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97.自業自得だった

「よし、買い出し終わり。九陰先輩はどうすんだ?」


「風紀委員」


「そっか。じゃあ俺は帰るから頑張れよ」


「んっ」


 これがアパートを出るとき犬耳と首輪を付けてた少女なのかと思うと怪しいが、あれから変な事が起こらず本当に良かった。せいぜい強盗犯を取り押さえたぐらいだ。

 俺はそのまま追加の材料を買い終わり、九陰先輩と別れた。

 その後は特に何も無くサンドイッチを作り終えたので省略。


「ふぅ、こんなもんか。……そういや晶と焔はどうしたんだ?」


 更に言うなら木崎双子と雪音。

 残ってたサンドイッチが消えてたから残ってた奴が食ったということになるが……。舞さんと刀夜は部屋か?

 自分の部屋に戻り確認しに行く。


「おーい、いるか二人とも」


 まあ予想通りというか、二人はいなかった。

 変わりに置き手紙があった。


「えーと、『みんなで遊びに行ってきます。紅はいなかったので置いて行きます』……いやいや、行き場所とか書こうぜ。なに、仲間外れ?」


 嫌がらせの一つでもいれるべく、晶に電話を仕掛ける。


『もしもし。紅どうしたの?』


「失せろ輝雪」


 心臓に悪い。


『……どうしてわかったの?』


「長年の勘」


 何と無く晶じゃ無いと思ったんだよな。うん。


『いやはや、私の演技を見破れるのはそういないよ?』


「輝雪、俺を舐めない方がいい。俺は晶、焔、家族と陽桜家以外は全てを拒絶する勢いだぜ」


『私も!?』


「おうともよ!」


『あらやだいい返事……違うよ! 受け入れてよ! もう少しオープンにしようよ!』


「というかそろそろ晶に変わっていただけませんか木崎さん?」


『呼び方が苗字に!?』


 強制的に晶に変えることに成功した俺はとてもいい笑顔をしていただろう。

 ……まあ、向こうから最後鳴き声が聞こえたのは悪いと思わなくもない。


『……もしもし、紅。変わったよ』


「お、本物か」


『流石に酷いと思うよ?』


「……悪かったな」


『そう思うならもう少し輝雪を労わるべきだと思うよ』


「失せろ輝雪」


 急に変わるなうっとおしい。

 ……向こうから『紅くんのバカー!!』と聞こえたのに罪悪感を感じないでもない。


『……あーあ』


「で、何処にいんの?」


『何事も無かったかのように!?』


「いやいや、凄え反省してるって。うん、ほんと。俺、今までに無いくらい反省してるぜ? で、何処にいんの?」


『うん反省してないね』


 失礼な。俺の心はこんなにも沈んでいるというのに。


『はあ、これじゃ輝雪が報われないね』


「後でフォローするよ。気分が乗ったらな」


『それはする気が無い人が言うセリフだね』


「……何処にいんの」


『ついに無視を……あ、ちょっと焔!』


 な、なんだ? 焔が暴れんのか?


『紅のバカ! アホ! トンチンカン!』


 この声は焔か。

 子どもかと思うような罵倒ではあったが、大切に思っている人に言われるのはかなり辛かった。

 そのままブツッ、と切られてしまった。


「………………何で、こんなことに」


 俺の表情はきっと地獄の淵を覗いたような顔を、恐怖と絶望に覆われた表情をしているだろう。

 焔に嫌われる。そう思うだけで俺の心臓は鷲掴みされたかのように悲鳴を上げる。足元もおぼつかず、座り込んでしまう。


「……どこで、どこで間違ったんだ。……ちくしょう」


 勘違いしてはいけないのはこれが全て自業自得である事である。

 後になって思い返すと、純度100パーセント俺が悪いことに気付いたのだった。


 ・・・

 ・・

 ・


「……運動会、行かないと」


 約束を破るわけにもいかず、ダメージは抜けきれていなかったが、どうにかして行くしかない。

 俺がサンドイッチを届けなければ、紫は午後、腹ペコで激しい運動を行わなければならないのだ。それだけは、ダメだ。俺が約束したのだから。


「……そういや、学校知らねえな」


 やばい……焔に嫌われ約束破って文句を言われようものなら俺は確実に信頼とかいろいろ失う。そうなったら立ち直れる気がしない。


「……そうだ! 刀夜だ!」


 急ぎ刀夜の部屋に行き、ノック。反応を待つ。

 そうすると、ガチャっとドアが開く。


「……なんだ」


「おう、良かったら紫の運動会におい待て閉めるなこら!」


「……行かん! ……絶対に行かん!!」


「何でそんな嫌がるんだよ!」


「……絶対周りに嘘を付く。……妻とか何とか言って信じ込ませる。……外堀を埋められたら終わりだ」


 たしかに貞操の危機に日々あっている奴のセリフは重いが、


「学校の場所わからねえんだよ!!」


「……地図で調べろ。……携帯でも使え。……こういう時のマップ機能だろうが」


「正論この上ないが、そこまで抵抗されると逆に連れて行きたくなった。……さあ、学校がお前のゴールだあああああ!」


「……っ!」


 恐怖で混乱してる刀夜など恐るに足らず!

 俺は半ば強引に刀夜を連れて行くことに成功した。


「……話せ!」


 普段は間違っても俺が倒せない刀夜が俺に負けていることに多少の優越感を覚えながら、俺は無理矢理外へ引きずり出し案内させる事に成功した。

 その代わり、刀夜からの信頼度が下がり、警戒度がMAXになった。

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