#77最後の砦
ここはサチ要塞。サチ国の首都とその周辺の町を取り囲む巨大な要塞である。他にも要塞はあるが、
このサチ要塞を突破した先にはもう要塞はないので、サチ要塞は、最後の砦ということになる。
最後の砦とだけあって、他の場所よりも守りは強固である。
「これは・・まずいことになったぞ・・・・」
ここの指揮官は、そんな風に呟いた。ここを守らなければ、サチ国の敗北は現実になる。
ここを突破されれば、自分の処刑は免れない。そう言った責任感と恐怖が、ひどく彼を襲ったのだった。
「この戦い、勝てる気がしない・・」
指揮官がそう思うのも無理がなかった。ここまでサチ国は全戦全敗。現在の疲弊した兵士が勝てるわけもなく、守り切ったとしても、サチ国が衰えるのは必至だったからだ。
「それにしても、あの新型の武器は何なのだ?」
新型の武器とは、日本皇国の持っている銃のこと。サチ国にはまだ、銃で何故人を射れるか、
何故音が出るのか、何故あそこまで高速なのか、何一つ分かっていなかったのだ。
しかし、今銃の原理を知ろうとも、できることは皆無だったが。
指揮官は、自分にできることを探していたのだ。
「ついに、来たか・・・」
要塞の向こうには、はっきりと、日本皇国の歩兵が向かってくるのが見えた。
もうすぐ戦闘が開始される、そう思い、指示を出した。
「全軍、前線へ配備!今すぐ戦闘態勢につけ!」
もう無為無策の判断だった。どうせサチ国は負け、自分は処刑される運命なのだから、
もうどうでもいい。彼はそう思っていたのだ。
正面へ突撃する騎馬隊は、全滅し、他の歩兵も次々に倒れ、石でできた要塞など、
いとも簡単に壊され、それの修復をしていた工兵も地に伏せ・・・・・
指揮官は、そんな光景をただ呆然と眺めていた。
虫のように倒されていく自軍の兵を見ると、何故か知らないが、気持ちがすっきりしたような気がした。
「これで、サチ国は滅亡だな・・・・」
そう言い残すと、彼は指揮、統率を止めて、その場所を後にした。
指揮官には先ほどまでのプレッシャーも消え、ただ解放感だけが残っていた・・・・




