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『俺にラブコメはまだ早かった!!~運命に振り回された俺の青春を返してくれ~』  作者: ミタラリアット


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三十五話『救済』

 サユリに肯定された心地良さのまま、殺しを続ける。あれからもう迷いも無く五人ほど殺した頃。いよいよ自殺志願者、紅月響と接触する時が来た。待ち合わせ場所に向かう。俺が選んだのは、東都電波塔。有名な東京の名所だ。そう、あの場所である。彼女にはここへ来れば救いを与えると知らせてある。鬱状態にある者が"救い"と言う言葉に耳を塞ぐはずがない。だが、紅月響。俺と同い年と聞いたが一体どんな人間なんだ。俺が掴んでる情報は彼女が母親の介護で疲れている事ぐらいだ。子供連れや外国人が行き交う中、展望台で腕時計を眺める。彼女が警察だったら? ヘルドルノートの調査員だったら? そんなリスクも脳裏では横切るが、俺から接触した人間がそう言った人物であるパターンはレアケースだろう。


 品定めは充分した。まずは彼女、紅月響で試す。「遅れてすみません、」俺よりも濃い赤髪でミディアムヘアの女が、俺の前に現れる。「構わないよ」俺は優しい声色でヒビキに言った。ヒビキは学生証を俺に見せる。「紅月響、高校二年生です。よろしくお願いします」自己紹介するヒビキに、俺も「弐式火神。同い年だ、敬語なんてよしてくれ、」と自己紹介を返す。ヒビキは、「わかった」と答える。俺はヒビキを連れて展望台の中にあるカフェへと脚を運ぶ。「救済って、具体的には何をしてくれるの。あなたに私が救えるの?」威圧的に問いかけるヒビキ。その表情は切羽詰まっていて、言葉は強いが弱々しい少女のままの視線ひとつで縋れるものには何にでも縋りたい。と彼女の本音が手に取るようにわかった。


「嗚呼、救えるさ、俺はお前に"生きる理由"を与えることが出来る」ヒビキは頼んだコーヒーを、俺はいちごのスムージーを飲みながら、普通の高校生では無いような会話を繰り広げる。「生きる理由……」ヒビキは瞳を震わせる。「今の私は、母に無理矢理生かされている。今までは穏やかで私のためになんでもしてくれるぐらい優しかったのに、仕事で海外に渡航した時に無理矢理マフィアに打たれた薬物のせいで精神がおかしくなって、私に暴言を吐きながら介護を欲求してくるの。もう、私疲れちゃって。介護のせいでろくに勉強も出来ない。でも、母を見捨てて死ぬ勇気も無いから……もう私……どうすれば」ヒビキの真剣な悩みを、「よく話してくれた。その辛さを抱えるのは精神的にもしんどいからな」と相手が求めているであろう優しい言葉で包み込む。あなたが助けてくれないと、私は……」と下を向くヒビキ。俺は口角を上げる。「じゃあこうしよう。俺は君を救ってあげる。だから君も俺のために働いて?」笑顔でヒビキに言うと、「身体なんて売れない!!!」とヒビキは立ち上がる。


 カフェにいる他の客がこちらに視線を向ける。「ははっ、面白い冗談を言うんだな。何もそんな事君に求めていないよ」ヒビキの反応を見て笑いながら言うと、ヒビキは静かに座り直す。「じゃあ何よ。私に何をしろって言うの」俺を問い詰めるヒビキを「まあ待て。これを飲み終わったら裏で教えてやる」と宥める。そんな俺に、ヒビキは、「来るんじゃなかった」と吐き捨てる。「でも君は今日確実にその苦しみから解放される。いい取引じゃないか。」俺の行動は救済だ。今一番、ヒビキが求めているもの。その餌を、まるで猫じゃらしを動かすかのようにヒビキの前にチラつかせる。ヒビキは、「弐式」と俺の名を呼ぶ。「なんだ」俺がヒビキに視線を合わせると、ヒビキは「お前、普通の人間じゃないだろ」と疑いの目を向ける。「やだなぁ」俺は誤魔化すように適当な笑みを浮かべたあと、「君を救うメシアだからね」と圧をかける。ヒビキは、「メシア?」と首を傾げる。


「だって君を泥沼から釣り上げてあげるんだよ。それはもう、メシアと呼ぶ他無いよね」俺の言葉に、ヒビキは「胡散臭い……帰る。」と立ち上がる。俺は「それじゃ君は一生介護地獄のままだ」と言葉だけでヒビキを繋ぎ止める。ヒビキは、「……」と瞳を震わせたまま振り返り、俺に抗えない。「そろそろ行こっか」お互い飲み物を飲み終えると、ヒビキの分まで俺が会計を済ませ電波塔の裏へ向かう。人が極端に減る電波塔の真裏。「ホノカ、来て」俺が呼ぶと、どこかからホノカがフワッと現れ二足の脚で着地する。「!?」その様子に驚きを隠せないヒビキ。ヒビキは「何が起きてるの……」と目の前で起きた事象を疑う。「初めまして、紅月響。」淡々とした口調でヒビキの名前を呼ぶホノカ。ヒビキも、「は、初めまして……」と目を見開き戸惑いながらも、空中から降り立ったホノカに返事する。「お前も、"運命"に選ばれた者だ。」ホノカの唐突な台詞に、ヒビキは「選ばれ………はぁ???」と困惑する。


「私はこの男に取り憑いた死神だ。今朝、事前にお前の運命を書き換えた。」ホノカの意味不明な発言に、ヒビキは「は、はぁ、」と言葉を失う。「つまりヒビキ。君が救われる段取りは出来たってわけだ。後は俺に従うだけで、"生きる理由"が出来る。」俺が言うとヒビキは、「運命を書き換えたって……何をしたんですか」とホノカを睨みつける。ホノカは、「初々しい反応だな。どこか懐かしさを覚えるよ」とヒビキの反応を見て楽しむ。「なに、なんなの……」何も理解出来ないヒビキに、俺は静かに告げる。「今夜から人を殺し続けろ。じゃないと周りの人間が死ぬ。」俺が告げられたように、冷酷な声色で。そこに倫理など一切含めず。当然ヒビキは、「何を言ってるの!?」と声を荒らげる。「私ッ……そんなの望んできたわけじゃ……!!!」取り乱すヒビキに、「生きる理由が欲しかったんだろ?」と優しい笑顔で問いかける。


「狂ってる……アンタたち狂ってる!!!!!」ヒビキの絶叫が響く。「私もう帰るから、アンタたちなんか私の人生に一切関係ない、!!! どうせアンタたち、平然と人を殺してきたんでしょ!? 私はそんな人間にはなりたくないわ!!!! たとえ死んでもね!!!!! 警察にも情報提供してやるんだから!!!!!!!!」ヒビキはバタバタと走り去っていく。「まずいぞ」ホノカは心配そうに俺を見る。「想定内だ」俺はスマホを片手に口角を上げる。ヒビキが電波塔の庭を息を切らして逃げるように駆け抜けていると、電波塔の真上からヒビキの目の前にお腹の大きいおじさんの遺体が降ってくる。「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」ヒビキは悲鳴を上げる。その悲鳴に気づいた野次馬たちが、「なんだなんだ!?」と遺体が落下した方向へ視線を向ける。遠目で見ていた俺は、ふッ、と笑みを浮かべる。「カガミ、お前」ホノカは動揺しながら俺に声をかける。ヒビキは、「嘘よ……そんな……周りの人間って……私こんな人知らな……」と怯えるような表情を浮かべる。「ッ……」つぎつぎ集まる野次馬に紛れて帰ろうとする俺に、ヒビキは視線を合わせる。「あいつ……!!!!!!!」


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あいつ……(読者も気持ちが重なる…)
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