#62交渉
サチ国サイド
ここはサチ国の王宮。サチ国の王であるサチ国王はここに住んでいる。今まで平和だった
この地に突然、一つの知らせが来た。
「陛下、失礼します。陛下に御用があり、参りました」
国王の重臣がここ、王の間に訪ねてきた。奥の玉座に座るサチ国王は、こう言った。
「何があったのだ」
「はい、日本皇国という国の使いが陛下と謁見したい、と申しています。陛下は日本皇国
を知っておられますか?」
「日本皇国」という語を聞いて、国王は少しばかり考えたが、そんなものは全く聞き覚えが
なかった。
「いや、知らぬな。その日本皇国とやらはどこにあるのだ?」
「使いによれば、秋津島(本州)の越後から安芸、岩見にかけてと伊予之二名島(四国)の讃岐を
持っているそうです」
「ほう、つまり我が国との国の境は周防と長門か・・・」
国王は表情では毅然とした態度でいるが、内心ではかなり驚いていた。新潟から広島、島根
という本州の大部分と香川まで領有しているとは、この時代からすればあり得ないことだ。
新潟まで行くと、環境が厳しく、国の手に負えない。
しかも、使いをここに送るには、島根からだとしても遠すぎる。船でも安全に来れる保障は
ないのだ。
「まあいい。その者を通せ」
そう言うと重臣は日本皇国の大使を連れてきた。
「本日はサチ国王陛下にお会いでき、誠に恐悦至極に存じます。私は日本皇国大使、
宗像良介と申します」
大使である宗像は自己紹介をした。サチ国から見れば、珍しい名前だし、服装も違う。
顔立ちも似ているようだが、どことなく雰囲気が違った。国王は、文化が違うという
ことを悟った。
「で、今日は何の用でここに」
国王が1番したかった質問だ。今までも他の弱小国が訪ねてきたことはあったが、今回のような
遠い地からの国が来たのは初めてのことだったからだ。
「はい、我が国は貴国と国交を結び、交易を築きたく、来た次第です」
「交易・・・・だと?」
国王は聞き返した。いきなり国の王宮に来て、交易をしたいだなんて前代未聞だ。しかも、
この時代に貿易という概念があまりないし、交易と言っても国内での小規模なものだ。
それ故に国王は耳を疑ったのだ。
「そうです。では、こちらからの交易の条件を読み上げますね・・」
そう言うと宗像は交易条件を読み上げた。




