第二十七話:残響未来
対話の時間は終わった。
アザレアの瞳から哀しみの色が消え失せる。そこにあったのは、全ての障害を排除しようとする、神のような無慈悲な光だけだった。
「ならばあなたも、この歪んだ未来と共に、消えなさい」
アザレアがそう宣告した瞬間。
彼女が手繰っていた因果の糸が、一斉に私へと牙を剥いた。
それはもはや、幻覚などという生易しいものではない。
禁忌の力――『残響未来』。
私の意識が、肉体から、引き剥がされ、無数の、悪しき未来の奔流へと、叩き込まれた。
――リリアが死ぬ。リリアが死ぬ。リリアが死ぬ。
刺客の刃に。暴走した私の力に。不治の病に。
ありとあらゆる絶望の光景。その悲しみ、痛み、後悔の全てが、私の精神を直接焼き尽くす。
――私が壊れる。私が壊れる。私が壊れる。
災厄の器と化し、世界を焼き尽くす。リリアの亡骸をその腕に抱きしめながら、ただ絶叫する獣へと成り果てる。
その罪悪感、自己嫌悪、虚無が、私の魂を内側から蝕んでいく。
だが。
「…無意味よ」
私は絶望の奔流の中で、はっきりと呟いた。
「見せてくれるというのなら見るといいわ。あなたのその、陳腐な絶望の筋書きを」
私の足は止まらない。
私の心は折れない。
この痛みは本物だ。この悲しみも本物だ。
けれどそれは、まだ起こっていない、ただの可能性。
私がこれからこの手で、リリアと共に創り上げていく未来では、決してない。
「私の未来は、私が決める…!」
私は歯を食いしばり、絶望の嵐の中を、ただ一歩、また一歩と前へ進む。
確かに私の魂はすり減っていく。けれど、それだけだ。
私は決して、膝をつかない。未来は私が決める。そして。
(…そう。私は、一人ではないのだから)
意識の片隅で、私はずっと感じていた。
この絶望の奔流に叩き込まれる直前まで、私が握りしめていたはずの。
リリアの、冷たい、小さな、手の感触を。
その感触だけが、この悪夢の中で、私を現実へと繋ぎ止める、唯一の錨だった。
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