表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

33/37

第三十三話:女王の決意と、けじめの旅

黒氷の島は足元からゆっくりとエーテルの輝きを失い、ただの氷の塊へと戻っていく。

私とリリアが手を繋いだままその光景を見つめていた、その時。私たちの足元から岸辺へと、再び月光の橋が架かった。遠く対岸でこちらを見守っていたゲルダの、最後の道しるべだろう。


私たちは黙ってその橋を渡り、岸辺で待つゲルダの元へと帰還した。

私が旅の最初の目的を問うと、老婆は物悲しそうに首を横に振った。


「あの苔は黒氷の島の純粋なエーテルだけを糧として生きる、儚い命。儀式が崩壊し、島がただの氷塊に戻ると共に全て失われてしまったよ」

そしてゲルダは済まなそうに、しかしどこか全てを見通すような瞳で、私を見つめた。

「…許しておくれ、お嬢ちゃん。わしはこうなることを知りながら、あんたをここに導いた」


(…ああ、そうか)

私は、その老婆の瞳の奥にある、途方もない孤独と覚悟を見た。

この魔女は、私個人のことなど見てはいない。

この世界の歪み。その行く末。ただ、それだけを見据えている。

私をここに導いたのは、私ののためではない。この、世界のために。


私は、隣に立つリリアの手を、強く握りしめた。


「顔を上げてくださいませ、ゲルダ」

私の声は、不思議なほど穏やかだった。

「謝ることは何もありませんわ。私は、本当に探していたものを、見つけられたのですから」


私はゲルダに深く一礼した。

それは、ヴァイスハルト家の当主として、この世界の宿命の一端を、共に背負う者としての礼だった。


長く厳しい道のりを経て、私たちは白氷城へと帰り着いた。

温かい食事。柔らかな寝台。全てが懐かしく、そして愛おしい。

数日後、城が日常を取り戻したある晴れた日の午後。私は、新しい旅の計画を立てていた。


「老執事、少し良いかしら」

私は彼を執務室に呼び出すと、一枚の大きな羊皮紙を広げた。

それは私がこの数日、徹夜で作り上げた「リリア聖地巡礼マップ」だった。


「これよりリリアとの思い出の場所を巡る旅に出るわ。いわば、けじめの旅よ」

私はマップの上を指でなぞりながら、彼に熱弁する。


「最初の聖地は天媒院の温室。ここのベンチでリリアがわたくしに初めて…」

私のその尋常ならざる情熱に、老執事は一瞬呆気に取られたような顔をした。

けれどすぐにその瞳に温かい光を宿すと、静かに、そして深く頷いた。

彼のその優しい眼差しは、主君の不器用で、しかし純粋な愛情の形を、全て受け入れてくれていた。

ご覧いただきありがとうございました。感想や評価、ブックマークで応援いただけますと幸いです。また、世界観を共有する作品もあるので、そちらもご覧いただけるとお楽しみいただけるかと存じます。HTMLリンクも貼ってあります。

次回は基本的に20時過ぎ、または不定期で公開予定です。

活動報告やX(旧Twitter)でも制作裏話等を更新しています。

作者マイページ:https://mypage.syosetu.com/1166591/

Xアカウント:@tukimatirefrain

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ