195.隣の奴ら
「……はぁ」
「どうした奈孤」
「弾さん。撃っていいですか?」
「俺のことが嫌いなのか!?」
「人類等しく嫌いなので問題ありません」
「逆に問題しかないな。もう一度解き直せ」
領土戦。
なんとも不完全燃焼な試合だった。
輝雪にはイライラさせられてばっかだし、スプラッタは無いし。
「はぁ」
私はため息を付きながら鞭を振るう。
体に染み込んだその動きは、例え適当に振るったとしても自動で補正がかかり、空気を切り裂くような音と共に叩きつけられる。
__猫に。
「あふんっ!」
「おい。自分の猫だろ。少しぐらい大事に」
「もっと、もっと強いのを〜。はぁ、はぁ、じゅるっ」
「大事に、何だって?」
「……何でもありません」
何を間違えたか、私の猫はドMだ。
まあ、私は暇潰しでくるしいいんだけど。
「うひゃっ! ひゃうんっ! ん、はぁ〜ん」
「声声」
「無駄よ。治りゃしないもの」
「……もういい。それで」
「それで。何か用事せですかー?」
「用事、と言うか確認だよ。案の定、だったがな」
「はぁ……?」
最近、何かあったかな? 全く思い付かない
「隣の奴らがおっ始めるらしいぜ」
「何を?」
「戦争」
「合戦の準備じゃ!」
「落ち着かんかい」
「あうっ」
私は手を後ろに引かれ、用意されていた椅子に座らされる。その時につい足が滑って、弾のあしを「ぐりっ」と相棒がいそうな音を立てながら踏み抜いた。
「いってええええええええええええええ!!」
「あ、ごめん」
「ここまで『あ、やべ。とりあえず謝っとこう』っていうごめんも珍珍しいな……」
「ふーん。あ、そういえばどこと戦争すんの?」
そういえばそこを聞いていなかった。
かなり重要だ。殺しのヴィジョンを見るためには、ターゲットはなるべくはっきりしてたほうがいい。
「マキナ・チャーチだ」
「OK」
「……一応聞くが、お前は今回の戦闘に参加するのか?」
「どういう意味よ」
「今回の戦闘に勝てば、どうやらエルボスが消滅するっぽいからな。俺みたいに、魔狩りのカネは生活の一部になってるような奴には、はいそうですか、で受けるには少々きび」
「受けるわよ」
「しいんだ……って、え?」
「受けるわよ」
「話を聞いてたのかい?」
「もちろん」
隣の奴らが戦争。相手はマキナ・チャーチ。勝てばエルボス消滅。
うん。ちゃんと聞いてる。
「その上で参加するわ」
「り、理由は?」
「理由?」
こいつは何を言っているのだろう。
そんなこと言ってるからグダグダ言い続ける羽目になるのだ。
「あのねぇ……今に全力を注がないで、明日なんかくるわけないでしょ?」
「………………」
「戦争ふっかけるってなら、その時点で魔狩りのシステムは崩壊。敵とか味方に組織は分断されるでしょうね。だったら、もう戦争に参加不参加の次元じゃない。なら、もうやりたいようにやりゃいいのよ。私は戦争に参加してマキナ・チャーチどもを痛め付けて遊んでるわ」
「……そう、か。そうだな。じゃあ、俺もいっちょ頑張るか。後輩にばっかカッコつけさせちゃいられないしな」
「あっそ」
にしても、戦争か。
いつかしらね。
でも、
「血が見れる」
凄く、楽しみだ。
「戦争があると聞いたぞ!!」
『面倒なのが来た……』




