#74決戦の地
ここはサチ国の軍事基地。先の海戦で、九州への侵攻を許してしまったサチ国は
ここで迎え撃つしかなかった。そのため、両軍の陸上部隊が顔を合わせていた。しかし、
両軍の陸上部隊には大きな相違があった。まずは、日本皇国側に馬が1頭もいないことだ。
馬は機動力に優れているため、野戦では重要なはず。それなのに、何故か馬は1匹も
引き連れていなかったのだ。後ろで、待機しているのかとも思ったが、どこから見ても、
目には陣地を張る日本皇国軍の歩兵しか見えていない。
「それに、あの変な筒は何だ?」
サチ国側の指揮官はそう思った。いや、指揮官のみならず、兵士たちも思っていた事だ。
それも、ただの筒ではなく、片方の先端が曲がっていたからだ。あれは、敵を殴るための武器
だとしても、あの曲がりは変だったからだ。
それに加え、兵士の格好も普通ではなかった。普通なら、身を守るために甲冑をつけるが、
甲冑は着ていない軽装だったのだ。確かに、動きやすいかもしれないが、死んでしまっては
元も子もない。
サチ国側は、日本皇国軍は奇妙だと思ったが、兵の数では勝っているし、馬もいるから
負けるはずはない、そう過信していた。
そして、両軍は準備を終え、ついに指揮官は命を下した。
「騎馬隊、突撃!」
そう言われ、騎馬隊は数100m先の日本皇国兵を目がけて飛び出していった。
すると、日本皇国兵は塹壕を掘り始めた。
「日本皇国は土なんか掘って何をしているんだ?」
そう思った矢先、日本皇国は騎馬隊が近づいてきたせいか、後尾にいた兵が銃を構え、
騎馬隊に向けて撃った。
ドォォォンッ!!
その音と伴に騎馬隊からは赤い花がいくつも舞った。当たらくても、馬は音に驚き、
騎手を捨てて逃げ出してしまった。おいて行かれた騎手は日本皇国からの格好の的となった。
「な、何が起きたんだ・・・?」
その光景に指揮官は立ち尽くすしかなかった。気付いた時には突撃した騎馬隊は全滅していた。
それを見て、また愕然とした。
「指揮官、命令を・・!」
補佐官の声にやっと気を取り戻した。その時、選択肢は1つしかなかった。
「全軍、退けっ!退けっ!」
この戦いに、サチ国は完敗した。サチ国は甚大な被害を被ったが、日本皇国は無傷だったのだ。
現場にいた指揮官はもちろん、無敵と称された騎馬隊が負けるという前代未聞の事態に、
国内は動揺していた。




