第三十一話:儀式の阻止
絶望的な戦況は動いた。
一人では決して届かなかった、この絶対的な存在に。二人ならば、あるいは。
私とリリアの本当の反撃が、今始まろうとしていた。
「…小賢しい真似を」
アザレアの表情から驚愕の色が消え、冷たい怒りが浮かぶ。彼女が再び因果の糸を手繰ろうとするが、私とリリアが手を繋いでいる限り、その絶対的な力は僅かに輝きを鈍らせていた。
リリアの存在が、この世界の理から外れた楔となり、アザレアの能力を不完全にさせているのだ。
「終わりにしてあげるわ、アザレア!」
私はリリアの手を強く握りしめる。
彼女の魂の共鳴が、私の意識に流れ込んでくる。
見える。リリアが見ているものが、私にも見える。
渦巻く因果の糸。その複雑なタペストリーの、たった一つの綻び。儀式の中心。アザレアの力の源泉。
「…あそこ…!」
リリアが囁く。
私は頷いた。
全ての魔力を、想いを、その一点に収束させる。
「あなたの独りよがりな過去のために! 私たちの未来を、奪わせはしない!」
私の手のひらから放たれたのは、もはや氷の華ではない。
全てを浄化する、白銀の光の奔流。
光はアザレア本人ではなく、彼女が立つ儀式の中心点へと吸い込まれていく。
次の瞬間、世界が白い光に満たされた。
因果の糸がガラスのように砕け散る甲高い音が響き渡る。黒氷の島が足元から崩壊を始めた。
儀式は、破られた。
光が収まった時、そこに立っていたのは力を失い、よろめくアザレアの姿だった。
彼女は憎しみを込めて私たちを睨みつける。
「必ず…」
その声は、時の彼方から響いてくるかのようだった。
「必ず…過去を、取り戻す…」
その言葉を最後に、彼女の体は光の粒子となって霧散し、時の狭間へと姿を消した。
後に残されたのは、崩壊し、ただの氷の塊へと戻っていく島と、静寂だけ。
私はリリアと手を繋いだまま、アザレアが消えた虚空を、ただ見つめていた。
戦いは、終わった。
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