五十七話『運命の赤い糸』
「カガミ、私はカガミがどんな状況にあろうとカガミが好き。それだけは忘れないで。」幾度となく甘い言葉を囁くサユリ。俺はそれが溶けるほど嬉しくて、サユリを前に目が蕩けてしまう。嗚呼…、この幸せを離したくない、好きだ、好きだ、好きだ、サユリが好きだ。「サユリ、俺はサユリを一生護るよ、そのためだけの人生でいい、だから、死んだらダメだ」俺が言うとサユリは、ふッ…と一瞬悪い笑みを浮かべた。いや、気のせいだろうか…。「学校でね、私いじめられるようになっちゃった。」サユリの言葉に、「!?」と俺は動揺を隠せない。「なんで…?みんな私がユリカをいじめて死なせたって言うの!私、いじめなんか、本当にしてないのに、!それに分倍河原くんが亡くなったのにも関与してるって言われて、本当に…本当に……」俺はサユリを抱き締める。「サユリが悩むことじゃない」サユリを宥めながらそっちの作戦も考える。「ありがとう、カガミ…」涙目になるサユリ。サユリがいじめなんかするはずないじゃないか。証拠もないのに酷いな。
サユリを抱き締めている間に電話がかかってくる。…ヒビキだ。タイミングが悪い。「…なんだ」明らか不機嫌な声で電話に出る。『アンタあの後、サツに捕まって逃げ出したってマジ???』と驚いたような声を上げるヒビキ。「悪い、いまそんな事話してる場合じゃないんだ、切るぞ」『ちょっと!?何があったか教えなさいよ、!!』ヒビキの慌てるような声が聞こえてくるが、電話を切る操作をすると同時に、その声は途中で途切れた。「誰から?」笑顔で問いかけてくるサユリ。「嗚呼、知り合いの…」と誤魔化すが、「声、女の子だったよね?」と首を傾げる。「なに、カガミまで私を裏切る気?」サユリは静かに圧をかける。「ちがうちがうちがう!!!ちがう!!!」情けないが全力で否定する俺。「わかってるわよ、」揶揄うように笑うサユリ。嗚呼、心臓に悪い!!「まあもしカガミが浮気なんてしたらどうなるか」サユリは俺を脅迫する。「嗚呼、わかってる」俺は無条件に頷いた。「ならよし」と満足気に微笑むサユリ。
「サユリ、俺…やりたいことがあるんだ」下を向きながら言うとサユリは、「全部協力するよ。たとえそれが犯罪でも」と俺の手を取りながら答える。とくん。とくん。心臓がゆっくり動く。ドキドキしているんだ、なんて実感する。嗚呼、サユリ。完全に俺の負けだよ。俺はサユリから離れることができない。「サユリの手を汚す訳にはいかない」俺が目を逸らしながら言うと、サユリは「でも、カガミばかりに背負わせるのはイヤッ!!!」と俺の手をギュッ、と包むように握りながら叫ぶ。「だが、巻き込むのは……」俺が躊躇うとサユリは、「私にも出来ることなにかない!?」と食い下がってくる。「そうだな…」俺は少し考えたあと、「なら今後手続きが必要になったときに色々やってほしい。」とサユリに役割を与える。
サユリは、「手続き?なにするの?」と首を傾げた。俺はサユリの問いに、「小規模な組織を立ち上げるつもりだ。はじめは少人数にしたい」と答える。サユリは、「資金は?」と俺の不完全な計画を心配する。「とある資産家に接触する。」レイ・テンダーのセミナーの資料を見せるとサユリは「そう簡単にはくれないでしょ」と冷静な見解を述べた。「嗚呼。普通なら貰えない。だが俺はレイの決定的な弱みを掴んだ」俺が説明するとサユリは「いつの間に!?どうやって!」と驚く。「それは答えられない」俺が濁すとサユリは、「そんな~」とがっかりする。社員に接触して、メイド服着せられてあれやこれやしたなんて最愛の人を前に言えるはずがない。それに軽くトラウマなんだよあれ。「セミナー、ひとりでいくの?」サユリに問われては、「嗚呼」と頷く。サユリに見えていない状態のホノカは、浮遊しながら、「ひとりじゃないけどな」と笑った。
「レイ・テンダーみたいな有名な人でも弱みあるんだね、私はSNS買収されて好き勝手されたからあんまりその人にいい印象無いな…。その人がSNSに来てから自動アカウントめちゃくちゃ増えたんだよ、ブロックするのに手間かかったんだからいい迷惑よね」サユリはそう言うと、SNSの画面を見せた。「訃報にGood♪とか、それは大変素晴らしいです~。とか言っちゃってんの。やっぱり大金を前には人間って狂っちゃうのかしら?」サユリはそう言うと俺の目の前から画面を離した。俺はセミナーの資料に目をやる。「そもそもこういうセミナーって若い子来るの?」あまりセミナーのイメージを掴めていないサユリ。俺も実際よくわかっていない。そもそも接触出来たとてレイに話しかけにいける時間があるのだろうか。「さあ。若いのが俺一人でも構わないけどな。」俺が答えるとサユリは、「色々真剣に考えてるカガミ、かっこいいね」と幸せそうな表情を浮かべる。サユリからの急な甘い言葉に動揺した俺は「ぅ゛ッ」と息を飲む。ダメだ。本当に俺はどうにかなってしまいそう。サユリがいないと死んでしまう。「サユリ、あまり俺に甘い言葉を使わないでくれ、壊れてしまいそうだ」俺が言うとサユリは、「じゃあたくさん甘い言葉囁いてあげる。カガミは壊れてもいいから、私だけ見て欲しいんだ」と答えた。嗚呼、歪んでいる。でも気持ちは互いに同じだという確証に安心感を覚える。「嗚呼、俺はサユリの思うがままだ。好きにしてくれて構わない」俺が言うと、ホノカは浮遊しながら、「異常だな」と呆れたように呟く。嗚呼、好きなだけ言ってくれ。俺はサユリを守れたらそれでいいんだ。「うふふ、」嬉しそうに微笑むサユリ。「でも、小さい時はまさかカガミが犯罪者になるなんて思わなかったな」と携帯のスーパーレッドの待ち受けを見ながら語るサユリ。「俺自身が一番驚いてるよ」と乾いた笑みを浮かべる俺。「でも私、どっちに転んでも結局カガミが好きだった。カガミが悪いことしてるなんて信じられなかったけど、それ以上に本当のことを話してくれたのが、嬉しくて仕方がなかった。何度生まれ変わっても私はカガミを好きになる。私たち、運命の赤い糸で結ばれてるんだね?」サユリはそう言うと、俺の顎を持ち上げる。甘いキスの味。嗚呼、そうだ。俺が何よりも求めているのはサユリのすべてだ。「人生の最後までおなじ時間を歩もう、俺はサユリを置いていったりしない。一生サユリだけを愛する、」サユリに宣言すると、「ありがと♡」と幸せそうな表情を見せた。どれだけ状況が悪化しようと、そこにサユリが存在すれば満足だ。




