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サブストーリー「迫る双極【1】」

 東京某所。とある一軒家の中で、冷蔵庫を開けた1人の男がこの世の終わりを見たかのような表情をしていた。


「お、おい、相棒。俺のアイス食ったか?」


 冷蔵庫を開けた細身で高身の彼、高見澤 仰木はソファーに横たわるもう1人の人物に質問をした。


「私の家にあるものなんだし、食べていいとおもうんだけど?」


 悪びれないその少女、時岡 葉加瀬は軽く手を振りながら質問に答える。


「俺の家でもあるんだけどなぁ?」


「ま、そんな事はどうだっていいでしょ?」


 ソファーに横たわっていた葉加瀬は姿勢を治し、そばにある机の上に置いてあったノートパソコンを開く。


「そんな事ってなんだよ! 俺の大事なアイスだぞ」


「全く、今度別の買ってあげるから落ち着いてよね」


 葉加瀬は肩をすくめる仕草をして、起動したノートパソコンに目を通していく。


「仕方ねぇな」


 仰木はまぁ妥協でいいか、という思考をしたのちに、葉加瀬の隣に腰を下ろす。


「ほらよ、お茶」


「ありがと」


 冷蔵庫からとってきたお茶を葉加瀬に渡した仰木は葉加瀬が操作するそのノートパソコンを覗きこむ。


「ワシントンの事件か」


「そう。私たちが原因を究明しないといけないからね」


「報酬は?」


「あるよ。それも政府からたんまり、ね」


「おし、そしたら俺ら異能探偵の出番だな」


 仰木と葉加瀬は探偵であった。それも、異能を使った犯罪専門の。異能犯罪を暴いてきた数は日本で最も多い。普通の探偵では全く歯が立たない能力を使った犯罪を暴くことができる秘密は彼らの能力にある。


「と、言うわけで来週からアメリカに向かいます」


「マジか、アメリカったらハワイとかだろ?」


「まぁ向かうのはワシントンなんだけどね? あの事件の解明が早くに終わったんならハワイにも行こうかなって考えてるけど」


「旅行みたいだな。悪くない。速攻で仕事、終わらせようぜ」


「がんばろう!」


◆◆◆


 そうして数日準備したのちに、二人はワシントンへと来ていた。英語圏であるなか、全く英語を扱えない仰木は英語がペラペラな葉加瀬に常に引っ付いて行動していた。


「言語が分からないって案外怖いな」


「だから勉強しなっていつも言ってるのに」


 普段から葉加瀬は口を酸っぱくして世界でよく使われる英語くらいは覚えて置いたらと言っていた。


「それとこれとは話が別だろうよ」


 うざったそうにしながら仰木はそう返しながら歩く。そして、ついに昨年、大破壊の事件が起こり、世界一位と三位が共同で解決した事件の場にたどりついた。


 あの事件の後、一位と三位は詳細を公表したが、どうやらそれは世間を安心させるための嘘の発表であったらしく、本当の情報はアメリカ政府が秘匿しているそうだ。


 今年、日本も大破壊の被害にあい、真実を公表していないアメリカが何か重大な事実を隠している可能性に思い至ったために今回この探偵に依頼するに踏み込んだようだ。


「私から離れないでよ?」


「まぁ迷子になるからな、間違いなく」


 二人はそのまま復興している事件が起きた場所の中央へ進んでいく。事件があったとは思えないほど先進的な街並みの中、二人は能力発動の用意をする。


「しっかり守ってね?」


「何もないとは思うけどな?」


 鍵となるのは、葉加瀬の能力。葉加瀬のスキルは発動中、無防備状態になる。そこを攻撃でもされようものなら一撃で瀕死になってしまう。それを防ぐために、戦闘技術を持った仰木が能力の使用中は護衛をしなければならないのだ。


「じゃあ始めるよ。『過去の(パスト・オブ・)魔導書(グリモワール)』」


 葉加瀬の視界は一瞬にして広大な図書館へと切り替わった。ここには、この場所で起こった全ての出来事が書物として記録されている。そのたくさんの書物の中から事件があった日の出来事が記録されている本を取り出す。それが今、葉加瀬がやることだ。


「DAY6.21。2033年。うん、これで間違いない」


 一時間と少しが経過したのち、葉加瀬がそう口にした。


「見つかったか?」


「うん、見つかった、んだけど……」


「どうした?」


「関連情報書物が多すぎる。具現化させるのに結構時間かかるかも」


 葉加瀬は、この記録の書を現世に持ち出すことができるが、一冊現世に具現化するのに一時間はかかってしまう。


「ざっと20冊はある。5日はここに通わないとだめかも」


「それは面倒だな」


 眠ったように目を閉じる葉加瀬の体を支えながらベンチに腰を掛ける仰木は心底面戸くさそうに溜息をついた。


「少し内容みてみたけど、結構とんでもないことが書かれてる。帰ったら一緒に確認しよう」


「おうよ。じゃあさっさととりかかろうぜ」


「わかった」

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