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ひきこもり異世界転移〜僕以外が無双する物語〜  作者: みやこのじょう
第7章 ひきこもり、人質になる

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91話・初めての帝都

第7章、スタート


ラトス誘拐から8日目、帝都に到着です

 王宮で講義を受けた帰りに何者かに襲われ、誘拐されてしまったラトス。


 犯人側の要求は以下の通り。



 ・異世界人の身柄と交換


 ・場所は帝都、期限は十日以内


 ・騎士、兵士の同行禁止



 これは全てユスタフ帝国に攻め込もうとしていた辺境伯に対する報復と牽制であり、サウロ王国に対する戦線布告とも取れる。


 魔獣の発生元であり、理由もなく周辺諸国に敵対し続けている危険な国だ。放ってはおけない。


 しかし、今はラトスの救出が最優先だ。


 ラトスは辺境伯のおじさんの孫で、僕がノルトンの辺境伯邸に居候していた時に知り合って徐々に仲良くなった。弟というか年の離れた友人というか、とにかく僕にとって大切な存在だ。


 身代わりでも人質でも何でもやってやる。






 オルニスさん、アーニャさん、シェーラ王女と共に帝国領に入って三日目。僕達は帝都に程近い都市、コルビに入った。ガルデアやキュクロと違い、この街には住民がいて、普通に生活をしていた。


 そんな中、皇帝が軍隊を率いて北上したという噂を聞いた。ラトスを誘拐した黒幕は皇帝だと思い込んでいたので、僕達は困惑した。すぐにオルニスさんは隠密さん達に指示し、情報収集を始めた。


 その結果、複数の住民から同じような話が聞けた。軍隊はコルビに立ち寄っていないので遠くからの目撃情報のみではあったが、真っ赤な皇帝旗が立てられた千を越す軍勢だったという。


 宿屋の一室で、ああでもないこうでもないと意見を交わすオルニスさんとアーニャさん。今後どうするか方針を決めておかなくてはならない。



「うーむ……皇帝の居城を目指すつもりだったのだが、どうしたものか」


「単なる噂じゃないのかい? ここまで来たんだ。とにかく帝都には行かなきゃねェ」


「……しかし、ラトスが本当に帝都に居るか分からなくなってしまった」



 目を伏せ、オルニスさんは辛そうに呟いた。愛息子が得体の知れない人間に攫われ、何日も安否が分かっていないのだ。ここに来て、犯人側の黒幕と断定していた皇帝の不在。不安になるのも仕方ない。


 突然、シェーラ王女が小さく手を挙げた。



「あの、私、ラトス様の居場所分かります。大体の方角だけですけれど」


「「「えっ!?」」」


「感知魔法と言いますか、ラトス様の存在を感じ取る事が出来ます」



 なにそれすごい。その話が本当なら、ラトスが帝都に居るかどうか事前に確認出来る。



「……ええと、その、ラトス様に会えない時などに、存在を感知して寂しさを紛らわせておりました」



 頬を赤らめ、恥ずかしそうに告白するシェーラ王女。健気に聞こえるが、これは魔法を用いた一種のストーカー行為では?


 アーニャさんも驚いているところを見ると、人を感知する魔法はシェーラ王女が編み出したオリジナルの魔法のようだ。



「だったら、ラトスの坊やが誘拐された時に場所を探せたんじゃないかい?」


「それが、報せを聞いた直後は気が動転してしまって……やっと落ち着いた時には既に空飛ぶ魔獣で王都から出てしまった後でした。試してはみたのですけど、距離が離れ過ぎると感知できないようで」



 悔しそうに唇を噛むシェーラ王女。


 確かに、シェーラ王女はラトス誘拐のショックで茫然自失状態に陥っていた。あの時、もし無理に感知魔法を使っていたら、魔力が暴走していた可能性もある。


 しかし、これでラトスの大体の居場所が分かる。帝国の中心部である帝都に入る前にラトスの所在が分かるのは有り難い。



「では、殿下。現在ラトスがどこにいるか、感知していただけますか」


「わかりました」



 オルニスさんに頼まれ、シェーラ王女は椅子に腰掛けたままスッと目を閉じた。すごく集中している。見た目には何も変化は見られないが、周囲の空気が張り詰めているような気がした。彼女は今、魔力を駆使して必死にラトスの気配を探っているのだ。


 目を閉じてから数十秒。


 シェーラ王女は迷いなく南を指差した。



「南……やはり帝都か」


「昨日までは遠過ぎるせいか感知出来ませんでしたが、今はおぼろげながら確認出来ました。もっと近くに行けば、大方の場所は分かると思います」



 帝国領に入ってからも度々試していたようだ。ようやく感知魔法の効果範囲内にラトスが入ったという事か。



「感謝致します殿下。魔力は大丈夫ですか」


「ええ。そこまで魔力を消費する魔法ではありませんので」



 という訳で、ここからは作戦会議となった。色んな状況を想定して打ち合わせをする。



「殿下の感知魔法があればラトスを取り戻せるかもしれない。帝都に着いたら、その都度ラトスの位置を探っていただきますが、よろしいですか」


「はい、もとよりそのつもりです」



 ラトスの監禁場所さえ分かれば隠密さん達だけでの救出も可能だ。これが一番理想的な展開だと思う。



「それが出来なかった場合、帝国側と接触し、一時的にヤモリ君を犯人側に引き渡す事になる」


「わ、わかりました」


「状況にもよるが、上手く行けばラトスを取り戻した直後にその場で君も助け出し、帝都を離脱する」



 机に広げられているのは、隠密さんが入手した帝都の見取り図だ。帝城や主要施設、大通りや門の位置が記されている。それを見ながらの打ち合わせだ。



「もし、すぐに取り返す事が出来ない場合は、一旦態勢を整えてから再度救出に来る」


「え、危ないですよ。ラトスを無事保護したら、そのままノルトンに戻った方が」


「最悪の場合はそうなるが、必ずヤモリ君を取り返しに戻る。帝国に置き去りにはしないよ」



 僕を優しく諭すオルニスさん。でも、僕を助ける為に誰かが危ない目に遭うのは嫌だ。



「アンタを帝国に置いてったら、アタシらが陛下からドヤされちまうんだよ。だから、これはアタシらの都合さ」


「君が気を使う必要はないんだよ」


「……はい」



 アーニャさんがわざと戯けてみせた。


 最悪置き去りでも構わないから無理しないでほしい。でも、そう言ったら却って気を使わせてしまいそうだ。大人しく頷いておく。


 大体の方針が決まったら、しっかり休んで英気を養っておく。帝国領に入ってから毎晩宿屋に泊まる事が出来たので、体はそんなに疲れてはいない。


 明日はついに帝都入りだ。






 翌朝、宿屋を後にした僕達は南門から街の外へ出た。目と鼻の先という表現通り、コルビの街から帝都までは近い。街道をしばらく歩けばすぐに着く距離だ。南に見えるのは立派な石壁に守られた大都市。


 ユスタフ帝国、帝都アギーラ。


 打ち合わせ通り、馬は帝都の門の外に置いて行く。これは、いざという時の為の逃走手段でもある。馬の見張り兼世話係として隠密をひとり配置し、いつでも乗れるようにしておいてもらう。個人で持てる荷物以外は馬の背に積んだままだ。


 帝都アギーラとコルビの街を繋ぐ街道は距離が短い事もあり、両側に出店が立ち並んでいた。買い物を楽しんでいるだけで帝都に着いてしまう。早朝にも関わらず、人々の往来が多い。サウロ王国との国境がある北側の閑散とした風景が嘘のようだ。


 人混みに紛れるように進み、帝都の門まで辿り着いた。アーニャさんの幻覚魔法で検問の兵士の一人を騙し、難なく門を潜る。


 門を入ってすぐの所に大きな広場があった。そこから真っ直ぐ伸びる大通りの遥か向こうに帝城が見える。帝都中央に聳え立つ黒い帝城は、幾つもの塔を束ねたような形をしていた。



「まずは、何処か落ち着ける場所を見つけよう。そこで()()()()にラトスを探してもらう」



 オルニスさんの指示で、まずは宿屋を探す事にした。何をするにも、とにかく外では人目につく。あまりキョロキョロしていたら他国の人間だとバレてしまうからだ。


 しかし、目立たぬように動いているはずの僕達に声を掛ける人がいた。



「オイ、あんた達。帝都は初めてかい? いいトコに案内してやっから来いよ」



 声を掛けてきたのは一見普通の人に見えた。茶髪の、いかにも軽そうな男の人だ。客引きか何かだろうか。そう思ったオルニスさんは無視してその場を離れようとした。


 ところが、男はオルニスさんの前に立ちはだかった。口元は笑っているのに眼は笑ってない。



「ハァ? そりゃねぇだろ。わざわざオレ様が迎えに来てやってんのによぉ。ガキがどうなってもいいのかぁ?」


「!!」



 この人、ラトスを攫った犯人の仲間だ!


 予想より早い段階での接触。まさか、ずっと此処で待っていたのだろうか。


 動揺して動けないでいる僕達を尻目に、男はわざとらしい笑みを浮かべて近寄る。



「オラ、ついてこいよ。ガキに会わしてやる」

第7章、始まりました。


引き続き応援よろしくお願いいたします。



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