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第30話 吹き出し案件

 バズった影響……と言うよりは、俺の土下座を映したせいで、少々面倒な問題が発生した。

 

「なぁなぁ、佐々木って愛羅ちゃんの従兄弟なのか?」

「あれってどう考えても佐々木だよな?」

「え、いや……そんなことないけど……?」

「嘘だー! だって配信の時と声が似てんだもん。後土下座した時の姿が佐々木そっくり」

「…………」


 おい、土下座がよく似合うだと?

 その言葉取り消せよ。

 さもなくば末代まで呪ってやんぞ。

 俺の様に友達が出来なくなる呪いをな。


 何ていう茶番はさておき———学校内だけだが、俺が柚木愛羅の従兄弟だと特定されてしまった。

 どいつも配信を見ている奴らで、他では言いふらすつもりはない様だが、学校内では相当な噂となっている。


「おかしいな……どうして俺ってばれたんだ……?」


 確かに学年で有名な陽キャ共ならバレるのも分かるが、もう碌に友達すらいない俺の土下座姿と声だけでバレるとは、少し……いや完全に予想外である。

 ただ、柚が『従兄弟の詮索はやめてねー』と抑揚のない暗い笑みを浮かべて言ってくれたお陰で、インターネットには情報が上がってはいない模様。


「くそッ……そう言えば俺って注目されてるもんな……」

「ん、えーた有名人」

「私はYo◯Tubeを殆ど見たことがないので知らないのですが……随分と有名な方とお知り合いなんですね……」


 そう———主に目の前の2人のお陰(せい)で。


 しかも、この事態に発展したのは完全に柚のせいである。

 あれだけ出ないと言ったのに出させたんだからな。


 俺の気も知らず、呑気に弁当を口にする柚にジト目を向ける。

 

「恨むぞ……柚……」

「ふっ、約束は約束。ちゃんと詳細を聞かないえーたが悪い」

「ぐ……ど正論で何も言えねぇ……! 柚にど正論パンチを食らわせられるとは……」

「ん、えーたの中で、私がどうなっているのか知りたい」

「頭はいいけど、生活面での頭は悪い」

「ん、表出ろ。決闘してやる。ボッコボコ」

「お、やんのかこの———ごめんなさい。此処でやったら俺の悪い噂が増えるんでやめてください」


 俺は柚に深呼吸をされて大声を出されそうになったので、急いで謝罪に入る。

 これ以上コイツが何か言えば、余計面倒なことになること間違いなし。


「あの……イマイチ話が掴めないのですが……」

「ん、私が柚木愛羅で、えーたが私と一緒に配信したから噂になってる」

「なるほど……柚ちゃんはやっぱり凄い人なんですね———ってお2人って従兄妹だったのですか!?」

「いや違うから! コイツが炎上しないためについた嘘だから!」

「ん、私達従兄妹。ただし、私が姉」

「いや冷静に考えて俺が兄じゃね? 柚って生活面だと完全に妹だろ」

「ん、舐めてもらっては困る」

「いや、お前の家って全部お手伝いさんがやってくれてたやん」

「え、えっと……結局お2人は従兄妹なのですか……?」


 俺達が変なことを言うせいで、目をぐるぐる回して混乱している姫野さん。

 

「ん、違う。嘘」

「ああ。コイツが咄嗟に考えたんだよ」

「そうなのですね……びっくりしました」


 安堵のため息を吐いて胸を撫で下ろす姫野さんの姿は、何処かファンタジー世界の箱入り貴族令嬢みたい。


 正直めっちゃ可愛いが……付き合ってもいない相手には言えないな。

 2人がメイド服を着た時は分からないが。


「あ、そう言えば、2人のメイド服はどうするんだ? やっぱり借りるのか?」

「あっ……それがですね……本来はそうするつもりだったのですが……」


 姫野さんが申し訳なさそうに、それでいて何処か恥ずかしそうに頬を染めて言った。



「———わ、私の胸のサイズに合わなかったんですっ……」

「ブフォ———ッ!?」


 

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