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『俺にラブコメはまだ早かった!!~運命に振り回された俺の青春を返してくれ~』  作者: ミタラリアット


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五十五話『絶望の手前で…』

 二日後。人を殺せていないこの状況でクラスメイトや周りの人間がどれだけ死んでいるかわからない。サユリの生存確認がしたい。この数日で何度堂上に醜態を晒したか分からない。見られるものは全て見られた。琲世の瞬間まで……。雌に成り下がったような気もする。それなのに、堂上の前では自我なんて存在しない。嫌でもR2の恐ろしさを思い知る。……でもこれなら、行けるかもしれない。それに、堂上はR2を所持しているって事だ。いや……この一本限りだろうか? 何よりもサユリの生存確認だ。「堂上……スマホを貸してくれ……」俺が言うと堂上は私服に着替えた後、「まあいいでしょう。ですが、警察で使っているスマホです。どこにかけても履歴は残りますよ」と言って俺にスマホを渡す。「今は何時だ」俺が問うと堂上は、「朝の十時です。これから墓参りに行きます。私の命令は全て聞く身体になっているでしょうし、手枷は必要無いでしょう。ただし、私以外にもう一人監視を付けます。逃走なんて夢のまた夢。不可能だと理解してください」と説明する。


 スマホを受け取っては、「サユリ。無事だったら再度連絡をくれ」とサユリの電話番号に留守電を入れる。「やっぱり笛野さんか。どうやら君の学校で二日連続人が亡くなる事件があったらしいね。どういう因果? 君の殺人劇と何か関係があるの?? 一人は分倍河原って言う大柄の男の子。もう一人は女の子で───」堂上の説明に、「ッ」と目を見開く。ダメだ、サユリ!? サユリ、サユリ、生きててくれ、サユリ、サユリ、どうか、どうか、生きて……生きててくれ、サユリ……サユ……。頭では何度も最悪の結末を再生する。早く逃げなきゃ、ここから……。「では、お先に失礼します。捜査本部の者が呼びに来ますので」堂上はそう言うと部屋から出した。堂上が用意した服を身に纏う俺。靴を履いた状態で身長が百六十センチ前後しかない俺には明らかにサイズが大きく少しぶかぶかしている。捜査本部の人が迎えに来るのを待っていると、どこかから浮遊してきたホノカが、「カガミ。建物内の別室に別件の犯人から差し押さえられたR2があった。何本あるかわからないが。取りに行くか??」と問いかける。「嗚呼、念の為頼む」俺が頷くとホノカは、「わかった」と答え浮遊して行った。ホノカが全ての原因なのに、そのホノカに助けられている。この物語は一体誰が悪いんだ。誰のせいにしたらいいんだ。「火神くん。準備が出来ました」女性刑事が迎えに来る。俺は女性刑事の後ろについていく。少し歩いた先で、周りの人間には姿を認識出来ないホノカと合流する。「R2は確保した」ホノカはそう言うと、「お前のために家までカバンをわざわざ取りに帰ったんだぞ。感謝してくれ」と呆れたように続ける。俺は女性刑事に気づかれないよう口パクで【ありがとう】とホノカに伝える。ホノカは、「はぁ」と溜息をつきながら、「お前の策、理解はした」と答えた。


 ブーッブーッ。バイブ音が響く。俺はスマホを手に取った。女性刑事は振り返る。『私は無事。カガミはずっと、私の事守ってくれたんだね……』と呟くサユリの声が受話器から聞こえてくる。「嗚呼……愛してるよサユリ」俺は静かに答えると電話を切る。サユリさえ、サユリさえ生きてくれたならそれでいい。「行きましょう」女性刑事は微笑む。車に乗り込むと、運転席に座る堂上が「一つ弁明させて欲しい。僕は君に嫌がらせをしたいわけじゃないんだ。君がしたことがどれだけ重い事か。理解して欲しいだけなんだよ」と俺に語りかける。俺は目を逸らしながら、ただ黙るだけだ。「……じゃあ、行こうか」堂上はアクセルを踏み込む。この短期間で被害者をほとんど把握しているのはさすが日本警察と言わざるを得ない。そりゃ当然か。日頃から事件を捜査している警察官相手にいきなり殺人鬼にされた高校生が勝てるはずないからな。「紅葉が綺麗だね」堂上は優しい声で言う。車は秋を知らせる赤と黄色で彩られた街並みを駆け抜ける。黙って下を向くばかりの俺。そんな俺を見た女性刑事は、追い打ちをかけるかのように「火神くん。あなたはこの後、成年と同じように裁判をかけられます。既にあなたは十人以上手にかけている。少年法が適用されても恐らく無期懲役ぐらいにはなるでしょう。被害者遺族にも会うはずです。当然、お父さんも責任を取ることになる。それでも誰かを守るために殺した、と主張しますか」と俺に問いかける。「はい」俺は迷わずに答えた。女性刑事は言いたい事が伝わらない事に対してか、悲しげな表情を浮かべる。堂上は、「火神くん。自分が手にかけた人たちの声を聞きなさい。命は君が思っている以上に重たい。一人一人の特別な人生があるんだ。待っている人がいるんだ。それでも君に何の言葉も届かないと言うのなら、僕はどんな手を使ってでも無理矢理君に理解して貰うよ」と胡散臭い笑顔で言った。


 逃げるなと堂上に言われた瞬間に俺は全てが終わってしまう。先手を打たなければ……。しばらく道路を進んで霊園に辿り着いては、車から降ろされる。「君が最初に手にかけた女性教師が眠っている墓地です。早速会いに行こうか。ニナ先生に」そう言われながら堂上に背中から尻の先までなぞられては、ゾクッとする不快感を覚える。静かな空気が漂う霊園には、俺、堂上、女性刑事の三人と後ろを浮遊するホノカしかいなかった。堂上に墓の前まで案内されると、ぴゅー、と冷たい風が吹いた。「ホノカ。いいね?」俺はホノカの名前を呟く。するとホノカは俺のポケットに液体を入れた状態のR2を入れた。「ホノカ……?」堂上は何かを思い出すかのように目を揺らがせる。「火神くん。何か感じることはある??」女性刑事に言われては、女性刑事の脇腹を素早く肘で殴る。女性刑事は、「ぅ゛ぅ!?」と呻き声を上げながらよろけてしまう。片手を背中に回して催促すると、即座にホノカがナイフを背中へ渡す。堂上が状況を読めないうちにナイフで女性刑事の腕を切り裂き一撃で殺す。


 その後堂上が「火神くん!!!!」と焦りながらこちらへ手を伸ばしてくる。「悪いホノカ!!」俺はホノカに謝った後、堂上の手首にR2を勢いよく刺す。ドクンッと身体を跳ねさせる堂上。「その場から動くな!」丸くなりながら悶える堂上に命令した後、女性刑事のポケットから財布を奪い、俺は全力疾走で霊園を離れる。地位も名誉も、もう全て捨てた。これ以上なにをしようが、俺は変わらない。「はぁッ、はぁッ、はぁッ」帰る場所も無く、とにかく走る。「ゼェー…」駅に辿り着いては、その場で倒れるように椅子に座り込む。そして両手で頭を抱える俺。もう家には帰れない、学校にも行けない、どこにも連絡する事が出来ない、頼れるのは、頼れるのは、ただ……。ただ…!!

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― 新着の感想 ―
逃避行きたーーー!やっぱり逃避行は物語の定番ですよね!
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