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『俺にラブコメはまだ早かった!!~運命に振り回された俺の青春を返してくれ~』  作者: ミタラリアット


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三十八話『置き土産』

 翌朝。俺はスクールバッグを片手に学校へ向かう。通学路を歩いていると、「カガミ~~~!」とサユリが後ろから追いかけてくる。「ちゃんと名探偵津田島みた!?」目を輝かせながら聞くサユリに、俺は「悪い、見逃した」と目を逸らしながら答える。サユリは「え~~!? メッセージも送ったのに!」と驚く。「まあ、今どきヒーハーとかでいつでも見逃し配信見れるしね、帰ったら見てね! 今週も面白かったよ!」とサユリは微笑む。「サユリ、手。」俺が片手を差し出すと、サユリはニヤニヤしながら、「なに? 繋ぎたいの?」と俺を揶揄う。俺に従うんじゃないのか、と思いつつも可愛らしいので満足した俺は、コクリ、と小さく頷く。


「可愛い可愛いカガミのためだもんね、」そう言うとサユリは俺の手をキュッと優しく握った。「もうすぐ交際記念日だけど、何しよっか」嬉しそうに問いかけるサユリに「ずっと抱き合っていたい、一日中ずっとサユリの温もりを感じたい、サユリから離れたくない、」と目を逸らしながら答える。サユリは、「え? それだけでいいの?? もっとレストラン、とか色々考えてたのに」と目を丸くする。「特別な日だからこそ、サユリにそばにいてほしい」俺が言うとサユリは、「ふふッ、」と満足そうに微笑む。「ねえ、カガミ。私も最近思った事があるの」通学途中、サユリは立ち止まる。「なに?」俺が問いかけると、サユリは「私ばっかりカガミが好きって思いたくない。」と俺と同じ独占欲を吐き出す。


 その瞬間、俺はサユリと同化したような気がして、全身が飛ぶような快感を得る。「私だって……カガミと一緒になりたい、骨の髄まで、いや、魂までカガミと同じになりたい、」あまりの都合のいい言葉の連投による快感に、頭がクラクラしてしまう。「ねえ、カガミ、一緒に死んでくれる?? 私もう嫌だ、カガミ以外が存在する世界なんて」サユリから差し出された最高峰の救済に俺は一瞬揺らぐが、半死神状態である事実が俺を引き止める。「……全てが片付いたら、それもいいかもな」俺が頷くとサユリは、「カガミと永遠の時を過ごせるなんて……」と狂信者のような表情を浮かべた。

 通学路を歩いて校舎に入り、教室の中まで辿り着くと、ミサが俺たちの前にやってくる。「ちょっとサユリ、最近付き合い悪いんじゃない。アンタだけ聖人になったつもり?」ミサは俺がいるにも関わらず、威圧的な態度でサユリに声をかける。サユリは、「ごめんね?? ミサ。」とあざとく謝る。ミサは、ムスッとした表情になるもあざといサユリには言い返せず、「私ばっかに背負わせないでよ」とだけ伝え去っていった。ユリカはその様子をチラッと見る。「……」サユリとユリカの目が合うと、ユリカは誰かに破かれて欠けている少年漫画誌に視線を移した。サユリは自分の席へと向かう。俺も軽くサユリと手を振った後、自分の席に座った。


「なあ弐式」ボーッと昨日の授業のまま消されていない黒板を眺めていると、分倍河原に話しかけられる。「なんだ」分倍河原の声に振り返ると、彼は「お前と仲良くなりたくてさ」と言いながらニコニコ微笑む。「断る」俺が正面に向き直そうとすると、「ぇえ!?」と驚きの声をあげる分倍河原。「俺とお前、結構似てると思わない?」と言う分倍河原に、俺は「どこが。お前ほど俺は太ってない」と冷めた目を向ける。「ぅう……」分倍河原はショックを受けたような表情を浮かべる。「なんでお前は俺を連続殺人事件の犯人と疑ってるのに友達になりたいんだ」俺が問いかけると、「だから、疑ってないって。情報提供だよ、情報提供。俺ヒロムの友達。どこに行くにもヒロムがずっとお前の話ばっかりしてたから気になって気になって」


 なるほど。ヒロムのたくさんの友人の中の一人か。俺の後ろの席にいたから名前と顔は知っていたがこんなやつ眼中に無かった。「そうか。」俺が適当に返事すると分倍河原は、「今日の放課後、遊びに行かね???」と俺を誘う。「……」俺は分倍河原をじっと見る。「生憎だがサユリと真っ直ぐ家に帰る予定だ。お前みたいなデブに興味はない。さっさと痩せろ」俺が言うと分倍河原は、「デ……デブ」とがっくり頭を下げて落ち込む。「お前、ステーキを飲み物だと思ってるだろ。顔付きと体型からみてとれる。俺は努力できるのに努力しようとしない人間が嫌いだ、まずは五キロでも痩せてからもう一度俺の前に現れてくれ」


 さっさと離れてくれないか、と思いながらほぼ暴言とも取れる内容をつらつらと清らかな熊野川に流れるように並べる。だが分倍河原はどうやら発言の意図を読む知能が一切無いようで、「痩せたら仲良くしてくれるんだな!」と逆に気合いを入れる。「ヒロム、死ぬ前に俺に言ってたんだよ。俺に何かあったらお前のメンタルケアをしてやってくれって。あいつ同性の友達少ないからってね」分倍河原の言葉に、「……」ともうあまり掘り返したくないヒロムの最期を思い出す。「だから、俺はお前と仲良くなるまで諦めないよ」純粋な優しさを映す分倍河原の目に、俺は溜息をつく。「好きにしろ」そう言って分倍河原から視線を正面の黒板に戻す。


 ヒロムもめんどくさい置き土産を置いていったな。そんな気遣いいらないしそもそも俺は友人そのものを必要としていないのに。でもあんなに住んでいる世界から違うような男がそこまで俺の事を気にしていたなんて。まあ、表面だけでは親友だったからな、ヒロムには理解できない部分もたくさんあったけど。ヒロムは今頃何をしているんだろうか。空から美怜先輩のストーキングでもしているんだろうか。ぼーっと教室の窓から空に浮かぶ雲の流れを見上げた。そんな事をしている間に、ガラガラガラ、と岸田先生が入ってくる。「今日もホームルームをはじめるぞ~~。の、前に軽く雑談だ。最近続いてる連続殺人事件で、知り合いのじいさんとばあさんが殺された。お前らも防犯はしっかりしとけよ~~。犯人は今もどこかで見てるかもしれないからな。次に、教室のゴミ箱からタバコが見つかった。堂々と教室に捨てている時点で吸ったやつはだいぶ頭が悪いやつって事はわかる。かっこよくもなんともないし、後々惨めになるのは自分だから辞めとけよ~。」岸田先生の発言の後、クラスはまたザワザワと騒がしくなる。俺は静かに目を逸らす。俺が殺した人間一人一人に人生があった事実を、また、静かに再認識させられた。

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― 新着の感想 ―
分倍河原、オアシスみたいなやつが現れた。でも、頭は三角コーンの形をしてうな重すきそうだな…。
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