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異世界転移!~才能がなくとも活躍できることを証明してやろう~   作者: かずっち
第二章 生きるって大変
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*019 調査とボッチ

*019 調査とボッチ


 あの後、リーナはその日の夜になっても帰ってこなかった。俺は心配したがルミエルさんが言うにはたまにあるらしい。

 それにリーナのような経験者が夜の森の危険度を知らないはずがない、との事だ。信頼されてるなー、俺の時はマリンがいたというだけでみんなで捜索するくらいだから信頼の差がすごい。


 心配しても仕方ないので、俺は部屋に戻ってから自分の手持ちを机の上に並べていた。戦闘中にポケットとかに何か入ってると邪魔だし整理しとこうと思ったからだ。


 スマホに懐中時計、今はお金を包んで財布代わりにしているハンカチが元の世界から持っている数少ない物で、この世界に来てから手に入れたものは服やポーチ、武器類が並べられる。


「うーん、流石にこんな大金持ち歩くのはまずいよな」


 マリンが報酬を受け取らなかったおかげでかなりお金が手に入ったが、68枚と中途半端だったので合わせるために18枚をルミエルさんに渡した。これでしばらくは寝床に困らなくていいわけだ。


 残りの50枚はこの部屋に置いておくことにした。ついでにスマホも置いておくことにする。この世界だとネットも電話、メールと使えないので時計と目覚ましのかわりにしかならない。

 懐中時計があるのであまりもっていなくても問題ないだろう。それにスマホのバッテリーも温存しときたい。例えほとんどの機能が使えなくなってもなんとなく残しておきたい。


 俺はスマホとお金を机の棚に入れて、布団に入る。


「そういえば森以外にも依頼ってあるのかな......」


 今まで森での依頼しかやってなかったが......村の仕事を手伝うのだし村での仕事もあるはずだ。 

 明日どんなものがあるのか見て回ってみるか。俺は明日の予定を立てながら目を閉じた。




カンカンカンカンカン


 あれ、スマホのアラームか?けど昨日しまったし、それにこんな音だっけ?

 

 俺が寝ぼけながら起きるとドンドンと扉がやかましく叩かれる。なんだなんだ?


「巧! 起きてる? すぐ武装して村長の屋敷にきて!」


 こんな朝っぱらからなんだと思ってたらリーナの声が聞こえた。なんだろう、この流れは、今までの感覚から嫌な流れな気がする。


 村長の屋敷につくと、リーナやラウル、シャンにカールと何でも屋のメンバーの他にダスティンなどの畑や田んぼとかで働いていた人達が武装して庭に集まっていた。全部で50人ほどだろうか?


 俺は入口の近くにいたシャンにどういう状況か聞くことにした。


「なあシャン、この集まりはいったい......」

「僕にもわからん、だが『緊急の音』を村長が鳴らして集合をかけるのだからよほどの事だろう」


 『緊急の音』というのは村長の屋敷にある魔装を使ったものらしい。ただ広範囲にあのカンカンという音を鳴らすだけらしいがこの村では火災や魔獣の襲来なんかの時になるらしい。

 つまりそれがなったという事は......


「火災や魔獣が?」

「少なくとも僕の知っているかぎり火災はない。だいたい火災ならすぐにそこに消火活動に行くだろうしな。おそらく魔獣関連だろう」


 魔獣関連か......そういえば昨日、リーナに森が静かになった事を言ったらかなり慌てていたがあれはどうなったのだろう。


「みな聞け!」


 大きな声が響いた。見るとみんなの前に村長が立って話していた。


「先日、うちのバカ娘が迷惑をかけた件。まずはこの場を借りて謝罪する」


 それって多分、夜にみんなが捜索してくれた事だろうか。俺もまだ一部の人しか謝れていないな。ちゃんとみんなに謝りに行かないとなー。


「そしてそのバカ娘が『外周部』の魔獣をかなり狩ったのだが、それで異例が起きた。たかだか数百匹程度狩っただけで森のざわめきが消え、静寂な森になっていたのだ」


 村長がそう言った時、俺以外のみんなが驚いたような顔をする。え?あの静寂さってそんなにやばい事なのか?


「なあシャン、そんなにやばい状況なのか?」

「は? やばいもなにもそんな事、本来ありえないんだよ」


 森は今まであったアリやイノシシ型なんかの魔獣は確かに攻撃的で凶暴だがそうでない奴もいるらしい。魔獣は確かに魔素によって暴走した生き物だが中には争いを好まないもの。自分の住みかから出ないものなどがいるとか。

 そんな奴らは基本、人や他の魔獣を襲わない。そしてそいつらがいるからただ攻撃的な魔獣を倒しまくったとしても森はいつもざわつく。それに魔獣はあの1部だけで1000匹はいるとされているらしい。


おいおい、じゃあ俺やマリンが目の前に現れる魔獣を撃退したって物理的に不可能じゃん。そう思ってると村長の口が開いた。


「ワシは『外周部』に『中央部』の魔獣が住み着いた可能性があると踏んでいる。よって今より森の調査を行う。参加者は報酬で金貨10枚をだそう。2、3人のペアになって森の探索に行ってもらう」


 えー。あのクマ型みたいな奴が住み着いた可能性あるのか、怖いなあ。あ、だからペアになって捜索をするのか......ってちょっと待て!ペアって俺知り合い少ないじゃん!早く知り合いと組まなきゃ!


 俺は隣のシャンに声をかけようとしたがすでにいなかった。


「あれ?」


 周囲をきょろきょろするとすでにシャンがラウルやカーンのところに混ざっていた。はや!

 見ればリーナやダスティンにもすでに人が群がっている。今から危険な魔獣の討伐になるかもしれないのだ。みんな古代魔装持ちのところに行くのは当然か。


「やばい......組んでくれそうな知り合いがいない......だと」


 ここのいるほとんどの人が田んぼや畑で一緒に働いている人だろう。どんどんバラバラにいた人達が2、3人のペアになっている。

 よく漫画や小説でボッチキャラがペア組めずに先生とやったりするシーンがあったがこんな気持ちだったんだろうな。


「ねえ巧、あんたその様子じゃはぶられたんでしょ?」


 失礼な!はぶられたんじゃない、そもそも知り合いがいないだけだ!と言おうとして声の主を見て固まる。マリンが森に行った時の格好をして立っていた。おいおい、まさか......


「私と一緒に森に......」

「ごめん、無理だ」

「一緒に、ってなんで言いきってないのに断るんだよ!」

「断るよ!あんな事あった後にまた同伴する奴いるならタダのバカだよ!」


 勝手に暴走してやられたりなんかすればこっちがフォローしなければいけない。ましてや今度は『中央部』の魔獣を討伐しないといけないのだ。

 前回は逃げるだけでなんとかなったが今回はどうなるか分からない。


「今回はあなたの言う事を聞くわ、だからお願い!」


 マリンが手を合わせてお願い!の仕草をする。言う事聞くって本当かなー......


「すまない巧君。連れていってやってくれんかのう」


 いつの間にか(おそらく≪チェンジ≫で後ろに来たのだろうが)村長が俺の後ろに来ていた。


「村長、俺はバカじゃないんですよ?いまから『中央部』の魔獣と戦闘するかもしれないのに」

「その事なのじゃが少し思う事があっての。すこしでも戦力になる者を連れて行きたいのじゃが......」


 村長がチラっとマリンを見る。


「このバカ娘と組む奇特なやつはおらん。けど巧君ならペアを組んでくれると思ってのう」

「えーでも......」


 俺はマリンを見て考え込む。確かに『中央部』の魔獣がいるかもしれないのだ。戦える人数は多いに越した事はないんだろうけど......けどあの腹黒村長が思う事があるというのも気になる。

 幸い、マリンは俺の指示に従うと言ってくれてるし問題ない......と思いたい。


「はい、分かりました。マリンと一緒に行ってきます......」

「よろしく頼むの」


こうして俺とマリンで森の調査に行くことになったのだが......大丈夫だよね?








誤解をさせてしまって申し訳ないのですがこの作品のメインヒロインはセリーナことリーナです。たまたま、たまたま出番がないだけで彼女がメインヒロインなのでそこは勘違いしないでください!次の章ではちゃんとしますから!


読んでいただきありがとうございます。感想やアドバイスもらえると嬉しいのでどんどん言ってください。twitterもやっているのでそちらでもお待ちしています!twitter @Curia0612

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