31.メインキャラじゃ無い
俺を襲った奴と助けた奴が来て証言してくれたおかげで俺は開放された。以上!
「紅よ」
「…………………………」
俺を捕まえた先生が生徒指導室を出る俺に声をかける。
「先生は、信じてたぞ?」
「…………………………」
俺はおもむろに携帯を取り出す。一葉高校では緊急時に備えて携帯の規制は薄い。せいぜいフィルタリングをかけるよう促すぐらいだ。授業中に使ったら没収され、数日間戻って来ないが。携帯を軽く操作し、再生ボタンを押す。
『くそ!俺が!俺がいったい何やったってんだ!』
『黙れ!いいからさっさと手を動かせ!』
『何もやってねーっつの!』
『やってる奴はみんなそう言うんだ!』
『だったらやってない奴はどう言うんだよ!』
『……さっさと手を動かせ!』
『おい!言えよ!』
『うるさい!』
『理不尽だああああああーーーーーーーーーーーーーー!!!』
ピッ、と停止ボタンを押す。
「…………………………」
凍りつく先生。
「じゃ、城之内先生に聞いてもらいますんで」
「お情けをおおおおおーーーーーーーーーーーー!!!」
もちろん、俺にそんな情けは無い。
城之内先生:熱血。生徒に親身になって接してくれる。更生された不良生徒は数多く、権力にだって立ち向かう。生徒からの信頼は厚い。
・・・
・・
・
「おっ」
生徒指導室を出ると、そこには俺が助けた葵 海と男子生徒2人がいた。
「よお。さっきはありがとな。えーと、葵?」
「ううん。元はと言えばこっちのせいだから。呼び方は何でもいいよ」
「悪いな。じゃあ、俺はこの録音を提出しに行くから」
「聞いてたけど、容赦無いね」
「俺は俺の日常を守る為なら何でもやる」
「日常?」
「まあ、俺の周りかな。親友とか、家とか、日々の暮らしとか。漫画の勇者みたいに『世界を守るために』みたいな覚悟は無えが、自分の周りは守りたいんだ」
「へえー。凄いんだね」
「凄くねえよ。他の奴らより動けるかどうかの違いだ。間違いだっておかす。今日はいい教訓なったよ」
男子生徒2人を睨む。
「あはは、ごめんね。私のために頑張った事だから許してくれないかな?」
「はいはい。もう行くわ」
「うん、ごめんね」
ふむ、葵の方はちゃんと話せる奴だったな。
俺はそのまま、男子生徒の横を通り過ぎ、職員室へと向かった。
後ろから「謝れや!」という女子の叫び声が聞こえたが、聞かなかった事にした。
と、いうような事があり、授業もやって、現在3時間目の授業が終わり休み時間。
「はあー、疲れた」
「大丈夫?」
「心配無えよ焔」
とりあえず、1日が濃い。というか、朝が濃い。俺に静かな日は無いのか。
あ、そういえば。
「輝雪ー」
「どうしたの紅くん」
「お前と和也って風紀委員入んの?」
「ええ、入るわよ」
ふーん。まあ、そうだよな。
こいつならいろいろ知ってそうだ。今のうちに聞くか。
「具体的にはどう入るんだ?来る者は拒まずか?テストかなんかあるのか?それとも推薦か?」
なんか教室のドア付近で「謝りに行きなさいよ」「タイミングはかってんだよ」「タイミングは大事」とか聞こえるが、無視でいいよな。
「そうね。とりあえず二つ、テストと先輩からの推薦よ」
「まあ、特権がある以上、来る者は拒まず何て言ってたら大変ですよね」
「だねー」
一応言うと、現在会話には俺、輝雪、晶、焔だ。
「テストは先生たちからの評価に、先生立会いの元に風紀委員長と一騎打ちで実力を認められたら、て事になってるわ」
「黒木先輩と一騎打ち…」
「紅が苦戦してたよね」
「いや、黒木先輩はコンディションが悪かったし、まだ手加減してたようにも見えたよ?」
コンディションと言うと、お腹が減っていた状態の事か。手加減に関しては、俺も感じていた。
「先輩からの推薦は誰でもってわけじゃないわ。風紀委員長と風紀副委員長がそれぞれ3名まで指定できる。つまり、黒木先輩が紅くん、私、お兄ちゃんの3名を推薦してくれるのは決まってるから、副委員長がどうか知らないけど私たちは風紀委員に入れるわ」
「ほー。まあ、一騎打ちとか怠いし、助かるには助かるが」
なんか、絶対あるよなー。
「紅」
「何だ焔」
「余計なこと考えてるでしょ」
「余計なこと?」
「『なんか絶対あるよなー』とか」
ぐっ、正解だ。
「紅はトラブルに巻き込まれやすいんだから、あまりそういうこと考えてフラグ作らない方がいいよ」
「フラグって。ここはゲームかよ」
「ゲームでも何でも」
焔が言いかけたところで、
「ずーいぶんと余裕だな紅 紅!推薦されて風紀委員になったぐらいで調子に乗るなよ!」
変な奴が現れた。
「…こういう事になるんだから」
…もう、やだ。




