村の舞姫ですが、舞いの練習を隣町に住む婚約者に見られてしまったために……?
「あー、どっせい、どっこらしょ! はい! あー、どっせい、どっこらしょ! ほい! こらしょ、とらしょ、こらしょっしょ! はい! こらしょ、とらしょしょ、こらしょっしょ! ほい! はぁーっん、はい! はい! よいとれしょっしょっしょ!」
村の舞姫であった私は日夜舞いの練習に打ち込んでいた。
これは村において重要な儀式。
ゆえに舞姫となった人間はそこから逃れることはできないのだ。
――だが、ある時、婚約者リーズンにその姿を見られてしまって。
「お前さぁ……何やってんの? 一人で奇声発して。マジキモいんだけど」
幻滅されてしまったうえ。
「あー、サイアクなもん見ちまった。もうお前女として見れねーんだけど」
心ない言葉をかけられ。
「てことで、婚約は破棄な」
さらにはそこまで言われてしまった。
「え……」
「関係は今日で解消ってこと」
「ま、待ってください! いきなり過ぎませんか、そんなの」
「だってきめぇんだもん」
「どうしてそんな酷いこと……」
「酷い? はぁ? 明らかにお前のキモい踊りの方が酷いだろ。もーいーわ、話ここまでな。じゃ、永遠にバイバイ」
こうして私はリーズンに切り捨てられたのだった。
ただ舞っていただけなのに、どうしてこんな目に……。
だが私は舞姫。
その役目を託された以上そこから逃れることはできない。
ならばただ舞い続けるしかない。
結婚は諦めよう。
私としての幸せは手放そう。
何も期待しない――そうすれば悲しみは生まれない。
「あー、どっせい、どっこらしょ! はい! あー、どっせい、どっこらしょ! ほい! とっ、しょら、とっ、しょ! どっ、こい、せっ、しょ! とっ、しょら、とっ、しょら、とっとととっとととととととら、しょ! はい!」
それから私はより一層舞姫の仕事に打ち込むようになった。
「はい! しょ! はい! しょ! へっへへへいへいほらへい! へい! ふうううぅぅぅぅぅーっ、はい! はぁ! よっとらよっとらへいほらへいとん! とんそくとんそくはははほらいらい! はい! しょ! はい! しょ! へっへへへいへいほらへい! へい!はい! しょ! はい! しょ! へっへへへいへいほらへい! へい!はい! しょ! はい! しょ! へっへへいへいへいほらへい! とととらとん! へい!」
あの後リーズンは死亡した。
というのも彼が住んでいた町が大洪水に巻き込まれてしまったそうなのだ。
彼の最期は呆気ないものだった。
幸い我が村は無事だった。
豪雨に見舞われはしたものの洪水の被害は免れた。
「あー、どっせい、どっこらしょ! はい! あー、どっせい、どっこらしょ! ほい! しょっ、とら、はい! へい! しょっ、とら、ふい! ほい! あーっ、どっらい、はっとらりょん! りょん! あーっとらほいこらしょっしょら、ほい! とんとこ! はい! はい!」
その一件により村人から感謝された私は偉大なる舞姫と呼ばれるようになっている。
「しょらほらしょらほらしょこらほらんとら、しょらほらしょらほらしょこらほらんとら、しょらほらしょらほらしょこらほらんとら、しょらほらしょらほらしょこらほらんとら、へいへいへへへいへいとらへいへへ――はいっとらっとらしょっこらしょいしょとらほいほほほい!」
私はこれからもこの道を行く。
村のため。
人々のため。
ただ舞い続ける。
それが我が人生だ。
「しょらほらしょらほらしょこらほらんとらののんらしょらほらしょらりしょらとらほいとらしょっこらへいほらほらしょこらほらんとらはい!」
少しくらい変わり者と思われたとしても気にしない。
「あー、どっせい、どっこらしょ! はい! あー、どっせい、どっこらしょ! ほい! こらしょ、とらしょ、こらしょっしょ! はい! へーいとほいっほいっ、しょっとれいんこら、しょいしょしょしょい! はい! こらしょ、とらしょしょ、こらしょっしょ! ほい! はぁーっん、はい! はい! よいとれしょっしょらほいほらとらへい!」
私は既に心を決めている。
自分にできることをやろう、と。
◆終わり◆




