少々無理のある理由で婚約破棄されたのですが、どうやら彼のほうが裏切っていたようです。
私ニーナは東の国の王子エリフリットと婚約していたのだけれど、ある時弟と一緒にいるところを目撃され浮気していると誤解されて婚約破棄を言いわたされた。
一緒にいた男性が弟であるということは事実だ。
証明だってできる。
しかしエリフリットはそれが真実であると認めたくないようで、こちらの説明をほぼ無視して思い込んだことは思い込んだまま関係を終わらせる宣言をしてきた。
だが我が父は納得しなかった。
あまりにも身勝手な婚約破棄だと怒り、東の国へ攻め込むことを決めた。
「我が娘にいちゃもんをつけるような男はこの世に要らぬ!」
こうして二国間で戦争が始まってしまう。
一度始まってしまえばもうどうしようもない。どちらかが退くことはないし終わりはなかなか見えないしで。腕を伸ばしても終わりなんて訪れないもの。
それが戦争だ。
どちらかが破滅するまで。
どちらかが崩壊するまで。
戦いは終わらないのである。
――そして我が国は勝利した。
東の国は強くなかったので想像していたよりは早く終戦の時がやって来たのだった。
エリフリットを含む東の国の王族はその多くが処刑された。
「ニーナよ、エリフリットは処刑された。お主を傷つけた愚かな男はもうこの世から去ったのだ。ゆえにニーナ、お主はもう傷つく必要はない」
父から彼の死を聞いた時には。
「……ありがとうお父様」
少しばかり切なくも思ったのだが。
「ああそうだ。そういえば。エリフリットは浮気しておったようだぞ」
「えっ」
「エリフリットには可愛がっている女がいたようだ。侍女あがりの女で、定期的に二人で会っては深い仲にまで発展しておるようなのだ」
彼の真実を聞いた時、私は、もう彼を愛せなくなってしまった。
「もしかして、それで婚約破棄を……?」
「そうかもしれぬな」
裏切っていたのか、彼は。
騙されていたのか、私は。
ああ、なんということだろう。
私は愚かだった。
そのような悪い行いを裏でしていた男の死を少しでも切なく気の毒に思っていただなんて。
「もしそうだとしたら最低な男だわ」
◆
あれから数年が立ち、私は、我が国の西の端に位置する大きくはないが高い技術力を持つ国の王子と結婚した。
彼は十ほど年上だ。
ゆえに私たちは一部では年の差夫婦と呼ばれている。
しかし年の差はあまり気にしていない。
彼の人となりに、包容力に、惹かれているのだから――年齢差など障害にはならない。
私は彼と幸せに生きてゆくのだ。
これから先もずっと。
◆終わり◆




