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『俺にラブコメはまだ早かった!!~運命に振り回された俺の青春を返してくれ~』  作者: ミタラリアット


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三十七話『RottenApple』

 それからまた暫くが経過し、新たに三人ほど殺した頃。学校帰り、父さんの部屋に勝手に入った俺は、今までの捜査資料を読み漁る。俺が求めていたのは、ダークウェブに関する情報。特にアクセスの方法を知りたかった。その目的は、今も尚殺しを拒否し続けるヒビキを、完全に俺の駒として動かすため。本当にあいつは自分の母親が死ぬまで人を殺す気が一切ないのだろう。俺が選びたくても選べなかった道を、堂々と踏みしめる女に、嫌悪が止まらない。周りの人間はあいつにとってどうでもいいのだろうか。でも、そうだとすれば、かなり都合がいい素質だ。


 ヒビキを俺の駒にするには"あるもの"が必要だった。いま海外で流通している覚醒剤、『R2』。通称・腐ったリンゴ。それを投与した人間は全身で快楽を覚え過ちという過ちを忘れる事が出来る。なんて便利な品だろうか。俺はいま、それを入手したくて仕方ないんだ。それをヒビキに投与する。薬害で苦しんでる母親を介護するヒビキに、薬を投与して駒にする。何一つ狂いがない完璧な脚本だ。父さんのいない間に、持ち出した資料をリビングのプリンターで印刷する。母さんは買い物に出かけていて不在。やはり全知全能の神は俺に味方しているな。コピーした資料をステープラでまとめ、原本は父さんの引き出しに戻す。


 父さんの机に、何やら"堂上"と書かれた刑事の名刺があった。肝心な名前は、名刺に気づかずコーヒーのマグカップでも置いた事があるのか、滲んでいてよく見えなかった。俺はあまり名刺を気にせず、資料だけ使い古したもう十年以上前の戦隊シリーズの主人公、俺の一番お気に入り、スーパーレッドのクリアファイルに入れて運ぶ。俺の部屋に入るのとほぼ同じタイミングでピコンとメッセージアプリの通知音がなり、サユリから『今週も名探偵津田島、チェックしてね~♪スーを差し上げますッ!』スタンプと同時にメッセージが入る。俺はスマホの画面を見て穏やかな笑みを浮かべつつ、パソコンを立ち上げ資料通りの手順でダークウェブにアクセスする。


 パソコンを見ていると、ホノカが後ろから「ふぅん。ダークウェブか」と呟く。ホノカの突然の登場に、「うわ」と俺は少しだけ驚く。「リアクション薄いな」と溜息をつくホノカ。「そんな場合じゃないんだ」と再び画面に視線を合わせると、ホノカは「で、カガミは何が欲しいんだ」と後ろから問いかける。「R2」俺が呟くとホノカは、「聞いたことがないな」と興味を持つ。「それを投与した人間は全身で快楽を覚え過ちという過ちを忘れる事が出来る。つまり覚醒剤みたいなものだ」俺の説明を聞いたホノカは、「ついに現実逃避がしたくなって薬物に頼るのか」と俺が使うと勘違いしてバカにする。


「違う。ヒビキに使うんだ。快楽を植え付けて……俺という存在に陶酔させ確実にあの女を俺の駒にする。」俺が笑いながら言うと、ホノカは「お前の考える事はとんでもないな」と楽しげな反応を見せた。「人間が壊れる様を特等席で見てみたいんだ!! かつてお前が体験したみたいに、俺もこの目で見届けたい、紅月響という概念が崩壊する姿を、この目で!」俺は全能感に浸り気持ちよくなってしまう。「お前……いま自分がどんな顔してるかわかってるか」俺を見ながら呟くホノカに、「知らないよ、知りたくもない。俺は目的が達成できればいいんだ」と俺は返事する。そんな俺を見たホノカは、「お前ってやつはどこまでも醜いな」と呆れる。かなり痛い出費だが、無事R2を購入した俺。どうにか親にバレないうちに受け取らなければならない。


「ところでカガミ」ホノカは何かに気づく。「お前のベッドの下からこんなものが出てきたぞ」とホノカはボイスレコーダーを手に取る。「今も尚録音中だ。誰がいつから回していたんだろうな」薬のことばかりに気を取られていた俺は衝撃を受ける。俺はボイスレコーダーを手に取り、録音を停止する。「誰かが勝手に俺の部屋に……」俺が呟くと、ホノカは「そういうことだ。もう警察はお前をマークしているらしい。誇れカガミ。かつてお前が憧れた日本警察は優秀だぞ」とニヤニヤした表情を浮かべた。「それにカガミ。警察側にはどうやら強力な人材がいるらしい。きっとお前の脅威になるだろう」ホノカの言葉に、俺は拳をキュッと握りしめる。


「かつて警察に憧れた少年が、今度は警察と対立する。お前の物語もそろそろゴールが見えてきたな、」俺の物語を、演劇鑑賞のように楽しむホノカ。「どうする? カガミ。」ホノカの静かな問いが、秒針の音のように静かに聞こえる。俺は真っ直ぐな目をホノカに向ける。「俺は止まらない。もう止まる事は出来ない!!!!!!! いくらでも殺してやる、俺の理想郷を創る為に!!!!!!! 俺とサユリ、二人だけの物語を最後まで書き上げる為に!!!!!……快楽殺人犯、ドブ、なんとでも罵ればいいさ、どうせ誰にも俺の事なんて理解できない……!」はっきりホノカに宣言した。するとホノカは「仕上がって来たな」と俺を再評価する。


「カガミ。約束してやるよ。」ホノカの言葉に、俺は「なにを」と呟く。「お前が最後まで駆け抜けたその時、お前を死神界でも格式高い死神にしてやる。」ホノカがこの悲劇の報酬に差し出したのは、"死神の称号"だった。だが俺は「いらない」とその報酬を断る。「なぜ拒否する」ホノカは不機嫌そうに俺を見つめる。「死神になれるんだぞ、この世の因果から外れて、人間をも凌駕する高次元の存在になれる。運命を書き換える力も手に入ると言うのに、なぜ……」俺はホノカに優しい笑顔を向けながら言う。「俺の人生にそれは無意味だから。」ホノカは、俺の言葉を聞いて「無意味?」と瞬きする。


「俺はそんな超能力に縋るほど弱い人間じゃない。この世の基準で、俺の物語の中で、俺が納得するまで"答え"を追求したいんだ。」五線譜のように俺が並べた言葉に、ホノカは「人間って不思議だな」と諦める。「私なりの最後の救済を自ら拒むとは驚いた。お前の思うまま最高の舞台を演出しろ。手助けぐらいはする」もう勝手にしろ、と言わんばかりのホノカの表情に、俺はふッと笑みが零れる。変わったな、俺も。


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― 新着の感想 ―
大切な人がね。どんどん変わっていくの。 こういう時、どんな顔すればいいのか分からないの。(エヴァ感)
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