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231.ヘルプ

 これは報告にあった白坂雪音? (ルナ)に確認を取りたいけど、あっちからのコンタクトが無い。捜す必要もあるかと思ったけど、こっちに先に出会った時点でその選択肢も消えた。

 __全力で相手をしないと殺られる。


「アハッ」


 目の前から白坂雪音は消え、地は砕け、視界が黒に染まる。

 早い!!


「っ!」


「はぁ! 避けた避けた!」


 これ、まともに食らったら死ぬ。


「君となら、もっともっと遊べるよ!」


「私はそんなのごめん」


「そう言わずにさ! 私ともっともっと遊ぼうよ!」


 これ、遊びとかそういうレベルじゃないのだけれど。


「私の力ももっともっと見せてあげるからさ!」


 まるで子どもが自分の宝物を他の人に自慢するかのような声音で白坂雪音は叫ぶ。

 そして、言い知れぬ悪寒が背筋に走る。


「くらえ!」


「っ!!」


 突き出されたのは“左手”。斬り捨てたはずの腕が生えていた。

 だが、私は寸前でバックステップで下がる。

 しかし、私は判断を間違えた。突き出された時点で、横に避けるべきだった。

 白坂雪音の左手から青白い電撃が走ったのはその瞬間だった。


「なっ!」


 空中にいるため回避は不可能。電撃を流すことも出来ない。

 なら、こっちも攻撃を返す!

 左手を思い切り引き、短刀を全力で投擲をする。


「ぐっ」


「きゃっ!」


 電撃が私のお腹を焼き、短刀は白坂雪音の右肩を貫く。


「っ〜〜、まさかあそこから返されるなんて。強いね!」


「……どーも」


 白坂雪音はおもむろに左手で短刀を握ると、勢いよく引き抜いた。

 何の躊躇もない動きに多少の動揺を覚えるが、注目するのはそこではなかった。

 闇に紛れてたために一瞬しか見えなかったが、傷が急速に治るのが見えた。

 治る傷に生えた左手。あれは……


「……自己修復」


「ああ、これ? うん、凄いでしょ! これのおかげでどんなに暴れても平気なんだ!」


 こっちとしては厄介な事この上ない。

 もうあれは人ではない。化け物だ。どんなに傷を与えてもその度に治って行く。しかも本人は傷つくことすら喜んでいる節がある。

 だけど、ここで引くわけにはいかない。

 私が私であるために。

 今度はこちらから踏み出す。


「斬れちゃえ!」


 右手に握られた剣を私は確認する。

 高速で振り上げられ、神速で振り下ろされる。肩から剣先まで一つのムチを彷彿させるようなしなりで空気を斬り裂きながら繰り出される斬撃は恐るべき威力を秘めているのがわかる。


限界突破(リミットアウト)(ヘキ)!」


 だけどこちらから引く気は無い。斬撃に対し添えるように硬質化させた手を触れさせる。

 キィィィイイン、と甲高い金属音が耳元で鳴り響く。

 剣に触れている手が内側からみしみしと悲鳴を上げる。威力に負けて弾かれそうになる手を必死に押さえつける

 私が私でいるために……

 恐れるな。踏み込め!


「ぁぁぁぁああああああ!」


 皮膚が削れて行く。血が吹き出る。

 だが、私は半ば強引に足を踏み出し、全力のパンチ。


「ぐふっ」


 私の拳は白坂雪音のお腹を貫通し、そのまま勢いよく吹っ飛んで行った。

 素早く私は自然治癒特化(ヒーリングフォース)をガードに使った腕にかける。


「これで終わる……わけもないよね」


 若干の疲労感とともに、すぐに気合を入れ直す。


「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」


 狂気に満ちた笑いとともに、闇が天を貫く勢いで上がった。


「凄い! 凄いよ! 僕の斬撃を受けた! 私、結構自信あったんだけどなー今の一撃! よーし、今度は拙者からいくよー!」


 もう一人称もめちゃくちゃだった。

 長引かせると危ない。一撃で体の細胞一つ残らず消し去る必要がある。だけど、私にはそんな一撃必殺の技は持ち合わせていない。

 ……早く誰か来て。

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