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始まりの前。3

 

 さて、彼女の生存を勝ち取る代案は二つあります。


 代案その一。

 少女を抱え、スタントマンよろしくボンネットの上を転がり衝撃を最小限にする。

 デメリットしては、少女を抱えたまま一緒に転がる事でしょうか。

 最悪私の体で少女を押しつぶす可能性があります。

 メリットは私の体が衝撃吸収材の代わりになること。

 ですが、彼女の危険性は私と大差ないのが懸念でしょうか。


 代案その二。

 彼女を抱えあげ投げる。もしくは突き飛ばし私から離す。

 デメリットは私の行動で彼女が怪我をしてしまう事でしょうか。まぁ車に轢かれるよりはマシでしょうが。

 メリットは完全に危険から少女を遠ざける事がでる。


 本命はやっぱ二、ですかね。

 それに安全地帯だと思われる場所には少女に笑いかけている母親らしき女性。

 ならば、私の命を『賭け金』に家族愛を『掛け金』にいたしましょう。


 モノクロ世界では私以外がゆっくりと動いていたのが幸いしました。

 これで私の体もゆっくりだと詰んでましたね。


 すぐさま少女の脇に手を入れ、救い上げる様に抱え上げそのまま母親らしき女性に全力で放り投げる。

 その時、腹に力を入れて大声で――


「奥さんっ!! 受け止めて!!」


 と叫びました。


 その声を聞いた母親らしき女性は驚愕してましたが、手を広げ自分に向かってくる少女を受け止める態勢に。


 ――素晴らしい。


 母親はすごいなと思った瞬間に私の見てる世界は真っ暗になりました。

 そこで私は死んだのでしょう。ただ漠然としていましたが、そういう確信がありました。

 それよりも変にかっこつけて助けれなかったら、かなりの黒歴史になるところだったと安心もしました。


 で、ここで不思議だったのが()()()()()()()()()()です。

 死んだのですから、意識などあるわけがない。


 騒然となる現場。


 少女は母親らしき女性に抱きしめられて無事のようです。

 子供を受け止めた彼女は尻もちをついたような姿勢ですね。

 キョトンとした二人の顔がそっくりなのでやっぱり親子のようですね。可愛いですねママに似て。


 それと私は上から自分の死体を眺めています。

 いい感じにぐちゃってますね。手とか脚とか。


 自身の遺体を近くでみたいなぁ。と思えばスーッと死体の近くへ。

 てか、死後の世界ってのは本当にあるんだな、としみじみ思いましたね。


 で、私を轢いた運転者は、と見渡すと少し先で止まった車の脇で顔を青くして慄いてました。

 それから、車に乗り込みそのまま急発進……ひき逃げですか。


 救いようがないクズですね。と思えばそれに同意する声が聞こえてきました。


「ほんと、それな。しっかし最近ひき逃げとか多いよねぇ」


 あーお迎え的な存在かな? なんて思ってると、


「いやいや。そんなんじゃないよ。たまたまこの辺漂ってただけだから」


 とお返事を頂きました。え? 会話できんの? と思えば、


「いやできるでしょうに。やぁやぁ初めまして。えー……ギリ青年? くん」


 これにも驚きましたね。まさか死んだ後も会話できるとはって。

 それから、自分の死体を見ながら声がわりと好みのボクっ娘と色々お話ししました。


 その会話からわかった事。

 私は今魂だけの状態で元の体では蘇生不可能な事。

 ボクっ娘はハイパーでスーパーなゴット的な存在。

 彼女いわく「君たちにわかりやすく言えば、ダークマターみたいな感じ?」だそうです。

 なので、便利上ダークちゃんとお呼びする事に。

 あと彼女は大のクトゥルフ神話好き。

 どれだけ好きかと言えば、邪神を創るほど。


 いやいやそれ創っちゃダメなやつじゃない? とツッコんだら、


「いやぁお気に入りのキャラってフィギュアとか欲しくならない? そんでもって動いたり会話できたりしたら最高じゃんって思うでしょ?」


 と言い返され何も言えなくなりました。わかってしまうその気持ち。


 しかし、邪神をフィギュア感覚で作ってしますとは……。

 さすがダークマター、恐ろしい子! 


 でも彼女からするとアザトースとかナイアーラトテップっぽいモノらしいです。


「いやぁ創ったのはいいんだけど、コア的なモノがねぇ……チラチラ」


 口でチラチラとか言ってもね。まぁ姿見えないんであれですが。


「でぇ、相談というか提案なんだけど……」


 あーその先はわかった気がします。私にそのコアになれ、と言いたいんですね。


「正解! どの道輪廻にポイされれば自我もなにもまっさらな感じになるんだし。どうかな? どうかな?」


 楽しそうにグイグイきますねぇ……ちなみ、それは確実になれるものなんでしょうか。


「うーん。ボク的には九割は成功すると思うよ」


 成功率九割……で失敗するとどうなるので?


「え? 無になる。あと輪廻には還れないね」


 なるほどねぇ。

 まぁ輪廻とやらにポイされても私って自我は無くなるんでしょうから、どの道、無ですよね。

 しかし、ダークちゃんの創った邪神のコアになれれば、ワンチャン私継続が可能……その辺どうなんでしょうか?


「うん。コアになるって事は君がボクの創った邪神になっちゃうって事だから、勿論成功すれば君は邪神として復活できるよ。自我もそのまま。しかもおまけにハイパーでスパーな存在になれますっ! いかがでしょうか! お安くしときますよ?」


 これほど胡散臭い交渉ってそうないですよ。ですが……その提案お受けしましょう。


「おお! 流石ボクが見込んだだけの事はあるねっ! 君ならやってくれると思ってたよ!」


 とさらに胡散臭い事を言われると全身を何かに掴まれて感覚が。


「じゃ早速ぶち込んでみよう!! 次話す時は君が邪神になった時だね! んじゃ頑張って!!」


 その言葉を最後に私の見えてる世界は再び真っ黒に染まりました。

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