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とりあえず平和な日常をくれ!  作者: ネームレス
領土戦での日常
148/248

147.第二試合:始まり

『それでは第二試合を始めます。木崎 輝雪さん、千真 奈孤さん。中央へ』


「……なあ。誰か俺の中にあるこの遣る瀬無い気持ちについて、誰か説明してくれないか」


 第一試合は和也の勝利だった。

 試合の展開はビーフさんの作り出す鉄の凶器を、和也は【斬撃】を付加させた鎖で次から次へと切り刻んで行くという、圧巻、と表すべき展開だった。

 和也の鎖と気配察知の二つが合わさると、結界とも言うべき場が出来てしまう。

 気配察知により、全方位の違和感を瞬時に察知し、鎖で叩く、もしくは斬る。

 舞さんの言うとおり、相性は最高で、相手からしたら最悪だ。

 もしこれで、もっと頑丈な鉄を生み出せたなら、試合展開ももっと違ったものになっていただろう。

 ……本当に、舞さんの言う“超強い”とは何だったのだろう。


「まあ、当然の結界ですよね〜」


「楽勝」


「まあ、お兄ちゃんなら当然よね。あ、私行ってくるね」


「頑張ってね輝雪ちゃ〜ん」


「頑張って」


「全力でな」


「うん! とにかくあの手この手で相手の嫌がる事を全力でしてくるよ!」


「大事な試合を嫌がらせだけに全力投球すんな!」


 そんな俺の叫びを無視して、輝雪は中央へと向かった。

 行く途中、帰ってくる和也とハイタッチをする。

 息が合ってるなー、と思うのは俺だけだろうか。それともあれぐらい普通なのだろうか。


「和也くん、お疲れ様です〜」


「グッジョブ」


「圧倒的だったな」


 俺が苦笑気味に答えると、それだけで和也は何か察したのだろう。同じく苦笑で返された。


「あの人はちゃんと俺よりも魔獣討伐数が多いんだ。もちろん総合ではなくその年の合計、でな。実践はちゃんとある人なんだ」


「戦闘が魔獣戦に特化し過ぎて対人戦だとただの“雑魚”になってしまうんですよね〜」


 酷い言いようだ。

 しかし、あの勝負を見たあとだと俺は納得せざる終えない。

 戦った事もなければ、あの人の情報も全て舞さんや和也からの情報で、実際に自分で確かめたわけでもないからだ。


「ま! 俺と和也にかかれば楽勝だな!」


「コク。静かにしてろ」


「へーい」


 まあいい。意識を切り替えていこう。

 次は輝雪だ。


「で、和也。輝雪は勝てそうか?」


「……負けるだろうな」


「そうか。……は?」


「いや。隣だからな。今までも何度か、あの二人は衝突してな。だが、試合に勝つのはいつも千真のほうだった」


「じゃ、じゃあ輝雪は」


「いや。ある意味負け、とは言い難いかもな」


「は? いやだって、お前が自分で」


「勝負を見てればわかる」


「ですね〜。あれはもう一つの名物ですよね〜」


「惨い」


「え? え?」


 全く意味がわからない。

 負けるのに勝つって……。


「勝負に買って試合に負けた。物理的には負けるが精神的には勝った。なかなかに複雑な勝負内容なんだ。ほら、始まるぞ」


『それでは、第二試合を始めます』


 瞬間、剣と銃弾が交差し、甲高い音が鳴り響いた。

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