147.第二試合:始まり
『それでは第二試合を始めます。木崎 輝雪さん、千真 奈孤さん。中央へ』
「……なあ。誰か俺の中にあるこの遣る瀬無い気持ちについて、誰か説明してくれないか」
第一試合は和也の勝利だった。
試合の展開はビーフさんの作り出す鉄の凶器を、和也は【斬撃】を付加させた鎖で次から次へと切り刻んで行くという、圧巻、と表すべき展開だった。
和也の鎖と気配察知の二つが合わさると、結界とも言うべき場が出来てしまう。
気配察知により、全方位の違和感を瞬時に察知し、鎖で叩く、もしくは斬る。
舞さんの言うとおり、相性は最高で、相手からしたら最悪だ。
もしこれで、もっと頑丈な鉄を生み出せたなら、試合展開ももっと違ったものになっていただろう。
……本当に、舞さんの言う“超強い”とは何だったのだろう。
「まあ、当然の結界ですよね〜」
「楽勝」
「まあ、お兄ちゃんなら当然よね。あ、私行ってくるね」
「頑張ってね輝雪ちゃ〜ん」
「頑張って」
「全力でな」
「うん! とにかくあの手この手で相手の嫌がる事を全力でしてくるよ!」
「大事な試合を嫌がらせだけに全力投球すんな!」
そんな俺の叫びを無視して、輝雪は中央へと向かった。
行く途中、帰ってくる和也とハイタッチをする。
息が合ってるなー、と思うのは俺だけだろうか。それともあれぐらい普通なのだろうか。
「和也くん、お疲れ様です〜」
「グッジョブ」
「圧倒的だったな」
俺が苦笑気味に答えると、それだけで和也は何か察したのだろう。同じく苦笑で返された。
「あの人はちゃんと俺よりも魔獣討伐数が多いんだ。もちろん総合ではなくその年の合計、でな。実践はちゃんとある人なんだ」
「戦闘が魔獣戦に特化し過ぎて対人戦だとただの“雑魚”になってしまうんですよね〜」
酷い言いようだ。
しかし、あの勝負を見たあとだと俺は納得せざる終えない。
戦った事もなければ、あの人の情報も全て舞さんや和也からの情報で、実際に自分で確かめたわけでもないからだ。
「ま! 俺と和也にかかれば楽勝だな!」
「コク。静かにしてろ」
「へーい」
まあいい。意識を切り替えていこう。
次は輝雪だ。
「で、和也。輝雪は勝てそうか?」
「……負けるだろうな」
「そうか。……は?」
「いや。隣だからな。今までも何度か、あの二人は衝突してな。だが、試合に勝つのはいつも千真のほうだった」
「じゃ、じゃあ輝雪は」
「いや。ある意味負け、とは言い難いかもな」
「は? いやだって、お前が自分で」
「勝負を見てればわかる」
「ですね〜。あれはもう一つの名物ですよね〜」
「惨い」
「え? え?」
全く意味がわからない。
負けるのに勝つって……。
「勝負に買って試合に負けた。物理的には負けるが精神的には勝った。なかなかに複雑な勝負内容なんだ。ほら、始まるぞ」
『それでは、第二試合を始めます』
瞬間、剣と銃弾が交差し、甲高い音が鳴り響いた。




