209.上空からの人影
「……ちっ」
「数が多い」
……間獣とマキナ・チャーチが止めどなく溢れ出てくる。……底は未だに見えない。
……もう先ほどから休まずに引き金を引き続けている。……冷華も体力的にキツイか? ……そもそも冷華は狙撃手。……こんな最前線にいることがおかしい。
「あはは。がーんばれ」
「ははは。がんばれー」
「……癪に障るガキだ」
「子ども産んだら、ちゃんと躾ける」
……何の話だ。
……双子のマキナ・チャーチか。……紅が致命傷を負わせたというのに、ピンピンしてるのは何故だ。
「ねえねえ。どっちが勝つかな」
「うーん。あっちかな」
「違うよー。僕たち二人が勝つの」
「そっか。エレキ頭いいー」
………………。
「……殺すか」
「ダメ刀夜」
「……戦場ではガキと言えど容赦無くせん」
「死にかけたくせに余裕ありすぎ。何かある可能性がある」
「……わかった」
……頭に昇った血を深呼吸でクールダウンさせながら冷戦になる。……今俺たちがやることは戦線の維持。……なら、無理に押し返さなくてもいいはずだ。……ここはちまちま削りながら敵を後ろにやらない事が先決。
……そうと決まれば。
「……散弾銃」
……普段使っているライフル型よりも少しゴツイ銃を呼び出し、構える。
……引き金を弾くと網状に雷が広がる。……雷は触れた笛を次から次へと黒コゲにしていく。
「氷雨」
……冷華も動く。
……上空から大量の雹が降り注ぎ、敵の体を粉砕していく。
「どーしよゲイル。部下がいなくなっちゃった」
「どーしよっかエレキ。部下がいなくなっちゃった」
「……今すぐ降参するなら一瞬で殺してやる」
「あはは! 殺してやるだってゲイル!」
「本当だねエレキ!」
……俺は躊躇なく引き金を弾く。
「おっと」
「さすがエレキ。雷はお手の物」
「……ちっ」
……まあ、想定通り。
……あとは膠着状態を作って適当に待っとけばいい。
……だが、そんな俺の考えはいとも容易く破られた。
「あ、来た来た」
「おーい。こっちこっち」
「……何を呼んで!?」
「嘘……」
……これは、やばい。
……奴ら、頭まで従えているのか!
「……冷華。……頭はやばい」
「わかった。潰す」
「おおっと」
「そうはさせないよ」
……俺たちの銃の射線上に身を乗り出す双子。……撃ち抜けるならそれでもいいが、防がれるだろう。
……どうする?
「……ちっ」
……対したピンチではない。……だが、頭の存在は早めに消しておきたい。
「あはは。それじゃ僕たちと遊ぼうよ」
「お兄さん。お姉さん」
「……遊んでる暇はない!」
「どきなさい」
……邪魔なガキどもだ。
……くそ、考える時間も惜しい。
「それじゃあ」
「イッツショータイ」
「公演は中止だぜ!」
『っ!!?』
……その時、上空から人影が高速で落ちてきた。……人影は“風”を巻き起こしながらエレキたちへと突っ込む。
「ぬわ!?」
「おわあ!?」
……エレキたちが一瞬早く飛び退き、先ほどまで双子がいた場所は人影の接触と共に破壊され、土煙が巻き上がる。
……あいつか。
「ん、ん〜〜、ふぅ。いやー、やっとか戦場に来れた」
『文句言ってないで始めますよ。敵は目の前です』
「へーへー。ま、とりあえず」
……土煙が晴れ、中の人影が姿を現す。
……やはりお前か。
「うっす。幾らかぶりだな。刀夜、冷華さん」
……紅 紅。




