六十一話『はじめようか』
闇の曲芸団。それは表向きには希死念慮があるものや社会的弱者に"生きる意味"を与えるための組織。だがその真の目的は、たった一人の少女を守り、崇めるためにある。私欲のために一体何人が利用されるのだろうか。俺は組織に勧誘する人間リストを作っていた。「ふッ…夜叉鏡の亡者??笑わせる」画面を覗き込んだホノカに言われては、「自分から亡者なんて名乗るかよ」と俺を馬鹿にするような言葉が続く。「かっこいいだろ」俺がホノカに言うと、ホノカは「それをかっこいいと言えるセンスがどうかしてるぞ」と笑いを堪えながら言葉を返した。「む…」俺は黙って頬を膨らませる。頬を膨らませる俺に、「そんなガキみたいな反応するな」とホノカは呆れた。その日の夜、またいつもとおなじように殺人に出向くためにナイフとバッグを手に取る。サユリに、「え?まだ十九時だよ?もう行くの?」と言われるが、「ちょっと早めにした方が帰ってから色々できるだろ?」と答える。サユリは、「えっちなことはもうやだぁ!」と胸を隠すように両手を前でクロスさせるが、俺は「いいじゃん、いずれは俺との子を産む身なんだからさ」とウィンクして扉を開ける。最近野郎共にいいように使われてるから、消毒のためにサユリとやりたいんだよな。まーた自分勝手だ。俺ってやつは本当に…。サユリの家を出ては、また如月駅へと歩く。「それで?その後レイに自分の正体は明かしたのか」ホノカに問われては、「嗚呼。意味深な事は言っておいたからあっちも察するだろう」と答える。ホノカは、「にしてもお前が組織を作るのか。絶望的に向いていない気がしてやまないな」と頷く。「向いていないとかやる前から言うなよ」俺が分かりやすく悲しげな表情になるとホノカは「お前は本来はあまり人と関わりたくないタイプの人間なんじゃないのか???」と問いかける。「…それはそうだけど」俺が素直に答えるとホノカは、「やはりな」と納得するような表情を浮かべた。電車に乗り込んでは、下を向きながらスマホで音楽を聞く。対して流行りもしない適当な洋楽。誰が歌っているかすらわからない。リズムに乗れているかと問われればそうでもない。ただ雑念をかき消す為だけに垂れ流す。なんだか安心するんだ。こうやって思考の中に浸るとなんだか優越感を味わえる。自分だけ特別な場所、視点にいるんだって優越感。そんなことをしていれば、『調布~調布~』と電車のアナウンスが聞こえてきた。「こんなところで降りるのか、はじめてだな」と呟くホノカに、「一回行ってみたかったんだ」と言いながら俺は歩き出す。「人が多い街だが問題ないのか?」ホノカに問われては、「仮に堂上が来たとしても命令すれば絶対厳守さ」と答える。「私のキョースケにあまり酷い事するなよ」と独占欲をチラつかせるホノカに、「でもあっちはホノカの記憶無いんでしょ?」と痛いところを突いてやる。「…嗚呼」寂しそうな顔をするホノカ。
殺す相手を探すため街を歩いていると、フラフラと夜道を歩く中学生男子の姿があった。「子供は殺せないんじゃなかったのか」と問いかけるホノカに、「……」と黙り込む俺。あの時あの少女を殺せなかったから善と悪どちらにも踏み切れない宙ぶらりんのままでいるんだ。いまやらないでどうする…。俺は赤いナイフを中学生男子の背中へ向ける。駅から少し遠い住宅街。一人一人に人生があるなんてわかってる、それでも俺には守りたいものがあるんだよ、守りたいものが…!俺が向けた赤いナイフは中学生男子の背中を切り裂く。中学生男子は、「ぇ??」と振り返るが、同時に血を大量に吹き出して倒れる。俺はバタバタと走って逃げる。防犯カメラは四角、駅外れの住宅街。朝まで見つかることは無いだろう。「はぁ、はぁ、はぁ、」殺しを済ませては、電車に乗り込み、またサユリの家のほうを目指す。使える駒が欲しい。もっとたくさん俺のために働いてくれる駒が!如月駅に戻っては、ホノカに「まさか子供を殺すとは」と感心される。フラフラしながら歩いていると、遠くにサユリの家が見えてきた。
「はぁー…はぁ…」俺はサユリの家の扉を開き、中に入ると同時に、気を失った。その後しばらくして、「…ミ…カガミ…!」サユリに揺さぶられたことで目を覚ます。「…サユリ??」すぐ近くにある可愛らしい顔に、「嗚呼…綺麗だ…」なんて呟く。「カガミ、倒れたんだよ???無理しすぎじゃない???」サユリは心配しながら、タオルとペットボトルの水を俺の隣に置いた。「最近立て続けだったからな…」と起き上がっては、サユリが「まだ起き上がっちゃダメ!!」ともう一度身体を寝かせてくる。「…わかったよ…」と答えつつ横になる俺。サユリは、グッッと俺の服を腹の上まであげる。「な、なにを、!??」俺が戸惑うとサユリは、「汗すごいから身体拭くの!!!!大人しくしてて!!!」と叫ぶ。「いや大人しくしてって言われても!」と焦るが、「あーもー!!!」とサユリにいいように身体を拭かれてしまう。「もう今日は休んでて!お腹空いた時用にきつねうどん作ってあげるから!」サユリはそう言うとキッチンの方へ向かった。俺はベッドに横になりながらスマホに目をやる。
「?」通知に目を向けると活動資金が振り込まれていた。「待て、こんなに…!?」俺はあまりの額に驚いて起き上がる。「カガミどうしたの!?」とサユリが振り返るが、「いや、なんでもない…」と心を落ち着かせる。おいおいレイ・テンダーさん、いくら起業の運転資金といえいきなり二千万の投資はどうかと思うぞ…。だがかなり助かるな…。レイからメールも来ていた。【秘密守ってね♡】……。なんで俺の周りの男はろくな奴がいないんだろうか。不思議だ。協力してもらっておいてこんなことをいうのは無しか。さて、メンバーも探さないとな…。そしてレイからまたメールが一件。【君にとって美味しい話あるけど聞く?】美味しい話…。興味はあるが。どうだろうか。あまりレイに乗せられるのもなんだかな。だが…うまい話はどうしても気になる。とりあえずレイにメールを返信。自分の物語は自分で描く。それが俺のルールだ。さあ、さっそくはじめようか。俺の物語の第二章を…!!!!




