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『俺にラブコメはまだ早かった!!~運命に振り回された俺の青春を返してくれ~』  作者: ミタラリアット


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五十二話『バッドエンドだろうか』

 夜ご飯を抜いて八時頃まで寝てしまった。リビングに行くと、机の上に『カガミへ♡』と書かれた付箋がラップの上に貼り付けられたオムライスが置いてあった。「…」俺は数秒立ち止まった後、用意を済ませ席に座り「いただきます…」と呟く。「……」下を向く俺。この後も人を殺しに行く人間であると言う事実が心を痛めつける。チマチマ食べ進めていると、寝室から母さんの寝息が聞こえてくる。暫くして食事を済ませると、階段を上がり自分の部屋へ戻る。今日も誰かを殺さなきゃいけないなんて憂鬱だ。ホノカからの救済を黙って受け取るべきだったか。幼女が作って、俺が棄てたスズランの折り紙を思い出す。あの時、あの幼女を殺せていたら、俺は完全悪になれただろうか。なんて滑稽な事を考えて。「…」俺は黙り込む。風呂の用意をしては、階段を降りて脱衣場に入る。服を脱いでは、浴槽の中へ浸かる。なんだか肩が重い。たくさんの霊が憑いていそうだ。まあ、そんな科学的根拠も無い話、俺は信用しないが。身体と髪を洗い、風呂を出ては、いつもの黒一色のコーディネートに身を包む。「…」自分の部屋に戻りナイフをカバンに入れては、玄関まで歩き、扉を開ける。浮遊しながら俺の後ろを追いかけるホノカ。「カガミ、今日は誰を殺すつもりだ」


 ホノカの問いに、「俺はもうなんでもいい、誰であれ殺す」と答える。「女の子は殺せなかったくせにか」ホノカは口角を上げる。「甘いんだよ。私はお前をもっと立派な殺人鬼に育てあげないといけない。罪を重ねろ、カガミ」ホノカの言葉に、俺は黙って目を逸らすだけだった。殺人の味なんて覚えたくなかった。生臭くて、人の人生が一瞬で散る瞬間を身体に刻むような苦味。腐ってもまだ未成年の俺には刺激が強くて、気が狂ってしまいそうな程の罪悪感に襲われる。でも俺はこうなるしかなったはずだ。もし俺があの場で助けに行かなければサゆりがこの運命を背負わされていたのかもしれないから。サユリも、様子がおかしかった。みんな変わっていくのだろうか。それとも元々サユリにはそんな素質があったのだろうか? サユリを狂わせたのは俺か。こうなるつもりじゃなかった。俺は父さんみたいな警察の偉い人になりたかったんだ。悪いやつから誰かを守る。そんな生き方に憧れていたのに、俺が悪いやつになってどうするんだ。でも、道化を演じなければならない。台本通りに最後までやらなければならない。「…」俺は歩きながらため息をつく。「疲れたな…」駅の前まで行っては、改札を通りホームの前に立つ。「俺が風邪を引いたり急病になって入院でもしたらどうなるんだ」


 俺の問いにホノカは、「たくさんの人が死ぬだろうな」とだけ答える。「お前は俺の未来を知っているんだろう?? なら全部教えてくれよ、俺がどうなるのか」俺が問いを続けると、ホノカは、「私の姿は周りの人間に見られてないんだ。不審に思われるぞ」とはぐらかす。確かに、駅のホームで待つ人がチラチラとこちらを眺めていた。「返事はしなくていい。よく聞け。お前の行く先は"満足"だ。お前は満足して全てを終わらせる事が出来る。ただ、手順を間違えなければな。既にお前は間違ったルートに入っている。ここで引き返さないと大変な事になるぞ。まずはあの女から───」ホノカが何かを言いかけた瞬間、電車が勢いよく通過する。あの女から。それはきっとサユリの事だろう。なんなんだ。みんなしてサユリが悪いって。この俺がサユリから離れるわけないだろう、全く。その後、暫くして各駅停車の車両がやってきては、俺は静かに電車に乗り込む。『あいつは悪い女だ』声に辺りをキョロキョロと見渡すが、電車内の誰かが発した言葉では無いようで。なんだか不快感だけが残った。幻聴の症状は落ち着いたと思っていたのに、またなんだか調子が悪いようだ。『霊城浄徳~霊城浄徳~』電車のアナウンスの後、適当な駅で下車する。「大きな寺だな」


 駅から出るとすぐ東京に存在するとは思えないような寺が視界に入る。まるで京都のような風景に癒されながら、三年坂のような階段を歩いていく。名は、"狂言坂"。この時間だからか、舞妓を捕まえようとしている男たちが彷徨く。"遊郭"と堂々記された看板が、古都の雰囲気を助長させる。「東京にこんな町があったなんて」夜なのにそれなりに栄えている狂言坂の商店街を見ながら、ホノカが呟く。俺もはじめてくる場所だ。「うわぁぁ!?」ぼーっとしていると、盛大に転んでしまう。「坊や大丈夫かい!?」俺を見ていた二十歳ぐらいの女性が俺の元へ駆け寄る。「ちょっと手当するからこっち()ぃ!」まずい、そんな事をしている場合じゃないのに!!「大丈夫です…!」俺は離れようとするが、女性は「ダメ!!!血が出てるわ!」と店からガーゼとテープを持ってくる。「こんな夜にひとりで来るから…」女性はそういうと、「ほな出来たで!」と笑みを浮かべる。「坊やひょっとして誰かに嘘ついてるやろ」ニヤリとこちらを見る女性に、「いや、なんでですか」と俺は問いかける。「狂言坂。嘘つきは転ぶっちゅー坂や。京都のパチモンみたいな町やけどな、昔の人の言い伝えは侮れないもんやねん」女性はそういうと、「誠実に生きるんやで、気ぃつけて~!」と俺に手を振った。ホノカは、「嘘つきは転ぶ…」と俺を揶揄うような視線を向ける。「ははっ…」乾いた笑みを浮かべる俺。狂言坂を下ると、そこは江戸の住宅街のような不思議な町。吹き抜ける風に、「ッ…」と心を揺さぶられるような感覚を覚える。


 いくら神聖な空気に包まれようと、俺は人を殺しに来た殺人鬼である事は変わりない。神や仏の教えなんて、今の俺の状況では何も意味を持たないものだった。刃物を片手に、住宅街をフラフラ歩く。「ッあなた、なにをしているの?」身支度を済ませた舞妓が置屋から出てくる。「ッ…!!誰か来て!!!通り…魔…」鉢合わせた舞妓が置屋にいる誰かを呼びに行こうと背を向けた途端、その背に向かって縦に傷をつけるように刃先をなぞる。舞妓は血を流して倒れる。「何事!?」と芸者が出てくる声が遠くで聞こえたが、駅に向かって歩いている俺に誰も気づく事はないだろう。「…現行犯逮捕」駅に向かって歩いていると、聞いた事がある声が聞こえ背後から突然腕を掴まれる。


「もう言い逃れは出来ないね。弐式火神くん」胡散臭い笑顔。紫色の目。「…なんで…?」目を見開く俺。署まで来て貰おうか」堂上だ。堂上恭介。「キョースケ…」その姿を見たホノカも動揺する。「どう言い訳する?弐式火神。僕は君が殺しをしている現場を目撃したんだ」堂上は俺の片腕に手錠をかける。「弐式火神、午後十時半。殺人容疑で現行犯逮捕」時計を見ながら言う堂上。ホノカは「終わったな」と俺に視線を向け嘲笑う。「ッ───!」


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ついに物語が動き出す!いったいどうなんるんだろ(*‘ω‘ *)
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