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転生したらスライムだった件  作者: 伏瀬
色々番外編
282/304

SS -夜の蝶- 虎の穴様 一巻用特典

 このSSは、虎の穴様の特典に書き下ろしたものです。

 ※17話の、夜の店へ訪れた際の話です。

 虎の穴様のご厚意(ありがとう御座います!)で、掲載許可を頂きました。

 意外にも、スライムの身体は快適である。

 移動にも苦労しないし、疲労も滅多に感じない。大雑把な性格である俺としては、概ね不都合はなかったのだ。

 だが、ここに来て重大な問題が発生した。


 俺は、『夜の蝶』という名の店へとやって来ていた。

 打ち上げとお礼を兼ねて、カイジンに連れて来て貰ったのだ。

 俺は興味なかったんだが、カイジンがどうしてもと言うから仕方ない。

 いや、本当に興味はないんだけどね。でも、カイジンがどうしてもと言うから……。

 ……。

 仕方ない、認めよう。

 本当は興味津々だった。久しぶりに綺麗なお姉ちゃんと一緒に酒が飲めると、俺は喜び勇んで店に入ったのだ。

 ところが!

 お酒を飲んでも、まったく酔えなかったのだ。これは非常に重要な問題であると言える。せっかくカイジンに連れてきて貰った店なのに、これでは楽しさが半減というもの。どうにかして酔えないかと試したのだが、そもそも味すらも感じないのでどうしようもない。不屈の精神で頑張ってみたのだが、こればかりは諦めるしかないようだった。

 しかし、楽しみはお酒だけではない。

 俺は切り替えの早い男、こんな事くらいでは諦めたりはしないのだ!

 というわけで、『夜の蝶』という名に恥じぬ、美人で有名なエルフのお姉ちゃん達と戯れたいと思う。


 ここでまたまた問題発生だ。

 スライムの身体には不満は無かったのに、この店では問題ばかり発生する。

 今度の問題は、手が無いという事だ。せっかくのエルフのお姉ちゃん達だというのに、触る事が出来ないとは大問題だといえるだろう。

 しなやかで繊細な細い腕に抱かれ、豊満な胸に押し付けられて。

 素晴らしい! ここは天国なのか!? そう絶叫したくなるような極楽な状況だというのに……。

 悲しい事だが手が無い為に、それ以上何も出来ないのだ。

 俺は今まで捕食した魔物達を思い浮かべ、手なり触手なり、俺の想いを伝える事の出来る器官が作れぬものかと必死に考えた。

 こんな時こそユニークスキル『大賢者』だと考え、早速命令する。

 しかし――


《解。データ不足です。指定部位の作製に失敗しました》


 使えねーーー!! 何が『大賢者』だ。肝心な時には、全く頼りにならないヤツである。

 だがまあ、捕食した魔物――蛇、百足、蜘蛛、蝙蝠、蜥蜴、狼――を思い浮かべてみると、確かにそんな機能を持つ者は居ない事に思い至った。

 残念だが、オッパイを揉みしだくのは、諦めざるを得ないようである。


 だが! 俺は、ここで諦めるような男ではない。

 揉むのが無理だとしても、エルフのお姉さん方の、馥郁たる香りを楽しむ事は出来るのだ。

 豊満な胸に包まれて、天上の香りを楽しむ。これぞまさに、大人の男の極上の生き方というものであろう。

 さっそく楽しませて頂く事にする。

 胸一杯に空気を吸い込む。そして到達するアロマの世界。

 ここで牙狼族からゲットした『超嗅覚』が大活躍してくれた。

 もっと知りたいという知的好奇心が求めるままに、俺はエルフの美女達の匂いを堪能する。


《解。成分は香水に加え、女性ホルモンの一種であるエストロゲン、オキシトシン――》


 ストップ! 違う、そうじゃないんだ!!

 そんな具体的な知識が知りたい訳じゃないんだよ……。そこまで知ってしまうと、わびさびがなくなるというもの。

 本当に、『大賢者』とは名ばかりか? マジで使えないスキルである。

 俺は『大賢者』に懇々と説明を行った。

 確かに匂いを嗅ぎ、その素晴らしさを知りたいとは思うが、それは決して知りすぎては駄目なのだ、と。

 ほどほどが良いのだ。何事も、超えてはならぬ一線があるのである。

 知りたくても、知る事が出来ない。見たくても、見る事が出来ない。

 それこそが、極意。

 人とは、知ってしまえば興味を失うものなのだ。だからこそ、もう少しで到達出来るという極限まで攻めて、それ以上は自主規制が入るというもの。

 これもまた、チラリズムの変異形と言えるだろう。

 知的好奇心を抑圧する事で、より大きな興奮を得る。玄人にしか出来ない、大人の嗜みというものだ。

 俺はそうした事柄を、とくとくと『大賢者』に説いて聞かせたのだった。


《……解。理解しました》


 マジかよ? 流石は『大賢者』である。

 俺の熱意が伝わったのか、極意を悟ってくれたようだ。


 極意を理解した『大賢者』は素晴らしかった。

 知りたくてたまらない、そんな気分にさせる直前まで悟らせてくれるのだ。

 具体的に言うと、匂いで女性の気分が理解出来るほどであった。

 喜んでいるや怒っているといった、喜怒哀楽程度の気分であるが、夜の店でその情報は、値千金に匹敵するというものだ。

 俺は、この店での王者の立ち居地を確保したのである。

 この効果は、匂いだけの事ではない。

 視覚も同様、見えそうで見えない映像を、脳内で再現してくれるのだ。

 俺の視覚は、未だに『魔力感知』に頼っている。

 目という部位だけを再現する事は意外に難しく、『魔力感知』により映像を再現した方が負担が少ない上に視野が広いのだ。

 その視野の広さを利用して、人の目では見えないハズの、スカートの下からの映像すらも入手可能。

 しかし、エルフのお姉ちゃん達が巧みに死守しているだろう黄金三角形を、完全に見えそうで見えないように再現してくれる。

 流石は『大賢者』……恐るべきヤツよ。


 こうして、俺の夜の店での飽くなき探求は、無粋な邪魔者が現れるまで続けられたのだった。


 本日より、漫画版が開始しました。 

 活動報告をUPしましたので、興味のある方はチェックをお願いします!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 予想外すぎる賢者の使い方最初に出てたら絶対イメージ崩壊してたよw
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