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さくっと読める? 異世界恋愛系短編集 4 (2024.1~12)  作者: 四季


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一ヶ月ほど前に婚約した彼がある朝突然現れまして……? ~明るい未来の訪れを信じています~

 その日もなんてことのない平凡な晴れの日だった。


 玄関を出れば爽やかな風が吹いていて心地よい。

 心の奥まで柔らかに撫でられるかのようで。


 淡い青の染まりきった空を見上げるだけでも胸に潤いがもたらされるかのようである。


 そんな日の昼下がりのこと。

 一ヶ月ほど前に婚約した相手であるアズルが突然家へやって来た。


 いきなり現れた彼は「話したいことがある」と言ってきた。深刻そうな面持ちで。何だろう、と不安になりつつも、対応する。すると彼は「婚約を破棄することにした」と言ってくる。それが第一声のようなものだった。突然のことに戸惑いながらも理由を尋ねてみると、もっと良い人がいるのではないかと思ってきた、とのこと。どうやらそのような曖昧な理由で婚約破棄を決められてしまったようであった。


 正直悲しい……。


 そんなことで、と思ってしまう……。


「俺たち、ここまでにしよう」

「勝手過ぎます」

「はあ? うるさい女だなぁ、そういうのやめろよ」


 アズルはなぜか威張っている。


「もう決めたから。お前とはもう他人になる。というか、今のでより強く心決まったわ。お前みたいな女、最低な女だ。だいっきらい」


 しかもそんなことまで付け加えられてしまった。


 こうして私とアズルの婚約者同士としての穏やかな日々は終わってしまったのだった。


 まさかこんなことになるなんて。

 そんな風に思いはした。

 だって一方的に切り捨てられるだなんてそんなことが起こるとは思っていなかったから。


 だが、それから数日が経過していく中で、それが運命なら仕方ないと徐々に受け入れられるようになっていって――いつの間にか心の傷は薄れていっていた。


 私、彼のこと、そんなに大事に思っていなかったのかな?


 そんなことを思い戸惑う部分はあったのだけれど。


 だがもしそうなのだとすれば、今こういう展開になったこともある意味では幸運だったのかもしれない。

 彼を深く愛するようになってからこんなことになったらきっと耐えられなかっただろう。同じことをされたとしてもより一層傷ついたはずだ。


 傷が浅く済んだという意味ではこの出来事が起こるのはこのタイミングで良かったのかもしれない。



 ◆



 アズルに婚約破棄された次の日、父が勝手に買っていた宝くじ複数が高額当選した。


 未来への経済的な不安はなくなった。

 恐れることはもう何もない。


 また、それからちょうど一年が経った日に昔親しかった女性の紹介で富豪の男性と知り合ったのだが、彼とはとても気が合った。


 一度目の対面からもう何度か顔を合わせているのだが、不思議なもので、彼とはなぜかずっと昔から親しくしていたかのような感覚になる。


 いずれは彼との未来も考えている。


 今は光ある明日を想像できる。


 だから大丈夫。

 どこまでだって歩んでゆける。


 ちなみにアズルはあの後間もなく美女詐欺師に騙されて経済的にも社会的にもそして健康面でも地獄へ堕とされたそうだ。



◆終わり◆

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