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『俺にラブコメはまだ早かった!!~運命に振り回された俺の青春を返してくれ~』  作者: ミタラリアット


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四十五話『計画と日常の狭間で』


 授業中、俺の視線は教科書やノートには無かった。経営者、レイ・テンダーの資料。それに目を通す。どうやら彼の会社では社員たちの不審死が繰り返されていてその都度、事件の概要を国さえ交えて隠蔽していたと言う。なぜならレイは現職の総理大臣の父が現役だった頃から家族ぐるみで政府と付き合いがあり著名な政治家らと親しかったからだそう。確実に言えるのは、レイは人を殺した事がある。直接的か関節的かは不明だが確かに会社にとって不利益な社員を何人も殺している。簡単に言葉にすればそんな内容だった。資料をクリアファイルに片付けては、少し遅れながら勉強に集中にする。数式をすらすらと解き進めては、一分ずつ時間が経過していく感覚に襲われる。真面目に学校に通っている場合では無い。もっと真剣に殺しに集中しなければならないのに。「……」チラチラと勉強するサユリを見る。彼女が死んでいない。ただそれだけで俺は生きている価値がある。午前中の授業が全て終わった後、購買に向かう。特にこだわりが無い俺は適当に弁当を選び、レジ袋を片手にサユリを探す。「サユリ」サユリを見かけてはすぐに名前を呼ぶ。名前を呼ばれたサユリは振り返り、「カガミ!」と俺のほうへ駆け寄ってくる。「お昼ご飯食べよ!」と微笑むサユリ。「そのつもりで呼んだ、」サユリに連れてかれるがまま、屋上まで向かう。屋上には二人きりで、二人を邪魔する人間は誰もいなかった。


「風が気持ちいいね」と脚を伸ばすサユリ。「なんか少し肌寒いよな」俺が言うとサユリは、「季節も変わり目だからね」と答えた。「ねえカガミ。」サユリは俺のほうへ優しい笑顔を向ける。「最近頑張り過ぎじゃない? 遅刻しちゃうなんて。本当はお疲れ様でしょ」サユリの言葉を聞いた俺は、心が癒される。「ううん、いいんだよ。サユリがそばにいればそれで」俺が言うとサユリは、「んも、カガミはそればっかり」とたこさんウィンナーを箸で掴んで口へ運ぶ。「だって…」俺が目を逸らすとサユリは、「私の前では等身大のカガミでいてね」と都合のいい言葉をかける。俺はそんなサユリに心を奪われる。そして、昨夜あんなことがあったせいか、涙さえ零れてくる。涙を拭うと、「えッ、なんでなんで!?泣いてるの!?」とサユリは驚く。「いや、サユリが生きてるだけで……本当に嬉しいなって……」俺が言うとサユリは、「カガミに生きてて欲しいのは私のほうだよ……カガミは私の王子様だもん。どっちか片方が先に死ぬなんて駄目。死ぬ時は一緒なんだから。」と純粋な表情を向ける。「私……いいんだ。いくらいじめっ子だって疑われようと、周りの女子たちから変な目で見られようと、ありもしない噂が次々と立とうと。私はカガミがいたら、それだけでいいんだ」サユリはそう言うと、「あーん、」と手作りの卵焼きを俺の口のほうへ向ける。「……美味しい」俺が呟くとサユリは、「良かった♡」と嬉そうに微笑んだ。


 昼食を摂った後、ゴミ箱に弁当箱を捨て、歩いて更衣室まで向かう。次は体育か……。更衣室に入ると、分倍河原が「今日もサユリちゃんとご飯食べた?」と揶揄ってくる。「巨体のくせに気安くサユリちゃんなんて呼ぶな」と俺が言うと、分倍河原は「いいじゃん。ヒロムもサユリ、とかサユリちゃん、って呼んでたんだし」とケラケラ笑う。ベルトを外し学生服を脱ぎながら体操着に着替えていると、分倍河原は「弐式って肌着着るんだ」と揶揄ってくる。「いやそれは……」俺が恥じらっていると、分倍河原は「弐式ってさ。自分が色っぽいの自覚してないでしょ」と指摘してくる。「はぁ!???」俺が叫ぶと、「自分の外見の良さをわかってない、って言ってるの、本当にそれ危ないから辞めた方がいいよ」と分倍河原は俺を注意する。「肌着着ただけで!?!?」俺が驚くと、「ほらもうわかってない!!」とツッコまれる。「はぁ?」俺、やっぱりこいつ嫌いだ。


 体育の授業。どうやら体育館に集まってバスケをするらしい。無駄な授業だ。なんだか身体のあちこちが硬い。寝違えった日のような、ヒリヒリする感覚を覚える。体育館に並んでは、女子と男子で列を分けられる。サユリのほうは……。なるほど。今日の下着は薄いピンク色か。でも女子は可哀想だ。下着がどうしても透ける。こっちの方がよっぽど色っぽいじゃないか。ぼーっとしてると、「弐式」とバスケットボールのカゴを引っ張ってきた岸田先生に声をかけられる。「最近どうした」岸田先生に問いかけられた俺は、「いや、少し調子悪くて」と答える。「そうか、無理はするな」と心配する岸田先生に、俺は「……」と少しばかり罪悪感を覚える。まずは女子の試合が始まる。ミサを中心とするチームと、サユリを中心とするチームが戦うようだ。ミサも足が早いが、サユリはそれを上回る。バタバタと走ってボールを相手のゴールに……。サユリの髪が舞う。その瞬間の描写に、男子は皆目を奪われていた。これが文武両道のサユリの実力。「ふッ……」俺はつい誇らしくなる。この女が俺のものなんだぞ、どうだ世界、思い知ったか。なんて。一緒に見ていた分倍河原が、「サユリちゃん凄いね」と笑うが、俺は「俺の彼女だ、それぐらい出来て当然だろう」と答える。分倍河原は「えッ」と少し引いたような反応を見せた。


 もちろん、試合はサユリのチームの圧勝だ。次は俺たちのチームがバスケをやることになる。ただでさえ体力が無いくせにコンディションすら悪い俺は流されるまま体育の真ん中に立つ。どうやら分倍河原と同じチームらしい。頼りない。チームメイトもなんだか芋臭いのばかりで、成績が俺よりいい奴や明らかに顔が整っている奴とは別のチームに振り分けられている。どういう人選なんだろうか。岸田先生に抗議したくなる。が、嫌でも試合は始まってしまう。ガタイのいいイケメンが凄い勢いでこちらへ走ってくる。「ぐッ……」交わせるはずもなく、体当たりされボールを奪われてしまう。「うぉぁ、!!!」サユリの前で勢いよく転ぶ俺。「弐式!!!!」分倍河原が助けに来ようとするが、「追いかけるべきはボールだろ分倍河原!!」と叫ぶ。俺のかっこ悪い姿に女子たちの笑い声が聞こえる。そして試合が終わった。結果はボロボロ。勝利に歓喜しハイタッチする敵のチームを悔しそうに眺める俺たち。「頑張った頑張った!」と女子たちに慰められながら、俺は体育館の壁にもたれかかる。タオルを首に巻き水筒を開けスポーツドリンクを飲む俺。「お疲れ様」とこちらへ駆け寄るサユリに、「……かっこいいとこ見せられなくてごめん」と謝る。サユリは「かっこよかったよ」と俺の頭を撫でる。サユリに撫でられ、ふわっと崩れる髪型。女子の一人が「イチャイチャすんな~~。」と言いながら体育館を出る。後ろにいた分倍河原も「また後でね弐式~~」と俺に手を振る。俺はサユリと並んで更衣室の手前まで戻る。「じゃ、また帰りね」とこちらを見て手を振りながら言うサユリに、俺も「嗚呼…」と答えた。

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― 新着の感想 ―
なるほど…カガミは色っぽい…ふふ。
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