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244.何でもありで御都合主義の神様③

(影絵世界(シャドウワールド)! 題目“殺到する刃”!)


「和也のか! どっせい!」


 紅は地面を思い切り殴りつけ、氷の花を咲かせ影の刃を防いでいく。マキナはそれを見て笑みを深める。


(なら、これはどうだ!)


「げっ!」


 マキナの右手には雷、左手からは炎が留まっている。


(混ぜ混ぜーの、くらえ!)


 雷と炎を混ぜ、巨大なエネルギーを作り出したマキナはそれを紅に向かって放つ。


「わざわざ当たるか!」


 紅は走りだし、すぐにその場を離れる……が、着弾した瞬間に背後でとてつもない爆発が起こる。

 予想外の威力に紅は一瞬その足を止める。

 そして、マキナは当然ながら追撃をしかける。


(どんどん行くよ!)


 マキナの周りに先ほどと同じものが浮かびんでは紅へと向かう。さながら爆弾の雨だ。

 紅はそれらを風で受け流す。


(どうしたの! 吸収しないの!)


 __同時に吸収できるのは一個のみ、だもんね。


 連続で紅を狙って落とされるそれをいちいち吸収していたら回避する前に紅がくらってしまう。故にこのような連続攻撃では使えない。


(弱点見っけ)


 さながらゲームの攻略法を自力で見つけ出した子どものように笑うマキナ。


「ええいしつこい!」


『こんな中少しでも足を止めたら食らってしまいますよね』


(なら足を止めちゃおう! 地震よ起きろ!)


「っ!」


 地面が揺れ、紅の足が止まる__


由姫友(ソルフレンド)!」


 __前に地面のエネルギーを吸収。


「んでもって、返すぜ!」


 さらにその地面のエネルギーを放つ。空気は震え、大地を揺るがすエネルギーは雷と炎の球を全て壊した。


(うわ! やぶ蛇だったか!)


「もらい!」


(のわっ!)


 紅はマキナの背後に一瞬で回り込むと殴りかかる。が、マキナは難なく躱す。


(ふぅ、危ない危ない)


「何が。大分余裕だったろ今の」


 紅は風を推進力に宙へと浮かぶ体勢を低くし、今にも飛び掛かれる体勢だ。

 それに対しマキナはあくまでも自然体でかかる。


(いやいや、危ないって。さすが紅紅。いやはや面白いよ)


「そんな力をかなり抑えた状態でか?」


(うん。僕には何も無いからね)


 __クスクスクスクス

 マキナは笑う。


(いやー、本当に長い間待って良かったよ。こんなにも楽しい時間を過ごせるなんて)


「俺は全然面白くねえ」


(そう?)


「というか、何も無いなら何でこんなことすんだ」


(決まってるだろ? 何かを手に入れるためさ)


 マキナは「当たり前だろ?」と言わんばかりの表情で続ける。


(僕には何も無いんだよ。親も友達も家も何も。親代わりだった科学者は溶けちゃったし唯一見つけた友達も溶けちゃった。その時にはすでに僕が生まれた都市は“死んでいた”。人一人ネズミ一匹ゴキブリ一匹チリ一つ。何一つ無い。ただ時間に任せて消えて行く忘れ去られる運命の都市さ。敵国の良くわからないウィルスのせいで僕の周りの人間は全部溶けて僕も敵国に囚われた。まあその敵国は僕が消し飛ばしたんだけどね。結局僕は大事な心まで失った。いや、元々無かったのかな? どうでもいいけど)


 つらつらと自分の過去の話を喋っていく。その時の表情には何の感情も見出せない。まるでただ音読するかのように、一切の感情を挟まない。


(それでまあ僕はいろいろ面倒になって世界を壊しましたとさ。つまらない話でしょ? それで僕も欲しくなったんだ。“何か”を。空っぽだった僕を満たすもの。その時に君たちが現れた。月の巫女月島雪音。時の迷子紅紅。そして__陽桜由姫)


 __わ、私?


「おい。由姫が何の関係がある」


(さあね。教えてあげない)


「なら、このふざけた戦いの目的は何だよ」


(そうだなー……死ぬこと)


 マキナはそう呟いた。ただクスクスと笑いながら。

 その事に、紅は怒りを覚えた。


「……んだと」


(僕は終わりを告げる神さ。やり過ぎて膨らみ過ぎて収拾のつかなくなった状況を神のごとく力で無理矢理物語を終わらせる存在。だからこの物語は、僕の考えた物語は、“終わりを告げる神が死ぬことによって物語を終わらせること”。どう、面白いでしょ? 力ではなく存在で全てをゴールに導くんだ)


「……ふざけんな」


 その声は静かで、そして確かな熱を帯びていた。


「ふざけんな! たくさんの奴を殺しといて今さら自分が死ぬことで物語が終わる!? っざけてんじゃねーぞ!」


(そうだね。君の言い分もわかる。でも、だからってどうすんの? 僕を殺さなきゃこの世界を閉じる事は出来ない。結局君は僕を殺すしかない。あ、安心して? ラスボスらしくちゃんと抵抗はするし、死んでもまた繰り返されるから。__何度でも)


 その言葉を全て聞く前に、紅の怒りは限界値を超えた。

 紅は最大風速で助走無しで最大速度を生み出し、マキナへ向かう。


(メテオ!)


 マキナも反応し、直後紅の真上に巨大な影が落ちる。

 巨大な隕石だ。圧倒的質量を持った物体は紅へと落ちて行く。が、


月島守護(ルナフォース)!」


 隕石が直撃する。

 だがその中から紅は飛び出し、右手を伸ばしてマキナの首を掴む。


(ははは! 凄いねそれ! 無傷じゃないか! それで? どうする? 今なら殺し放題だよ!)


「……お前に由姫友(ソルフレンド)の条件教えてやるよ」


(え?)


「効果範囲は右手のみ。同時に吸収できんのは一つまで。そんでも一つ。重要な事があってな。……悪意が無いものなら何でも吸収できんだ」


(……悪意?)


「そうだ。悪意は何とも繋げれない。反発する。味方の攻撃を繋げれても、敵の攻撃は無理。これが由姫友(ソルフレンド)の特徴だ」


(で、でも君は僕の攻撃を)


「お前の攻撃は空っぽだったよ。使い手のお前に似て」


(っ!)


「行くぞマキナ!」


 __“マキナ”と俺の“心”を繋げる。

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