初の現代食
最近忙しかったので少し短め。今日から通常通りの投稿に戻るはずです。
「う、美味い! 美味いぞ!?」
オムライスを口にした鎌久さんが大きな声でそんな事を言う。それはよかったが、少し目立ってしまうな。
「それはいいのじゃが、周りに迷惑じゃから、もう少し静かにするのじゃ」
「し、失礼。しかし、こんなに美味いものは初めて口にした。そして、米が赤いぞ? 茶色くない米など初めてだ。素材から美味いな」
……茶色い米? 玄米か? この現代に玄米?
「米は白いのが基本だと思うのじゃが?」
「む? そうなのか? 白い米か、少し気になるな。きっと美味いのだろう」
白米すらも知らなさそうな反応。一体どこから来たんだ?
「白米もしらないとは珍しいのう。どこの出身じゃ?」
「拙者は陸奥の国出身だぞ」
陸奥の国……? 奥州ってやつか? 昔の呼び名じゃないか?
「その呼び方は相当昔の呼び方だと思うのじゃが、お主、何歳じゃ?」
「一応18歳で成長が止まっているから18歳だな。生まれたのは1143年だがな」
1143年? それは平安時代じゃないか? そんな生まれの人がどうして?
「平安時代じゃのう。そんな昔の人がどうして今を生きているのじゃ?」
「最近まで悪魔の力で封印されていたんだ。さっき言っていた話したい事っていうのはそれに関する内容になる」
悪魔の力?
「悪魔の力とはなんじゃ?」
「うん? クラリカも持っているだろ? 『運命』の悪魔の力を」
『運命』の力が悪魔の力?
……なるほど、つまり、『未来』の力は、悪魔の力によるもので、話の筋を取るならその悪魔に封印されていたのだろう。それで時代を超えて、問題視する事象が起きる時代に来たというわけか。
「なるほど、理解したのじゃ。ということはつまり……」
「この時代に来たばかりで何もしらないし、住む場所もない。ある程度、文化と言語は『未来』に教えてもらっているが」
俺は頭を抱えた。住む場所がない、かぁ。それはある意味今後起きる事象よりも大変だぞ。
鎌久さんはかなりの美人だ。多分、夜外に居るのは危険なんじゃないだろうか。たとえ強かったとしても寝込みを襲われれば大変だしな。うーむ。仕方ないか。
「しばらく妾の家に来ないかのう? 大変じゃろう? ご飯もなんとかなると思うからのう」
俺がこの人に手を出そうものなら特定の人に殺されるし、安全だろうとは思う。
「本当か? それは助かる! そろそろ寝たいと思っていたんだ」
三日間寝てないんだろな。俺を見つける前までふらふらだったからな。
「食べ終わったら家に向かうのじゃ。まだたくさん残っておるからな!」
「そうだったな!」
俺がそういうと、勢いよくオムライスを食べ始める。
そういえば、平安時代の人間なのに、スプーンの使い方がうまいな。というか、スプーンを知ってるんだな。
多分、未来を見て覚えたか、悪魔に教えてもらったとか、そんな感じだろう。
「しかし、この料理は本当に美味いな。また食べたいものだ」
「現代には他にもおいしい料理がたくさんあるからのう。今度は他も食べに行くのじゃ」
「楽しみだ!」
少し自慢げに俺が言うが、そんな事は一切気にせずに満開の笑顔で鎌久さんは言う。
これからも美味いものをたくさん食べていただきたい。
せっかく現代に来たのだから。




