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さくっと読める? 異世界恋愛系短編集 4 (2024.1~12)  作者: 四季


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その日は突然やって来ました。けれども人生が終わるわけではありません。~ヘンテコ夫と楽しく生きています~

 その日は突然やって来た。

 婚約者エンビリオが重大なことを告げてくる日。


「おい、聞け!」


 彼は以前からたびたび唐突にいろんなことを言ってくる。だから急に話始められることには慣れている。彼からの絡みに前触れなんてものは存在しないのだ。


「何でしょうか」

「お前との婚約だがな、破棄とする!」


 突然な宣言に困惑していると。


「だ! か! ら! 婚約は破棄する、って言ってるんだ!」


 彼はさらに圧を強めて繰り返してきた。


「婚約破棄……?」


 エンビリオは元より身勝手な人だ。


 でもだとしても不自然さは拭えない。

 あまりにも唐突だから。


「そういうことだよ。お前との関係はここで終わりにするんだ」


 彼はそれが当たり前であるかのように平然と言っているけれど……。


 二人の結婚に関しては既に大勢の人に言ってしまっている。式の招待状だってもう出したくらいなのだ。にもかかわらず、それらが今さらすべてなしに、となればどうなるか。皆を驚かせてしまうだろうし、迷惑をかけることもほぼ確実だ。


 エンビリオはどうしてそれが理解できないのだろう。


「それは……本気で仰っているのですか? もう結婚式まで半年もありません、準備だって進んでいます」

「そんなことは関係ない!」

「ですが、今さら破棄だなんて、皆さんにも迷惑が掛かってしまいます」

「だとしてもやめはやめだ!」

「えええ……」


 こうして婚約は破棄となった。



 ◆



 あの後少ししてエンビリオは死んだ。


 何でも昔虐めていた友人に復讐されたそうだ。

 罠にかけられた彼は山奥の小屋にて「助けてくれ」「死にたくない」などと嘆き鼻水を垂らしながら情けなく死んでいったのだとか。


 ……ま、べつにもうどうでもいいか。


 エンビリオが悪いことをしていて、だから、そんな最期を迎えることとなった――そこには私の人生など無関係なのである。


 それに、そもそも、今はもう完全に他人だし。


 彼に対して思うことなど何もない。



 ◆



「いやはや、貴女の料理は本当に美味ですなぁ~」

「ありがとうロッツ」

「結婚し、夫婦となり、これが毎日食べられると思えば……んはぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」


 私はあの後ロッツという男性と結婚した。

 エンビリオとはあそこで終わってしまったけれど、それによってすべてを失ったわけではなかった。


「え、ちょ、どうしたの急に」

「んんっ。失礼。思わず本心が溢れ出してしまいましたぞい」

「そうだったの……。相変わらずね」

「いやはや、こりゃあ、ほーんとに美味ですぞ!」

「ありがとう褒めてくれて」

「ぐほほほーい!!」


 ロッツは少し変わった人だけれど、私にとっては良き夫だ。



◆終わり◆

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