#49とある地で(前編)
ここから少しの間、別視点の話です。
とある国外の村サイド
平穏だった生活に、ある日突然彼らはやってきた。その日は霧がひどいため、狩りはせずに
妻子と共に家にいた。
家族と一緒に、狩りに使う槍頭用の石を研いでいたのだが、ふいに妻がこう言った。
「あれ・・・何?」
指を指した先には、外の方から私たちの村に近づいている男たちの姿があった。霧のせいで
顔がよく見えないので、常備している槍を持ちながら外に出てみる。おそらく、
この村の者じゃない。この村に何の用があるんだ?妻には少し待ってろと言っておいた。
「何だ、あれは・・・」
自然と声が出た。その男たちは何やら、片方の先端が少し曲がっている筒のようなものを
持っている。槍にしては柄が太すぎるし、そもそも尖っていない。
男たちの服も私たちと違う。まさか大陸がこの村にも攻めてきたのか?
「お前は・・この村の者か」
こちらに一人の男が近づき、そう言った。何故かその他の者は後ろで立ち止まっている。
「そ、そうだが・・・」
「なら話は早いな、早速だが・・」
「待て。お前たちはどこの者だ」
その怪しい者は冷淡な口調のまま言い続けていたが、それを止めた。誰なのか分からないまま、
話をされても困る。
「これは失礼。私は日本皇国自衛隊外務1班班長、葛城哲治と申す」
その言葉は全く意味が分からなかった。日本皇国?自衛隊?知らない単語ばかりだった。
それについて尋ねてみる。
「・・日本皇国とは?」
「日本皇国はここから東にあり、我々が住んでいる神国である。最も尊い天皇が治める国
のことだ」
またしても意味不明。神国?天皇?余計疑問が膨らむのでこれ以上はこのことを聞かない。
「・・・それで、何をしにこの村へ」
「我々は天皇の意向により、この地を平定すべく、来た次第だ。どうかこの村を私たちへ譲って
くれないか?」
「・・・・・?」
またしても訳が分からない。人外とでも話をしているのかという状態だ。頼み方こそ
お願いしているようだが、突然そんなことを言われても困る。
「そのことは村長に聞いてくれ。私だけでは決めることはできない」
「では村長をここへ連れてきてくれ。あいにく、こんなものを持っているのでな」
と変な筒のようなものを見せながら言ってきた。よく分からないが、言われた通り村長の
元に向かった。その時、いつのまにか霧は晴れていた。




