本来であれば新年の訪れを皆で祝うはずであったその日に……。~何があっても案外いつかは幸せへたどり着けるものですね~
新しい年の一日目。
本来であれば新年の訪れを皆で祝うはずであったそのおめでたい日のはずだった、のだが。
「マリエ、君との婚約だが破棄とすることに決めた」
新年の挨拶を装ってやって来た婚約者の彼ルーゼン・フィオ・ディオフォールは、まるでずっと前から相談してきていたかのようなあっさりとした調子でそんな重大なことを口にした。
「え」
「婚約は破棄とする。つまり、君との関係は終わりとする、ということだ。分かったかい?」
「ど、どうして……!?」
「僕はより良い未来のために生きると決めたんだ。だから君よりも条件の良い女性との結婚を目指す。妥協は自身を不幸にするだけだと気づいたんだ」
申し訳ない、とさえ思っていない様子のルーゼン。
「だから君とはおしまいだ。さようなら」
花びらが風に煽られて散るように。
未来への誓いもあっさりと視界から去っていってしまう。
こんなことって……。
思うけれど、今さらどうしようもない。
◆
ルーゼンはあの後少ししてディオフォール家の家業を継いだがそこで大きな失敗を繰り返しそれによって家を破滅へ追いやってしまったそうだ。
そして、親戚などからその責任を厳しく追及されたルーゼンは、ある夜自ら死を選んだらしい。
彼には幸せな未来はなかった。
あの時彼は『より良い未来のために生きる』とか『妥協は自身を不幸にするだけだと気づいた』とかそれらしいことを言っていたけれど、どうやらそれ以前の問題だったようだ。
一方私はというと、昔親しかった異性の友人とひょんなことから再会し、彼と結婚した。
今は夫婦と飼い犬二頭の四人家族で楽しく生活している。
夫の事業も順調なので心配事はほとんどないと言っても過言ではない状態だ。
これからも共に手を取り合って生きてゆけたらと思っている。
◆終わり◆




