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さくっと読める? 異世界恋愛系短編集 4 (2024.1~12)  作者: 四季


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一度傷つくことがあったからといってすべてを諦めるつもりはありません。今度こそ幸せになりたいと思っています。

 その日私は知ってしまった。


「ね~ぇ、ルカ、本当にいいのぉ?」

「いいんだよ」


 婚約者であるルカ・アホホノミーヤン・ルルモッチャが私ではない女性と親しくしていることを。


「でもぉ、婚約してるんでしょお? 婚約者いるって前に言ってたじゃなぁい」

「いいんだあんなのは形だけだから」

「うっそぉ、えぇ~、ひっどぉ~い。そんなこと言っちゃう~?」

「言うよ。だって事実だから。僕は最初からあんな女のことは好きじゃなかったんだ」


 ルカは私を愛してはいなかった。


 ……いや、そんなことは分かっていた。


 だがやって良いことと悪いことがあるだろう。

 たとえ愛していないとしても。


 けれども彼は悪いことを平然としていたのだ。


「僕が好きなのは君だけだよ」

「やぁ~ん! 好きぃ!」


 婚約者のいる身で路上で口づけ、なんて、正気とは思えない。


「じゃあ行こうか」

「そ~ねぇ!」

「あと、もう婚約者の話はしないで。不愉快だから。あの女の名を聞くだけでも溜め息が出るんだ」

「んっもぉ~、残酷ぅ。でも分かったぁ。もうしないからぁ~」


 そんな風に言葉を交わしながらいかがわしい場所へ入っていく二人の姿を写真に収める。


 ――これは証拠として使える。


 私はもう彼とは生きない。

 心は決まった。


 ゆえに、これからは彼の悪行の証拠を集めるだけ。



 ◆



「ルカ、貴方、浮気しているでしょう」

「え?」

「他の女性に手を出すなんてね」

「何の話だい」

「裏切っていたのね、私を」


 その時はやって来る。


「ということで、婚約は破棄とするわ」

「はああ!?」


 彼に別れを告げる時。


「何を驚いているの。私、もう、すべて知っているのよ」


 私は決して迷わない。

 すべてを終わりへ誘う言葉でも平然と発してみせる。


「いやでも婚約破棄って!」

「貴方は私の名を聞くことすら嫌なのでしょう?」

「……な、何を」

「そう言っているところ、この耳で確かに確認したわ」

「勘違いだよ! そんなの!」

「嘘をつく必要はないのよ、証拠だって幾つもあるから」


 ――さようなら。


 笑顔でそう言ってやる。


「慰謝料は二人共から支払ってもらうから、覚悟しておいてちょうだいね」



 ◆



 慰謝料をしっかり払ってもらってルカとは別れた。


 彼と共に生きるつもりなんてなかったから。

 もうどうでも良かったのだ。

 ただ、償いは一応少しはしてほしかったので、慰謝料支払いだけは求めたという形だ。


 それから私は良き相手を探し出す。


 すると多くの応募があって。

 その中から選んだ一人の男性と今は良い感じになれている。


 この先、またきっといろんなことがあるだろうけれど、今隣り合っている彼となら上手くやっていけるのではないかなと思う。


 一度傷ついたからといってすべてを諦めることはしたくないのだ。


 前向きに生きていきたい。

 明るい未来を信じてみたい。


 だから私は新しい縁に期待する。


 ちなみにルカはというと、あの女性とあれからも深く付き合っていたようだが、ある時病気を移されてしまったそうでそれが原因で大喧嘩になったらしい。


 それで女性を殴ってしまった。


 結果、ルカは逮捕されることとなったそうだ。


 彼は牢屋に入れられているようである。



◆終わり◆

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