地〉で侵入者との距離を一気に詰める。相手の体に右手で触れて、雷系魔法を起動する。


 「?!」


 「〈魔封雷剣(まふうらいけん)〉!!」


 雷の剣に貫かれた侵入者は、その場に貼り付けられたように動かなくなった。この魔法は”貫いた対象を空間に固定する”魔法で、雷の効果によって脳からの電気信号を阻害するので体が思うように動かせなくなる。この魔法なら自殺される事は無い。


 「すげぇ!」


 レオが何か言った様な気がしたが無視して続ける。〈魔封雷剣〉は魔法弾に乗せて打ち出すことも出来るので、〈風の弾丸(ウインド・バレット)〉と組合わせて逃げる相手も容赦なく貫いていく。


 集会所の右側から裏に周りながら、侵入者達を空間に固定して拘束していく。



 ◇



 『〈酸素減衰(オキシ・デクレジン)〉!』


 人形となったブレスレットが広範囲魔法を起動させた瞬間、侵入者達は小さなうめき声を上げて倒れていった。続々と倒れていく侵入者達を見て状況が理解出来ずに思わず尋ねてしまった。


 「これは一体、どういう事ですか?!」


 『空気中の酸素濃度を減らしました。呼吸困難と酸素欠乏による失神です』


 「一歩間違えれば死にますよ?!」


 『その辺りは調整してあります』


 大量殺戮(さつりく)が可能な魔法を平然と使うブレスレットに恐怖を感じるが、今は味方だと無理に思う事にした。そこにハヅキとレオが合流した。


 「左側で侵入者が倒れてたけど、ブリュンヒルデがやったのか?」


 ハヅキが尋ねるとブレスレットは『YES』と答えた。総攻撃して来た侵入者達は全て、ハヅキの魔法で空間に固定されたか、〈酸素減衰〉で昏倒しているそうだ。


 「それで、侵入者達はどこに入れておくんだ?」


 「ハヅキの魔法で集会所の裏に結界を張って、閉じ込めておけないですか?」


 無理を承知で尋ねてみると問題無いとアッサリ返された。この人は本当に、どれだけの力を持っているのか底が知れない。


 「普通に結界を張っても監視衛星を通して気づかれるだろうから、特殊な結界を張るか」


 集会所の裏にある庭に回るとハヅキが魔法を起動した。詳細を聞くと、空間の軸をずらして周囲の世界から切り離す〈断空結界〉との事だ。〈断空結界〉は周囲の世界と切り離されているので、中の出来事は外からは観測出来ないという。


 張られた結界の一部を開けて昏倒した侵入者達から協力して運び込んでいく。その後に空間に固定した侵入者をハヅキが1人ずつ開放して行き、結界内に連行していった。全員を入れ終わったら開いていた結界が閉じた。


 結界内には私とハヅキも入っている。侵入者達は警戒している中、昏倒している侵入者の1人に近づいて身体検査を行った。


 「首の後ろに違和感があるな。ブリュンヒルデ、調べてくれ」


 『了解。……首の後ろ埋め込まれた爆弾を確認しました。それと、装備に盗聴器が仕掛けられています』


 人形のブレスレットが身体検査を行った結果、爆弾と盗聴器を発見した。捕縛した大量の侵入者の数だけの爆弾があると考えると背筋が寒くなる。


 「両方とも外せるか?」


 『少々お待ち下さい。爆弾は首の神経に接続されているので無理に外す事は推奨しません』


 「面倒だな」


 首の神経に接続された爆弾の処理方法について考えたが、適切な方法は思いつかなかった。ハヅキは先に盗聴器を処理するようだ。


 「ブリュンヒルデ、先に盗聴器を処理しよう。ハッキング出来るか?」


 『問題ありません。無力化を実行……成功しました』


 軍用の盗聴器を容易に無力化する技術力には恐怖を感じる。ブレスレットが盗聴器を無力化ので情報を取られたり、遠隔で爆弾を爆発されられるリスクは減った。


 残った爆弾についての対応を考えていると、ハヅキは侵入者の体に強化魔法を掛けた。何をするのかと思って見ていると首の一部に結界を張った。


 小さな結界の中で爆発が起こった。恐らく爆弾を無理やり爆発させたのだろう。


 「がっ?! うぐっ?!」


 侵入者が声を上げて起きた後、うめき声を上げている。結界内では首の肉は爆発で弾けて血まみれになっている。ハヅキはすぐに治癒魔法をかけて首の肉を元に戻した。侵入者の状態を確認するが命に別状は無いようだ。


 「上手く行ったな、かなり強引なやり方だが」


 「ハヅキ、まさか?!」


 恐ろしい想像をしてしまったが、同時に実行される確信も得てしまった。


 「すまないが、我慢してもらうよ」


 ハヅキはそう言って魔法を起動させると強い眠気が襲ってくる。眠気に耐えきれなくなった侵入者達が次々に倒れていく。私の眠気も限界を超えて眼の前が暗くなり、意識が遠のいていくのを感じた。


 「さて、始めるか」



 ◇



 「う…ん…」


 少しずつ浮き上がる意識の中で侵入者が苦しむ姿が頭をよぎり、思わず飛び起きた。辺りを見回すと意識を失っていたアリエス達や侵入者達も少しずつ起き始めてた。


 「ハヅキ?!」


 「なんだ?」


 「まさか、あれをやったのですか?」


 目が覚める直前に見た侵入者の苦しむ姿が頭から離れないのでハヅキに聞くと、何事も無かったかの様に返されてしまった。


 「終わったぞ」


 目が覚めた侵入者達は青ざめた顔で首の後ろを(しきり)りに触って調べている。ハヅキからは爆弾の処理が終わった事を伝えられた。


 「とりあえず、お前達は捕虜として結界の中にいてもらう」


 「俺達はどうなる?」


 侵入者の1人が、自分達の今後を尋ねてきた。


 「それはこの後話し合う予定だが、殺すつもりは無いと言っておくよ」


 「20人以上も殺しておいて信用しろと?」


 「殺すつもりなら手間をかけて助けたりはしない。とりあえず、大人しくしていてくれ」


 そう言って会話を切り上げると、私はハヅキとともに結界の外に出た。結界の外ではアリエス達が待っていたので中での出来事を説明する。


 「ハヅキ、そのやり方は残酷では?」


 「他に方法が無いのだから仕方ないだろう」


 説明を受けたアリエスは頭を抱えているが、全員が生きており大人しくしているので諦めるしかない。



 ◇



 闇を照らす月輪が山の影に隠れ、代わるように反対側から日輪が闇夜を白く塗り替えていく。村を襲撃した侵入者達を何とか(しの)ぎ切ったアスクレス達は暁の空に安堵のため息をついた。


 「ようやく朝か」


 そう呟くレオは地面に座り込んで動けずにいた。襲撃者達との戦闘で魔力と体力の大半を使い切った上での夜通しの監視だ。気力も限界だろう。


 アリエスも立ってはいるが顔には疲労の色が浮かんでいる。こちらも村人への状況説明と護衛で疲労困憊だ。


 戦いが終わってからも次の襲撃に備えて警戒が続けられていた。アスクレス達は交代で休憩を取りながら警戒体勢を続ける。その状態では満足な回復も出来ずに体力と気力を奪っていく。


 バルゴとピスケスは重症を負ったものの命に別状はない。全てを出し切って動けなくなったバランと一緒に集会所の中で休んでいる。


 休憩中の筈のアスクレスはリコと打ち合わせをしている。今回の襲撃で敵がどのルートから来たのか調べる必要があるからだ。


 「休まなくて大丈夫か?」


 「休んでいるので大丈夫ですよ。ハヅキは大丈夫なのですか? 一晩中魔法を使い続けてますよね?」


 「そろそろ限界が近いから、早めに次の対応を決めたい」


 「分かりました。では、もう一度彼らと話したいのですが」


 アスクレスは侵入者達と話がしたいと言うので、アリエスを連れて3人で結界の中に入る。入って来た俺達の姿を見た侵入者の1人が歩いて来た。そして俺達の前で止まると、今回の作戦の大隊長を努めているアゲラだと名乗った。


 「俺達の処遇は決まったのか?」


 「それはまだ決まってません。しかし、私達には情報が必要です。知っていることを話してください」


 少し考えた後、アゲラは今回の作戦の内容と目的、これまで関わった作戦などについて知っている限りの事を話してくれた。また、自身の所属がベルケロアだと宣言した。


 先鋒がベルケロアと名乗ったのは本当の様だ。堂々と宣言する事で却って嘘だと思わせたかったのだろう。


 これまでに彼らが拐った魔法使いやその関係者は本国に送られているが、その先は分からないと言う。アスクレス達が、自分達の聞いている噂についてアゲラに尋ねてみたが当人は知らないとの事だ。


 国の人間に引き渡した後の情報は入って来ないし、聞けば反逆の疑いが掛けられて殺されるのだと話してくれた。


 「これだけ話して生きてるとはな。首の爆弾を外したのは本当の様だ」


 アゲラは感心したように話す。

 

 「ベルケロアの情報が手に入ったのは嬉しい誤算です。しかし、彼らの処遇をどうしましょう? このまま帰す訳にもいきませんし」


 「このまま帰ったら間違いなく全員殺される」


 アゲラは自身の身の上話しを始めた。幼い頃から工作員としての教育を受けており、常に監視されて暮らしてきたという。能力の足りない者や失敗した者は容赦なく殺されていったそうだ。


 「このまま捕虜として、この国で保護出来ないのか?」


 「簡単に言いますね。ですが、情報源を確保したと言えば話ぐらいは聞いてくれるかも知れません」


 「任せていいか?」


 「分かりました。やってみましょう」


 アスクレスは支援してくれている政治派閥の人間に話を通してみるという。


 「このまま結界を張り続けるのも辛くなって来た。集会所の村人を外に出して、アゲラ達を中に入れられないか?」


 「そうですね。集会所に見張を置いておけば村人達も納得してくれるでしょう。話して来ます」


 結界の外に出てアスクレスとアリエスが村人達に説明した。見張が付くならと納得してくれたので、村人達が家に帰った後にアゲラ達に移動してもらう事になった。



 ◇



 「まさか俺達があの国から解放される日が来るとはな」


 「大隊長、信じて良かったのですか?」


 「他に道は無いのだ、信じるしか無いだろう。それに……俺達は生きている」


 部下達の言いたい事も分かる。ベルケロアから解放されたとしてもラカディアで自由が手に入る訳では無い。それでも捕虜として連行されるなら最低限の扱いはしてくれるはずだ。


 部下達と今後の事で話していると俺達を閉じ込めていた結界とやらが消えた。


 「隠蔽の空間魔法をかけてあるから裏から入ってくれ」


 ハヅキと呼ばれた人物が指示するので素直に従う。彼は正しく化物だ。精鋭で固められた今作戦の人員を何の苦もなく殺してのけるのだ。今の状況で逆らうのは愚策だろう。


 魔法使い達の集会所はそれなりに広いが、さすがに70人以上が入ると狭く感じる。


 「ひとまず食事にしましょう」


 アスクレスと名乗った女性が食事を振る舞ってくれた。簡単な物だと言っていたが温かい物が食べられるだけで十分だ。部下の中には感動して泣いている者もいる始末だ。


 「狭いですが(しばら)くはここで過ごして下さい。食事は届けさせますので」


 「分かった」


 人として扱われたのはいつ振りだらうか。叶うなら、このまま人として生きていきたいものだ。



 ◇



 早朝、執務室で仕事をしていると通信が入る。相手は魔法使い達を支援している上級議員のクレスだ。彼の協力の元、アケノスは会談に向けて動いている。


 通信を開くとモニターにクレスが映った。身なりは整えてあるので出勤の直前といった所か。


 「私だ。こんな朝早くに連絡とは、何がトラブルかね?」


 「おはようございます、大統領。トラブルですが、ある意味では朗報と言えそうです」


 クレスに話の続きを促すと耳を疑いたくなる内容だった。まず、魔法使い達の村がベルケロアの襲撃を受けたと報告を受ける。幸いにも、魔法使い達に死者は出なかったそうだ。


 次に侵入者の大半を捕虜にした事。彼らは情報提供に同意しているので情報源として活用出来るという内容だ。


 最後にハヅキという名前の魔法使いだの話だ。我々の特殊部隊から逃げのびただけでは無く、ベルケロアの特殊部隊を一方的に蹂躙した、といった報告がされた。


 「あの魔法使い、それほどの力を持っているのか?!」


 「窓口であるアスクレスからの情報では先鋒部隊を一方的に殺害、追加の侵入者に対しても圧倒的な実力で制圧したそうです」


 「あの国の特殊部隊を相手にか?! 信じられん?!」


 「ベルケロアの捕虜に対して、政治的なトラブルが予想されるからと協力を求めて来ました」


 「ふむ……」


 ベルケロアの我儘(わがまま)はいつもの事だが、この機会に魔法使い達との会談を成功させたい。協力体制を築ければ、わが国の魔法技術は大きく発展させられる。


 「魔法技術の提供を条件に要請を受けよう」


 「分かりました、その様に伝えます。会談の日程はいかがしましょうか?」


 「そうだな……、3日後の午後で調整してくれ」


 「承知しました」


 ハヅキという魔法使いとの邂逅(かいこう)は悪い結果になってしまったが、何とか払拭したいものである。彼の力や知識の一端でも手に入れられれば我が国の技術が大きく発展する事は間違いない。


 「なんとしてでも……」



 ◇



 集会所の外に置いてあるベンチでイザベラと食事を取っているとアスクレスが声を掛けて来た。


 「ハヅキ、会談の日程ですが3日後の午後で調整を進めています。また、協力の条件として魔法技術の提供を求めています」


 「俺が持ってる技術か?」


 「はい。それと、貴方達がこの世界に来た時の事を謝りたいそうです」


 この世界に来た時に受けた襲撃の事だろう。謝罪する姿勢は素直に関心する。政治家は謝らない者が多いが、この国は違う様だ。


 「情報提供は構わないが、一方的に利用されるのは困る」


 「そうならない様に努力します。条件が合わなければ断って構いません。一緒に来て頂けますか?」


 「分かった、同行させてもらおう」


 「ありがとうございます」


 アスクレスと話しているとイザベラが食べ終わっていた。物足りなさそうにしているので、アスクレスに断っておかわりを貰ってくると喜んで食べ始めた。


 「それで、出発はいつだ? 直前という事はないだろう?」


 「えぇ、早いようですが今日の夕方ごろに洞窟内の魔法陣を使ってリュポス自然公園に向かいます。その後、ラカディアの首都ラゲアックで宿泊します」


 アスクレスは調整のため行政府に通うそうだが、俺達は会談の日時まで自由にして良いそうだ。もちろん、監視を兼ねた案内役が付く。


 「観光したい場所や施設などの要望はありますか?」


 「イザベラを遊ばせたいから遊園地かテーマパークかな? あとは子供服が売ってる店に寄ってくれると助かる」


 「分かりました。要望を出しておきます」


 「どうした?」


 イザベラが服を引っ張るので理由を尋ねる。


 「ゆうえんちってなに? あそべるの?」


 「ああ、楽しい場所だ」


 期待に胸を膨らませている、といった表情で食事に戻った。食べ終わるとウトウトし始めたのでイザベラをベンチで寝かせようとしたら、アスクレスから家のベッドで休んで良いと言われた。


 イザベラも村人達と集会所の中にいたので侵入者達との戦闘を目の当たりにしている。戦闘後も恐怖と警戒心のせいで眠れなかった様で疲れが残っているのだろう。


 言葉に甘えると返したら鍵を預かった。アスクレスは集会所に残って仕事をするとそうだ。不用心だとは思うが信用されていると思う事にする。


 「何かあれば呼びますので、時間まで休んでて下さい」


 アスクレスの家につくと預かった鍵で中に入り、使わせて貰っている部屋のベッドにイザベラを寝かせた。


 会談までは日にちがあるが、万が一も考えられるので残りの魔力量を確認しておく。


 「ブリュンヒルデの魔力残量はどのくらいだ?」


 『残り30%です。完全回復まで70時間です』


 「ブリュンヒルデは会談にはギリギリ間に合いそうだな。俺の方は無理そうだが」


 俺の魔力残量は、〈断空結界〉の長時間使用の影響で体感10%を切っている。。予備の魔力は杖に蓄えているが出来れば使いたくない。


 「とりあえず休むか」


 俺はイザベラが寝ている隣の空いてるベッドに入って休息を取る事にした。

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