私を見下し虐めることだけが生きがいだった彼は勝手に滅びました。
婚約者ヴェッツィは私を見下し虐めていた。
彼にとってはそれだけが生きる楽しみのようで。
不気味さを感じるほどに、彼は、私を虐めることに執着していた。そして私を虐めることだけには意味不明なほど熱心に取り組んでいた。
だがそんな彼はある日突然亡くなった。
何でも、自宅の裏庭を散歩していたところ金塊が置かれているのを発見したそうで、歓喜した彼はそれに駆け寄ったらしいのだが。実はそれは罠で。金塊に触れた瞬間、罠が作動して、彼は複数の刃に貫かれてしまったのだそう。で、そのまま落命したのだった。
誰が罠を仕掛けたのかは知らない。
けれどもきっとそれは天罰だったのだろう。
彼が亡くなったからといって私が感じてきた苦痛のすべてが消えるわけではない。
会うたび侮辱する言葉をかけられたこと。
飲み物にたびたび異物を入れられたこと。
通り道に大量のバナナの皮を置いて滑らせようとされたこと。
されてきた嫌がらせのすべてがなかったことになるわけではない、ゆえに私の中の彼への怨みが完全に消えることはないだろう。
ただ、それでも、少しはすっきりする感じはあって。
虐められてきた側として。人を虐めている彼が真っ直ぐに幸せに生きてゆけているよりかは良い。多少は救われた感じがある。ざまぁ、と思えるだけでも救いなのだ。
ちなみに私はその後良き人と巡り会え結婚もできた。
今はもう誰にも虐められていない。
毎日幸せに暮らしている。
私はもう過去を振り返ることはしない。いや、正しくは、過去を振り返ることばかりはしない、かもしれない。時には思い出すこともあるだろう。だがそれでも前を向く。嫌な記憶、辛かった日々、それにいつまでも縛られていてあげるつもりはないのだ。そんな状態のまま生きていたら彼の思うつぼだと思うから。だから私は過去を振り切って進む。彼の思った通りになんて、絶対にならない。
◆終わり◆




