表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『俺にラブコメはまだ早かった!!~運命に振り回された俺の青春を返してくれ~』  作者: ミタラリアット


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/63

四十三話『罰の味』


 その日の晩。夕食と風呂を済ませた俺は、家族全員が寝静まるまで部屋の中で勉強を進める。建前だけでは、"警察"を目指す事にして。「……」俺は再生数三千回、なんて誰が好んで聞いているのかもわからない適当な洋楽をブルートゥーススピーカーから流しながら、課題に集中する。全ては一生サユリの傍にいるためだ。良くも悪くも、死なない身体になったんだから。にしても、引っかかる。ホノカと堂上のツーショット写真。ホノカは今では考えられないほどとびきりの笑顔で、仏頂面の堂上と映っている。あいつにもそれなりに楽しい事をしていた時期があるんだな。全く、死神は本当に人を狂わせるな。俺のベッドでぬいぐるみを抱きしめながら眠るホノカ。嗚呼、こいつも一応、"女"なんだな……。とりあえず今日は殺す相手も決まっているため待ち合わせの時間まで、俺は静かに勉強に集中する事が出来る。どうせ電車で一本だ。奴を呼んだのは俺だが指定されたのは『アパーアットトゥースホテル』。そうだ。お察しの通り、あの女社長のアレだ。あそこである。普通高校生のガキをホテルに呼ぶ成人男性いるか? しかも夜中だぞ。普通ならここで引き下がるべきだ。それに、ホテルに呼ばれちゃ部屋で殺すのも不可能だろう。あっという間に堂上はじめ警察に足をつけられる。参ったな……。ピコン、とメッセージアプリの通知がなる。『高木です。時間通りに合流しましょう』その通知を見た後、数分の間に何件も溜まったサユリからのトークに切り替える。『カガミが世界で一番だーいすきッ♡』可愛らしいメッセージに和んだ後、たまたま無料だったので持っていたサン〇オのキャラクターのスタンプだけで返しては、「行くか」とナイフをカバンに入れる。「起きろホノカ」俺はホノカを揺さぶるが、ホノカはぬいぐるみを抱きしめたまま起きる気配がない。はあ……。俺は息を吐いた後、ホノカの耳にグイッと指を入れる。「なにをする……!!!!」起き上がり恥ずかしそうに片耳を抑えるホノカ。「行くぞ」俺が言うとホノカは、「待て着替えるから自分の部屋まで取りに行かせろ」と眠たげな声で答えた後、ふわりと窓から溶けるように消え洋服を取りに行くのだった。「全く、どうせ見られやしないのに……」俺は呟いた後、裏地にじんわりと小さく返り血が滲む黒一色の服に着替え、階段を降りる。


 人を殺しはじめてどれぐらい経っただろうか。正義にも悪にもなりきれない俺はどこに辿り着くのだろうか。そんなことを考えながら駅まで歩く。「ホノカ」俺がホノカの名を呼ぶと、浮遊しながら着替えを済ませたホノカが隣に降り立つ。「死んだ日から自分の部屋が変わってないのは助かるな、地獄で買える服は限られるし好みじゃない。」そう言うとホノカは、いつもと変わらない姿で俺の隣を歩く。「地獄ってどうなってるんだ???」俺が問いかけると、「お前たちが思うような石積み……とか、そんな地獄じゃないさ。普通の街並みが広がっている。だが日本人のお前は住み慣れないかもな。こういうのどかな住宅街の景色はない。街は繁華街とマンションばかりだ。地獄では効率的な裁きをするために自治体を発展させる必要があった。全てを管理するのは閻魔という死神界でも最上級の死神。まあいわゆるここで言う総理大臣みたいなやつだ。総理大臣の下で仕事するのが私たち死神。国会議員や公務員みたいなものだ。私はどちらかと言うと国会議員に近い立場にいるな。」とホノカは地獄について説明する。「自治体……って。罪を裁くために地獄ってあるんだろ? 拷問とかして裁いたらぽい、じゃないのかよ」俺が続きの説明を求めると、ホノカは、「お前ってファンタジー信じないタイプじゃないのか」と冷めた目を俺に向ける。「そんな簡単な話じゃない。一人一人の人生を調べてどれだけの刑罰を与えてどれだけの……って調べてから、罪状に見合う分、働かせたり拷問したり業を背負わせて人間界に再び戻したりってしなきゃならないんだ。たまに人間界で恨みを買いすぎたせいで冤罪で地獄に来るようなやつもいるからな。本当にそいつが悪いやつなのかを調べる必要がある。また、人間界で既に過剰なほどの罰を与えられている場合もあるからな。それだけ死神も慎重なんだよ」ホノカの言葉に、俺は「そんなに大変なら自分たちで犯罪者増やすなよ」と呆れる。ホノカは、「いっそ最初から自分たちで犯罪者増やした方が早いだろ。全部把握出来るし」ととんでもない理由を語る。


「素直に殺人犯やってる俺が馬鹿みたいだな……」俺が呟くとホノカは「でも私としては満足だ。お前みたいなプライドの高い男を裁くのが楽しみだよ」と口角を上げる。「もういいよ、俺は。サユリさえ無事なら地獄でも天国でも無の世界でも行ってやる、サユリさえ良ければなんでもいい」俺が言うと、ホノカは「全裸で荷馬車に乗って街中パレードだぞ」とほくそ笑む。「は!?」俺は動揺して瞬きする。その反応を見たホノカは笑いながら、「冗談だ。地獄で罰されるレベルの人間になるともっと酷い拷問だぞ」と全然安心できない事を言う。「なんだそれ、例えばどんなことだよ」俺が問いかけるとホノカは、「処刑担当の死神に真っ白の壁の個室に連れられて抵抗は一切許されないまま朝まで【自主規制】それに担当の死神は異性とは限らない」と真実を語る。俺は、「うぐッ」と喉から出そうになったものを飲み込みつつ、青ざめた表情になる。「地獄の罰は甘いものじゃないんだよ。当人が"嫌だ"と思う事をただひたすらさせられる羽目になる。だって罰だからな。人間界の刑罰なんて死刑でも甘い甘い。人間界で死刑になんてなれば、地獄で散々罰を受けたあと来世でも罪を償わなければならないぞ」ホノカの説明に、「めんどくさい事してくれたな本当に」と頭を抱える。「でも喜べ。きっとお前の処刑担当はイケメンの死神だ」嬉しくも何ともないホノカの言葉を聞きながら、ICカードを翳し改札を通り駅の中へ入る。


「俺にそんな趣味はないって」俺が言い終わるのと同時に、ホノカは浮遊しながら改札を通る。「お前、交通費もそれなりの出費だろ。R2も買ったばかりだし。どこからそんな金……。月の小遣いいくらだ」純粋な疑問をホノカは問いかける。「言えない。だが同級生が驚くぐらいには母さんから貰ってる。だいたいバイト代ぐらいかな」俺が答えるとホノカは、「金持ち家系は羨ましいな」と笑った。「ホノカの家はどうだったんだよ」俺が問うとホノカは、「私の家は普通だ。それより、待ってるんだろう、そのレイ・テンダーって男の会社の部下が。」と俺を急かす。同時に、駆け抜ける通過列車の逆方向から、急行列車がやってくる。俺は「嗚呼……」と答えながらその電車に乗り込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
地獄か…。この世界に天使はいないのか!?ちくしょー!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ