婚約破棄のその後で。~まぁそう動揺せず穏やかに過ごしましょうよ~
数日前、婚約者フルフレットから婚約破棄宣言をされてしまった。
フルフレットには好きな女性ができていたらしい。それで私の存在が鬱陶しく感じるようになったそうで。日に日に募ってゆく不快感に我慢できなくなって、ついに婚約の破棄を告げる決心したということのようだ。
あまりにも呆気ない関係の終わり。
正直驚きはした。
……だってそんな話は滅多にないだろう?
だが、フルフレットの心は完全にこちらに向いていないようだったので、このまま関係を続けたところでお互い良いことはないだろうと判断。
私は大人しく彼の前から去ることにした。
フルフレットに縋りついても明るい未来はきっとない。
ならば彼とはおしまいにして。
また最初からになってしまうとしても新しい道を模索したかった。
こうして私たちの関係は終わりを迎えたのであった。
◆
「――ってことがあってさぁ」
婚約破棄以降、私は、定期的に幼馴染みの男性リュードとお茶をしている。
「そりゃ大変だったね」
「だから! これからもリュードとちょこちょこお茶したりしたいって思ってるんだけど、大丈夫?」
「いいよ」
「やった! ありがとう!」
「僕も楽しいから大歓迎だよ」
リュードとはしばらく会っていなかった。
だがそれは私に婚約者ができたから。
何も不仲になってということではないので、私に婚約者がいなくなったとなれば、こうしてまた元の関係に戻ることができるのである。
「そういえばさぁ、リュードはまだ相手いないの?」
「うん」
「って、ごめん。何か……感じ悪かったら、失礼だった、謝る」
「ううん大丈夫だよ気にしないで」
私はこれからも彼と一緒に多くの時間を過ごしたいと思っている。
思わぬ形でではあるがせっかくフルフレットがいなくなったのだから、楽しい時間を過ごせる相手といろんなことに挑戦したいしいろんなことをして遊びたい。
「僕もこうやって喋ってられるのとっても楽しいよ」
婚約破棄は終わりではない。
この先にも楽しいことはたくさんあるはず。
だから頑張って歩んでゆきたい。
ちなみにフルフレットはというと、あの後間もなく惚れた女性に振られたそうだ。
女性に「婚約は破棄してきた。本気でお付き合いしたい」と言ったところ「訳が分からない。しかも婚約破棄してこっちに来るとか重すぎ」などと言われ拒絶されたそうだ。
で、それによって酷くショックを受け、今は寝込んでいるらしい。
ぶつぶつと独り言を発することしかできないような状態だそうで。
もはやかつての彼はこの世に存在しないも同然のようだ。
……ま、彼がどうなろうが私には無関係なのだけれど。
ただ、一つ確かなことは、フルフレットには良い未来はなかったということだ。
◆終わり◆




