82.何もない日々
「もう、やめろよ」
「いいじゃん。ほら、あ〜ん」
うっぜええええええええええええええええ!!! 葵、赤井の二人うっぜええええええええええええええええ!!!
何だ! 当て付けか!? 教室内でイチャイチャしやがって!! 何でこの教室……というかあの三人はあんな主人公なんだ!! あっち題材の作品書けよ!!
「いや、まあ……「ギャルゲーかよ!!」って言いたくなるような事がこの高校入ってから立て続けに起こったからな。ははは、最近よく見る死んだらギャルゲーの世界に転成したって感じでこの世界もギャルゲーだったりしてな」
「そういうお前も大概だと思うがな、葉乃矢。……そのうち前世持ちでも現れんじゃねえのか?」
「いやいや。流石に夢見過ぎだろ」
あの烈と殺り合ってから二週間ほど。特に何も起こらずに時間は経った……わけでなく。
「結局何も起こんねえし、九陰先輩は危なっかしいし、木崎双子は何してっかわかんねえし、アパートの皆も慌ただしいし、晶と焔は男子から告白されてるし……」
「ちょっと一つおかしいところがある気がするんだが!?」
詳しく言うと、会えるどうの言ってた謎の女は結局まだ来ず、九陰先輩もあの日以来心ここに在らずという状況が続き、報告を受けた木崎双子は休み時間でも暇さえあれば姿を消し、連動するようにアパートの魔狩り関係者も慌ただしく、晶と焔は時期もそこそこ経って人気も上がり告白を受け始めてるってとこだ(流石に入学した瞬間から一目惚れで告白する豪の者はいなかったが)。
で、俺は遠距離恋愛の葉乃矢と二人寂しく昼飯を
「あ、蒼から電話だ。悪い」
「お前なんか携帯没収されちまえええええええ!!」
ちなみに、我が校では授業中使わなきゃ余程のことが無い限り携帯は自由だ。フィルタリングを徹底させられてはいるが。
「はぁ。結局一人か……」
「ニャー」
「あー、パズズもいたな」
風紀委員特権で許可された猫持ち込み。だが、人前で喋れんからいてもいなくてもこういう昼時はたいして変わらん。
だが、やはりこういう時はいてくれて嬉しいと思う。
「パズズちゃーん。缶詰めだよー」
「ニャニャ!」
「お前の忠誠心なんかそんなもんだったよ!」
ボリュームを抑えても湧き出る感情。
ついでにパズズは動物愛好家に大人気。
「結局リアル一人飯……」
高校だと弁当で席自由だから、こういう時どうしても寂しく思ってしまうのはしょうがない。
今思えば、俺が一人じゃないのって、晶と焔のおかげだよな……マジで。今度なんか奢ってやろうかな。
「……午後の授業、何だったかな。ああ、一葉学か。そろそろ体育祭も近いしそれ決めるのかね」
……独り言って、虚しい。
その時だ。
ピンポンパンポーン
『一年三組紅紅。一年三組紅紅。すぐに担任まで来るように』
全員の視線が俺に集中する。
……おい待てや。何でみんな「ついにやったか」みたいな顔で見る!! 俺は何にもやってねーよ!!
「……クソッ」
何故こうも晶と焔と差が出るのか。理由を聞きたい。……ああ不良顔でしたね。
・・・
・・
・
「は?空き教室から机を運べ?」
「ああ。そうだ」
「理由は?」
「明日になればわかる。いいから運んで来い」
「……何故俺なんですか」
「風紀委員で力もありそうだからだ」
「……わかりました。失礼しました」
頭を下げ、退室。
……おいこら聞こえてんぞ。「これだから不良は……」て丸聞こえだかんな。城之内先生いないからって調子乗ってんじゃねえぞハゲメガネ。
……やめよ。さっさと運んでそれで終わりだ。
「さてと……て、晶じゃねえか」
「あ、紅」
「随分長かったひぃっ!!」
「ああ、うん……」
怖い怖い! なんか気温下がってるよ! 凄く下がってるよ絶対! なんかオーラっぽいの出てるよ!
他の生徒も凄く避けて通っているにが凄くわかる。そして俺も逃げたい!!
「……と、僕のことはいいんだよ。いつも通りだからね」
晶のいつも通りは屍の山の事だろう。殺してなければいいが。
「紅は何で呼ばれてたの?」
「あ、ああ……。なんか空き教室から机を運べってよ」
「ふーん。転校生でも来るのかな?」
「まさか。この中途半端な時期に?」
「それもそうだね……て、だったらこんなとこで話してたら時間勿体無いね。行こう。僕も付き合うよ」
「お、サンキューな。でも運ぶのは一個だけだから」
「わかってるよ。教室に何個もいらないでしょう」
「そりゃそうだ」
うんうん。やっぱこういう時が一番落ち着くよな。俺のいつもの日常だ。
魔狩りもしばらく無い(かもしれない)らしいし、ここは本来の高校生活を楽しむぜ!!
……。
…………。
………………。
「凄くそわそわしてるね」
「気のせいだ!!」
凄く締まらない俺なのでした。
追記:机を持って教室に入った途端に「逃げて氷野さん!」と言われた。
前々からずっと一緒にいたろうが!!




